19.みんなが帰ってきたら
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「下ろして」
「ぃって! 何しやがるてめぇ!!」
腕の中でばたつき、しまいには彼女の手が頭を直撃して、思わずぶん投げてしまいそうになった。次の瞬間にはぴたりと咲耶の動作が止まり、か細い声が伏せられた口から零れた。
「――神田達の無事を……疑ってたわけじゃない」
神田は無意識に立ち止まった。
「でも万が一……、億が一のことがあった時――教団に帰れるって信じてたあの子たちを……、あの子たちだけでも、絶対っ……、生かさなきゃってっ」
教団に帰ってからしたいことを、口々に語る皆の顔が脳裏に甦る。
そして最後に目にしたのは、限界はとうに超えた身体で自分を助けようとしてくれた真っ白なあの子の、絶望の表情。
思い出すたび、彼の救いの手を放したこの腕を、切り落としてしまいたかった。
「だからわたし、」
「もう喋るな。あと俺を勝手に殺してんじゃねぇよ」
咲耶が顔を上げた。互いの黒い双眸がぶつかるが、すぐ神田は視点を前方へずらした。
「……次暴れたら落とす」
そう言って、再び神田は歩き出した。彼女の心拍が少しだけ近く感じて、妙に落ち着かなかった。
途中の道のりで倒れたクロウリーを発見したのはある意味幸運だった。意外にも神田は何も言わずに自分より高身長な彼を軽く担いだかと思えば、片手で咲耶を抱き上げそのまま進む。重い荷物を担いでいるといっても過言ではないのに、それでも歩く速度の変わらない神田の眉間に皺ができたのは、すぐ後のことだった。ある扉から、聞いたことのある声がしたのだ。
≪ユウのぱっつ!!!≫
「上等じゃねぇか馬鹿兎」
両手がふさがっているため、神田は足で扉を蹴破った。そこには思った以上に元気な姿のラビとチャオジーが。
「ユウ! 咲耶!」
「ラビ、チャオジーさん」
「チッ」
ラビの跳ねるような声。ほっと胸を撫でおろす。思った以上にどっと安心感が降りてきて、次の瞬間にはぐらりと目の前が一回転した。酔わされたような、数日分の眠気が一気にきたような感覚。神田の焦ったような声がした気がしたが、そこで意識の糸はぷつりと途切れた。
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