18.紅い髪の神父
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一秒にも、一時間にも感じた。ふらふらと捻じ曲がる、世界の底のように真っ暗な視界の中。
皆の悲鳴、呻き声、背筋の凍る骨の砕ける音。望みを打ち消すような、建物が崩れて響き渡る轟音。ゆがむ視力をかき集めて、咲耶は微かに首を持ち上げた。
瓦礫の上に、ぴくりとも動かない紅白の髪をとらえる。彼らも自分も、必死で戦った。それでも全く敵わなかったのだ。あの快楽の魔物に。
「そんっ、な…………っ」
今は血の味しかない口内から、絶望を静かに零した。塔が、崩壊している。おそらく最後の出口もすでに――。
その時、瓦礫の中に一筋の光を見た。崩れきったはずのそれが浮いた。チャオジーが計り知れない重さであろう瓦礫の山を一人で持ち上げて、傍らにいるリナリーを守っている。
――…………イノセンス?――
彼から発せられる光に眼を凝らす。彼に適合したイノセンスが呼応して、超人的な力が瞬時に宿った。
鉛のように重くなった体をふらりと起こす。咳と同時に、血が口から吐き出た。感覚的に肋骨が何本か死んでいる。ティキに抉られた脇腹から絶えず紅が湧き出ていた。
「……起きて、二人共」
「ぅっ……」
「……ぃって、」
「まだいける?」
咲耶の問いにふらつきながら立ち上がったアレンとラビは呼吸を整え、精気を取り戻したように口端を上げた。
「――言われなくとも」
「上等――」
三人同時に立っていた瓦礫を蹴り上げた。黒く禍々しいティキだったものがリナリーとチャオジーを襲わんと迫っている。チャオジーの苦しそうな表情からして、彼の体力ももう限界だ。今にも力尽きて瓦礫に押しつぶされてしまいそうになっている。瞬時に咲耶はチャオジーとティキの間に降り立った。
「水牢!!」
眼前まで迫ったティキを水の牢で捕らえたその直後、チャオジーの背後からアレンとラビが攻撃をしかけた。しかし、異形と化したティキにはかすり傷もつけられず、そのまま無防備なリナリーを標的にした。
「リナリーさん!!」
彼女に向けて拳を振り下ろそうとしたその時、ティキの腕を白い帯が巻き付いて動きを封じる。
「あなたの相手はこっちだ。僕を、殺したいんじゃないんですか?」
満身創痍に近い体を無理やり鼓舞して、今やっとそこに立っている彼は、煽るように快楽の異形を挑発した。
不気味な三日月を口元に形創ったティキは、白い道化へと焦点を定め彼へ突進していった。リナリーが叫ぶ。
「アレンくん!!」
「来いっ、ここからもう生きて出られないとしても……命が尽きるまで戦ってやる……ッ」
――マナとの約束だ!!
祈りにも似た決意をそう叫んだ、刹那。アレンの足元に、光る十字の刻印が浮かび上がり、爆発するように地面が破壊された。
床が抜け足場を失ったアレンは宙に放り出され、穴に落ちてしまうかと思われたその時、誰かが彼の足首を掴んだ。
「なんだこの汚ねぇガキは……」
聞いた事のある声色。アレンはさかさまのまま呆けるしかなく。
自身の足を掴む人物は続けた。
「少しは見れるようになったかと思ったが……、拾った時と全然変わらんな馬鹿弟子」
骸骨の頭部をしたその人物に、ティムキャンピーが警戒することもなく頭に乗った。アレンは彼の足場となっている黒い物体に眼を向ける。
――対アクマ武器 ゙聖母ノ柩゙
冷や汗が思わず出るのは、さかさまになっていることだけが理由ではない。数か月ぶりの感動の再会――というには別れ際の状況があまりに酷すぎた。というより彼と自分の関係性からしてそんなシチュエーションを考えただけで鳥肌ものである。あの時ハンマーで殴られた頭部の痛みが記憶の箱から引きずり出されて、少しだけ泣きたくなった。
骸骨の形状をしたそれはマスクだったようで、形を少しずつ変えたそこから声主の顔が露わになった。
「なんだその嬉しそうな顔は……おとそうか?」
.
