17.快楽の異変
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「火加減なしだ!!」
地面に槌先を突き立て覆う火柱の熱は、彼の信念と誇りを守る最後の砦だった。
自分に攻撃をしかけたラビの姿に、三人の体から血の気が引いていく。
「自分に攻撃をッ!!」
「ラビー!!」
ロードによって引きずり込まれた夢の中で、弄られた過去。
≪今回≫も同じはずだった。記録地を移り名前を変え、運命の元に変わり行く歴史を無感情に眺め、それを保管し未来へ語り継ぐ。
それなのに、兵士として皆に出会ってからの自分に芽生えた違和感。
傍観せよ。感情は捨て去れ。
何度も師に言い聞かされてきた教えが、今は呪いのように頭の中で反響する。仲間だと言ってくれた彼等と過去の自分に精神を蹂躙され、壊れた先に待っていたもの。屈辱で、暴力的なノアの操り人形にされてしまった。
チャオジーは言葉をなくし、リナリーは自身の足に拳を突き立て悲しみの慟哭を上げた。
神ノ道化を手に、アレンは地獄の化身のような炎の蛇の中へ剣を振りかざした。
ラビを焼き殺そうとする業火は、退魔の剣でも容易に貫くことはできない。熱さに身を焦がしながら、アレンは彼の名を叫んだ。リナリーも喉が焼けるほどそれに同調する。
ラビ……、ラビ……!、ラビ……!!
それは、間違うことなくラビの耳にも届いた。塵に成り行く体の感覚が遠い、聴覚ももうすぐ機能しなくなるだろう。最後に二人の声が聞けてよかった。
叶うなら、直接さよならを言いたかったと、離れていく思考に、彼はふわりと口角を上げた。
……――渦潮――……
刹那、地響きを立てて、床から巨大な水の渦が現れた。それは街一つを破壊しそうなほど大きな炎の蛇を、飲み込むように喰らいつく。その場を覆っていた熱を奪い去るように鎮火し、渦は崩れるように形を歪ませ地に落ちていった。頭上から降り注ぐ大量の水にアレンは軽く体を流される。
太陽の兎は目をしばたたかせた。背中に感じる地面の固い感覚、両サイドに流れる烏色をした長い髪のカーテン。そして自分をのぞき込んでくる髪色とは真反対の白い顔。
「…………自分に向かって火の攻撃とか……私がなんのエクソシストだったか、忘れてた?」
床に転がっている自分の体に覆いかぶさりながら、少女は言った。
お互い団服も髪も濡れている。咲耶の前髪から一滴がラビの頬に落ちて、そのままするりと肌を伝い地面に吸い取られていった。
「……昔の夢を見せられた」
「ラビも?」
「その言い方は、お前も」
「うん」
「俺、まんまと精神壊されそうになったわ」
「それで、アレンを、」
「一生の汚点さ、――くそ」
「私も一歩間違えれば、そうなってた……」
「ってか俺ほんとに生きてる?」
「おでこ温かいから、きっとそう」
「ははっ。なんだそれ」
「ねぇ、ラビ」
「ん?」
「ロードとの勝負。私達の勝ちだね」
「だな」
額をくっつけあい、お互いの生を確認する。人のぬくもりが、じわりとそこから伝わっていた。
「ところでさ」とラビが続けた。
「なに?」
「そろそろ退いてくんね? じゃないと俺、……あいつに殺される」
ラビの顔色が真っ青になっている。気付けば二人の頭付近に、白い鬼神が立っていた。
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