16.ロードの魅せる夢
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連れてこられたそこは、夜の住処だと思った。
高々と聳える黒い塔と、その背後にまあるく存在感を誇示する月をまとめて見上げる。
思わず首が取れてしまうかと思った。
「――こっちだ」
そう一言だけ前から聞こえてきた。目の矛先を真上から前方へ引き戻す。自分とは等身がいくつも違う女性がこちらを見下ろしていた。肩に白い生き物を乗せる彼女は、相も変わらず表情に変化のないひとだと思った。自分はそんな彼女によってここに連れてこられたのだ。
入口であろう大門が開いて、自分達を迎える。先を進む彼女の後ろをついていった。息が切れないのは、彼女が意図的に歩調をあわせてくれているからだろう。自分と少し距離が離れると、彼女は歩みを止めて自分が追いつくのを黙って待った。それの繰り返し。
ある一室に入ると、そこには女性達が待っていた。皆同じように白い清潔そうな衣服に身を包んでおり、その中で一際威厳のような圧をもった人物が前に出てきて、彼女に話しかけた。
彼女はこの怖いお顔の女の人を『婦長』と呼んだ。二人は一通り話をして、婦長はこちらを見てくる。
「名前は咲耶。つい先日五つになったばかりだ」
彼女の言葉に婦長のきゅっと上がった眉端と目尻が、何故だか悲し気に下げられた。
ふと近くに気配を感じて横を見れば、彼女が膝をついて自分と目線をあわせていた。白い猿の丸い瞳とあわせて四つ分の眼がこちらをじっと見ていた。
「お前は今日から、この黒の教団に入団する。その力をもってして、エクソシストとして生きるのだ」
「…………」
「ここにいる団員達と衣食住を共にして、指示に従って任務へ向かう。そのうちお前と同じ年くらいの子供も入ってくるかもしれん」
言っていることに、違和感を感じた。まるでそこに彼女自身が含まれていないような物言いで。ふと彼女を指さしてみれば、意図を汲み取ってくれたようで、言葉を繋いだ。
「……私には元帥としての任務がある。ここにいられない」
彼女は立ち上がって、婦長に「あとは、頼む」と一言告げ、来た道を一人戻っていった。
婦長が何か話しかけてくる。大丈夫、だとか、何も心配いらない、だとか。
違う、そんな安堵ほしいだなんて思っていない。
弾けたように、足が動いて部屋を飛び出していた。後ろから婦長の声が聞こえたけれど、気にすることはできなかった。
何度も転びそうになって、もつれる足を踏み込んでやっと追いついた時、彼女は驚いた表情でこちらを見た。
今思えば当時の彼女、十代後半の女性の背中でも、それはとても広いものに見えてしまって。
その背の大きさにいつか自分もなるのかと、不確かな先の未来を幼いながらに描いた。
「――いっしょに、いかせて、くだ、さい……っ、」
声が震える。怒られるかもしれない。拒絶されるかもしれない。それでも。
話すたびにしゃくりあげていくのを止められなかった。
「……あなたと、いっしょにいさせて、っくださいっ……ぅっ……あなたを、まもれる……くらい、――つよく、して、くださいっ……クラウド、元帥。…………ふぇっ、――ぇっ、うぇぇぇん……!!」
次々と溢れる涙と嗚咽に、視界も思考もぐちゃぐちゃで。
人生最後の我儘だって、そう思ってもいいくらいに駄々をこねた。
それくらいあの時の私は、あなたの隣で生きていきたかった。
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連れてこられたそこは、夜の住処だと思った。
高々と聳える黒い塔と、その背後にまあるく存在感を誇示する月をまとめて見上げる。
思わず首が取れてしまうかと思った。
「――こっちだ」
そう一言だけ前から聞こえてきた。目の矛先を真上から前方へ引き戻す。自分とは等身がいくつも違う女性がこちらを見下ろしていた。肩に白い生き物を乗せる彼女は、相も変わらず表情に変化のないひとだと思った。自分はそんな彼女によってここに連れてこられたのだ。
入口であろう大門が開いて、自分達を迎える。先を進む彼女の後ろをついていった。息が切れないのは、彼女が意図的に歩調をあわせてくれているからだろう。自分と少し距離が離れると、彼女は歩みを止めて自分が追いつくのを黙って待った。それの繰り返し。
ある一室に入ると、そこには女性達が待っていた。皆同じように白い清潔そうな衣服に身を包んでおり、その中で一際威厳のような圧をもった人物が前に出てきて、彼女に話しかけた。
彼女はこの怖いお顔の女の人を『婦長』と呼んだ。二人は一通り話をして、婦長はこちらを見てくる。
「名前は咲耶。つい先日五つになったばかりだ」
彼女の言葉に婦長のきゅっと上がった眉端と目尻が、何故だか悲し気に下げられた。
ふと近くに気配を感じて横を見れば、彼女が膝をついて自分と目線をあわせていた。白い猿の丸い瞳とあわせて四つ分の眼がこちらをじっと見ていた。
「お前は今日から、この黒の教団に入団する。その力をもってして、エクソシストとして生きるのだ」
「…………」
「ここにいる団員達と衣食住を共にして、指示に従って任務へ向かう。そのうちお前と同じ年くらいの子供も入ってくるかもしれん」
言っていることに、違和感を感じた。まるでそこに彼女自身が含まれていないような物言いで。ふと彼女を指さしてみれば、意図を汲み取ってくれたようで、言葉を繋いだ。
「……私には元帥としての任務がある。ここにいられない」
彼女は立ち上がって、婦長に「あとは、頼む」と一言告げ、来た道を一人戻っていった。
婦長が何か話しかけてくる。大丈夫、だとか、何も心配いらない、だとか。
違う、そんな安堵ほしいだなんて思っていない。
弾けたように、足が動いて部屋を飛び出していた。後ろから婦長の声が聞こえたけれど、気にすることはできなかった。
何度も転びそうになって、もつれる足を踏み込んでやっと追いついた時、彼女は驚いた表情でこちらを見た。
今思えば当時の彼女、十代後半の女性の背中でも、それはとても広いものに見えてしまって。
その背の大きさにいつか自分もなるのかと、不確かな先の未来を幼いながらに描いた。
「――いっしょに、いかせて、くだ、さい……っ、」
声が震える。怒られるかもしれない。拒絶されるかもしれない。それでも。
話すたびにしゃくりあげていくのを止められなかった。
「……あなたと、いっしょにいさせて、っくださいっ……ぅっ……あなたを、まもれる……くらい、――つよく、して、くださいっ……クラウド、元帥。…………ふぇっ、――ぇっ、うぇぇぇん……!!」
次々と溢れる涙と嗚咽に、視界も思考もぐちゃぐちゃで。
人生最後の我儘だって、そう思ってもいいくらいに駄々をこねた。
それくらいあの時の私は、あなたの隣で生きていきたかった。
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