15.闇色ラプソディ
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長い階段を一番先に上がりきった白雪の少年は、思いがけず飛びついてきた重みに思わずその身をよろけさせた。
「アッレーン!」
「ッ……ロード!?」
次にノアの少女によって唇に押し当てられた感覚に、驚きすぎて固まってしまう。彼以上に驚愕したラビが呆然としたアレンを揺さぶるが、心に受けた衝撃のおかげで反応がない。
「アレン!? おいアレン!!」
「ロード、少年のことそんなに好きだったの?」
椅子に腰かけたティキがなんとも複雑な表情で少女に尋ねた。
開ききったそこは大部屋だった。無駄なものがとことん省かれた広い空間に、異質な長テーブルだけがぽつんと配置されている。
思いもよらぬ人物たちに出迎えられ、固まるエクソシスト一同にノアの青年はやわらかく促した。
「何してんの、座って。待ってる間に腹へってさ。一緒にどう?」
闘る前にちょっと話したいんだけど、とティキはテーブルに並べられた皿の料理を口に運んだ。なんとも緊張感にかける温度感の物言いに、アレンは正反対の熱量で拒絶した。
「お断りします。食事は時間があるときゆっくりしますから」
敵の手によって用意された食事に手をつけるなんて冗談じゃない。自分たちがこの後生きてはじめに口にするものは、教団の料理長の真心がこもった温かなそれだ。
ティキが少しだけ子馬鹿するように、手にもったナイフを空で遊ばせた。
「その時間、あとどれくらいか知りたくない?」
外、絶景だよぉ。と間延びしたロードが続いて、一同は反射的に外を見下ろすべく走った。眼下に広がる光景に、息を呑む。今いる塔以外のすべてが、ごっそりとなくなっていた。
「残るは俺達のいるこの塔のみ。――ここ以外はすべて崩壊し消滅した」
武器である牙を覗かせてはにかむ青年と、黒いポニーテールの髪がしならせる彼の顔が、霞んで見えた。
後ろで扉が荒々しく閉められる音がして振り向けば、そこに錠前まで固く付けていたのは小柄なノアの少女だった。逃がさない。まるでそう言っているように。
「座れよエクソシスト」
恐ろしいのか?
快楽の美丈夫は優美な仕草でワイングラスを口に運ぶ。臆することなく迎え討つように、荒々しくも真っ白な道化は反対側の椅子に腰を落とした。
アレンに続き、エクソシスト達も空いた椅子に各自座る。誰一人、警戒心を解くことはない。
「そんな顔すんなって。罠なんかしかけてねぇよ。イカサマはしないって言ったろ? それともお前等のメシ毒見すれば満足か?」
厳しい表情で見つめてくる真正面のアレンに、「かわいくねーな」とティキは苦言を呈した。
「大丈夫だよぉアレン」
まるで囁くように、アレンの耳に小さな口をよせたロード。
「出口の扉はこの塔の最上階にちゃんと用意してあるから」
「ちゃんと外に通じてればいいんですが」
「ふふっ」
皮肉の中に余裕のあるアレンにロードはリスのような笑みを向ける。
アレンの様子に、咲耶は目を見張った。ノア二人を前にまったくもって怯んでいない。彼は誰よりも敵との遭遇が多かったと聞く。自分含め他のエクソシストがアレンの立ち位置ならば、まずこの温度感で会話などできるはずがない。これが彼の精神的な強さなのだろう。