皆の悲鳴、呻き声、背筋の凍る骨の砕ける音。望みを打ち消すような、建物が崩れて響き渡る轟音。ゆがむ視力をかき集めて、咲耶は微かに首を持ち上げた。
瓦礫の上に、ぴくりとも動かない紅白の髪をとらえる。彼らも自分も、必死で戦った。それでも全く敵わなかったのだ。あの快楽の魔物に。
「そんっ、な…………っ」
今は血の味しかない口内から、絶望を静かに零した。塔が、崩壊している。おそらく最後の出口もすでに――。
その時、瓦礫の中に一筋の光を見た。崩れきったはずのそれが浮いた。チャオジーが計り知れない重さであろう瓦礫の山を一人で持ち上げて、傍らにいるリナリーを守っている。
――…………イノセンス?――
彼から発せられる光に眼を凝らす。彼に適合したイノセンスが呼応して、超人的な力が瞬時に宿った。
鉛のように重くなった体をふらりと起こす。咳と同時に、血が口から吐き出た。感覚的に肋骨が何本か死んでいる。ティキに抉られた脇腹から絶えず紅が湧き出ていた。
「……起きて、二人共」
「ぅっ……」
「……ぃって、」
「まだいける?」
咲耶の問いにふらつきながら立ち上がったアレンとラビは呼吸を整え、精気を取り戻したように口端を上げた。
「――言われなくとも」
「上等――」
三人同時に立っていた瓦礫を蹴り上げた。黒く禍々しいティキだったものがリナリーとチャオジーを襲わんと迫っている。チャオジーの苦しそうな表情からして、彼の体力ももう限界だ。今にも力尽きて瓦礫に押しつぶされてしまいそうになっている。瞬時に咲耶はチャオジーとティキの間に降り立った。
「水牢!!」
眼前まで迫ったティキを水の牢で捕らえたその直後、チャオジーの背後からアレンとラビが攻撃をしかけた。しかし、異形と化したティキにはかすり傷もつけられず、そのまま無防備なリナリーを標的にした。
「リナリーさん!!」
彼女に向けて拳を振り下ろそうとしたその時、ティキの腕を白い帯が巻き付いて動きを封じる。
「あなたの相手はこっちだ。僕を、殺したいんじゃないんですか?」
満身創痍に近い体を無理やり鼓舞して、今やっとそこに立っている彼は、煽るように快楽の異形を挑発した。
不気味な三日月を口元に形創ったティキは、白い道化へと焦点を定め彼へ突進していった。リナリーが叫ぶ。
「アレンくん!!」
「来いっ、ここからもう生きて出られないとしても……命が尽きるまで戦ってやる……ッ」
――マナとの約束だ!!
祈りにも似た決意をそう叫んだ、刹那。アレンの足元に、光る十字の刻印が浮かび上がり、爆発するように地面が破壊された。
床が抜け足場を失ったアレンは宙に放り出され、穴に落ちてしまうかと思われたその時、誰かが彼の足首を掴んだ。
「なんだこの汚ねぇガキは……」
聞いた事のある声色。アレンはさかさまのまま呆けるしかなく。
自身の足を掴む人物は続けた。
「少しは見れるようになったかと思ったが……、拾った時と全然変わらんな馬鹿弟子」
骸骨の頭部をしたその人物に、ティムキャンピーが警戒することもなく頭に乗った。アレンは彼の足場となっている黒い物体に眼を向ける。
――対アクマ武器 ゙聖母ノ柩゙
冷や汗が思わず出るのは、さかさまになっていることだけが理由ではない。数か月ぶりの感動の再会――というには別れ際の状況があまりに酷すぎた。というより彼と自分の関係性からしてそんなシチュエーションを考えただけで鳥肌ものである。あの時ハンマーで殴られた頭部の痛みが記憶の箱から引きずり出されて、少しだけ泣きたくなった。
骸骨の形状をしたそれはマスクだったようで、形を少しずつ変えたそこから声主の顔が露わになった。
「なんだその嬉しそうな顔は……おとそうか?」
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