15.闇色ラプソディ
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次に咲耶はふと反対側のリナリーをちらりと見た。身体をこわばらせ不安そうな表情。きっと、残してきた二人のことを考えている。そんなリナリーの様子に気付いていたのか、ラビが膝の上でこわばった彼女の手をそっと握った。
「しっかりしろさリナリー。アレンも頑張ってる」
こちらにも微かに聞こえる声でラビがそう落ち着かせている。ふとリナリーの視線がおもむろにこちらを向いた。
残ったあの二人は、こんな敵の手中で従順に転がされるほど弱くないのを、もう知ってしまっている。
特に彼は、神田は言った。「先行ってろ」と。冷たくぶっきらぼうな彼の言葉には、いつだって嘘がなかった。
だから帰ってくる、絶対に――。
声を出さずに「…………大丈夫」と口をゆっくり動かせば、リナリーは瞼に溜まった涙を拭って小さく頷いた。
「あー、おっきくなってるー!」
ノアの少女から大きな声がした。ロードは咲耶のひじ掛けに手をついて前のめりになりながら、彼女の顔をその大きな瞳で覗き込んだ。瞬きもせず見つめてくるロードに、意図を読むことができず若干身を引いて小さく首を傾げた。咲耶の反応にノアの少女は軽く肩を落とす。
「覚えてるわけないかぁ、君まだ赤ちゃんだったもんね」
「…………なんの、……はなし?」
仲間の困惑の視線が集まっているのがわかる。しかし、誰よりも彼女の言葉を理解できていないのは、まぎれもなく咲耶本人だった。
「え、この子?」
ティキが会話に加わってきた。
「そうだよぉ」
「まじか、なんというか。そこにいなきゃ目付けられなかったものを……運が悪かったねきみ」
憐れむように、それでも至極楽しそうにティキは言った。「何はともあれ」と続ける。
「きみの功績が俺達の力の一部を育てたんだ。一族を代表して感謝しますよ。麗しい水の王女」
ただ、彼を見つめることしかできない。言葉を置き忘れたように、喉の奥に閉じこもってでてこない。食事を一通り終えた快楽のノアは煙草に火をつけた。
「オレね。千年公の終焉のシナリオっての? 遊び半分で参加してたんだけどさ、少年のおかげでちょっと自覚出てきた……退治、本気でやんねぇとって」
ティキは椅子から立ち上がった。中国でこの白い少年の命とイノセンスを粉々に破壊した。それがいま確かに存在して目の前に座っている。思った以上に強固で、美しくて、見たままの儚さなんてどこにもなかった。
黒い蝶が、音もなく空を舞う。リナリーの肩へ、その身を触れようとした、その時――。
「ティキ・ミック。僕もひとつ言っときたいんですが……」
アレンの鋭い左腕の爪先が、黒蝶を貫いた。
「これ以上僕の仲間に手を掛けたら、僕は貴方を殺してしまうかもしれません」
冷ややかな言葉と共に、アレンはテーブルに勢いよく乗った。
「リナリー、咲耶さん、信じてて」
アイツは僕は行く。両側に座っていた少女二人へそう残し、一人駆けていった。
彼に続くように、ラビと咲耶が立ち上がるが、目の前にふわりと傘にのった華奢な肢体が降りてきた。
「ティッキーもねぇ、アレンのことが好きなんだよ。邪魔しな~いで。僕と遊ぼうブックマン、そっちの子もね」
無邪気な子供の声に、ラビと咲耶はイノセンス発動させた。
「ラストダンスといこうぜ。少年」
2025/9/23.
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