2.孤城の吸血鬼Ⅰ
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白雪色の少年の顔は、絶望に青ざめていた。
「汽車……、行っちゃった……」
乗るはずだった黒く冷たい鉄の乗り物は、無常にその姿を小さくしていき、最後は嘲笑うように高い汽笛を鳴らす。つい先刻、食事を買うため一度外にでた黒髪の少女を追いかけた。直近で共に向かった巻き戻しの街での任務。自分を救ってくれた彼女に対して、理不尽な理由で怒鳴りつけてしまった。自分一人でがんばりすぎたこと、彼女は叱ってくれたというのに。
アクマの魂を救いたい自分の精神。仲間の命を守りたい彼女の精神。あの時は優先順位が相反して言い合いになり、お互いの感情がごちゃごちゃに絡まってしまった。二人共にもやついていた感情が、自分の謝罪と彼女の本音をさらけ出しあい、やっとのこと解消されたばかりだというのに。
汽車に飛び乗る間際、自分を引き留めた弁当屋の店主は雪の積もった冷たいホームに自分を引き倒し、逃がさないとばかりに上から覆いかぶさっている。
「申し訳ございません修道士さま。だがしかし! こちらも急を要するものでして……」
どうか私どもの村をお救いください!
勢いよく土下座にする老体に、白雪色の聖職者は涙を流し間抜けに呆けることしかできなかった。そのまま軽々と担がれ、店主は駅から出てひた走る。彼は自分をゲオルグと名乗った。この村の村長とのことだ。
「やはり神は我々を見捨ててはいなかった。まさか今日一日で修道士さまを二人もお迎えできるとは!」
「ふ、二人?」
これぞ神のご加護!、と満月へ叫ぶゲオルグに彼、アレン・ウォーカーは本日二回目の疑問符を語尾に落とす。あれよあれよという間にレンガ作りの建物の前に辿り着くと、ゲオルグはその扉を勢いよく開けた。
「みなの者! 神に祈りが通じたぞ! 黒の修道士さまが来てくださったー!」
武器らしきものを手に持った村人らしき男たちの視線が、自分に集中してアレンの肌に冷や汗が浮かぶ。彼等の視線が団服のローズクロスに移ったかと思えば、一斉に瞳孔が開いて涙し、自分へと飛びついてきた。複数人の重みがのしかかってそのまま後方へ引き倒され、高い天井が視界に広がった。
厄日なのか、リナリーに心配をかけた罪なのかと涙しそうになる。そんな視界に黒い人影が落ちてきた。天井の逆光で顔が一瞬確認できなかった。
「大丈夫……?」
声を発した影の髪が、ふわりとアレンの頬をかすめた。
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「汽車……、行っちゃった……」
乗るはずだった黒く冷たい鉄の乗り物は、無常にその姿を小さくしていき、最後は嘲笑うように高い汽笛を鳴らす。つい先刻、食事を買うため一度外にでた黒髪の少女を追いかけた。直近で共に向かった巻き戻しの街での任務。自分を救ってくれた彼女に対して、理不尽な理由で怒鳴りつけてしまった。自分一人でがんばりすぎたこと、彼女は叱ってくれたというのに。
アクマの魂を救いたい自分の精神。仲間の命を守りたい彼女の精神。あの時は優先順位が相反して言い合いになり、お互いの感情がごちゃごちゃに絡まってしまった。二人共にもやついていた感情が、自分の謝罪と彼女の本音をさらけ出しあい、やっとのこと解消されたばかりだというのに。
汽車に飛び乗る間際、自分を引き留めた弁当屋の店主は雪の積もった冷たいホームに自分を引き倒し、逃がさないとばかりに上から覆いかぶさっている。
「申し訳ございません修道士さま。だがしかし! こちらも急を要するものでして……」
どうか私どもの村をお救いください!
勢いよく土下座にする老体に、白雪色の聖職者は涙を流し間抜けに呆けることしかできなかった。そのまま軽々と担がれ、店主は駅から出てひた走る。彼は自分をゲオルグと名乗った。この村の村長とのことだ。
「やはり神は我々を見捨ててはいなかった。まさか今日一日で修道士さまを二人もお迎えできるとは!」
「ふ、二人?」
これぞ神のご加護!、と満月へ叫ぶゲオルグに彼、アレン・ウォーカーは本日二回目の疑問符を語尾に落とす。あれよあれよという間にレンガ作りの建物の前に辿り着くと、ゲオルグはその扉を勢いよく開けた。
「みなの者! 神に祈りが通じたぞ! 黒の修道士さまが来てくださったー!」
武器らしきものを手に持った村人らしき男たちの視線が、自分に集中してアレンの肌に冷や汗が浮かぶ。彼等の視線が団服のローズクロスに移ったかと思えば、一斉に瞳孔が開いて涙し、自分へと飛びついてきた。複数人の重みがのしかかってそのまま後方へ引き倒され、高い天井が視界に広がった。
厄日なのか、リナリーに心配をかけた罪なのかと涙しそうになる。そんな視界に黒い人影が落ちてきた。天井の逆光で顔が一瞬確認できなかった。
「大丈夫……?」
声を発した影の髪が、ふわりとアレンの頬をかすめた。
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