15.闇色ラプソディ
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先に進むべく長い階段を、残った五人はひたすら登っていく。
「大丈夫さ? リナリー」
「足痛むんじゃないですか?」
「大丈夫、歩ける。って言ってもアレンくんの手に引かれてるから、えらそうに言えないんだけど」
気丈にそう答えたリナリーだが、息切れしているのは隠せておらず、多からず少なからず無理をしているのが見てとれる。
「全然構いませんよ」とこんな状況でもどこか洗練された所作で、アレンは彼女をエスコートしていた。
そんなリナリーの顔色に、うっすら影が落ちた。イノセンスを扱えなくなったことで、戦いに参戦できないことへのもどかしさと守られることしかできない悔しさ。
そして脳裏を過った何よりも望まない真っ暗な未来を。心が押しつぶされそうになるのを、誰にも言えずに彼女は苦しんでいた。
「―がんばらなきゃ」
鼓舞するような一言が、無意識に口に出てしまう。
「やっぱり足無理してるでしょリナリー!」
「ち、違うの考え事! 教団に帰ったらすぐ鍛錬し直さなきゃなってっ……」
「何真面目なこと考えてんさぁ!? 俺寝る! 寝ますよそんなん、誰か布団かけといてさ!」
確かに今の時点で、帰ってから鍛錬できるくらいの体力は誰一人として残っていない。
むしろ団員達からベッドへ強制的に連行される未来が見える。
「ダメだなリナリーもっと色気あること言わんと恋人できねぇさ!」
「失礼ですよラビ!」
「ラビに関係ないでしょ!」
年下二人から猛抗議される姿に呆れる以外の感情が湧き出てこない。
咲耶はラビの片頬を軽くつねった。
「デリカシー……」
「そういう咲耶は浮ついた話とかないん?」
「私にふるの」
「単純に気になったんさ」
誘導尋問をするラビの悪戯な視線がアレンに向けられる。
年上の友として一肌脱いでやろうという彼なりの心遣いだった。
「……教えない」
「吐いちゃえって。ちなみに好みのタイプは?」
「もう少しで上に着けるかなぁ」
さらりと話を逸らす咲耶に、アレンの顔からさっと血の気が引いた。考えたくもない憶測が頭を支配した。
「あっあの、咲耶さん」
「何?」
呼ばれて顔を自分へ向けてくる彼女に、アレンは問う。
「年下、嫌いですか……?」
思わず目を丸くしたが、間を開けつつ少し考え「ううん。好きだよ?」と咲耶は一言だけ返した。彼女に気付かれないようほっと胸を撫でおろすアレンに、チャオジーがぽつりと零した。
「……なんか今のエクソシスト様達見てたらオレらと同じ普通の人みたいです」
冗談を言って笑いあったり、年相応に人を想ったり。
「神の使途様なんていうから、もっと人と違うこと考えてる人達かと思ってたっス……恐怖とかそういうの、ぜんぜん……無いのかと……っ」
普通の人間である彼がこんな敵陣に放り出され、さぞかし怖かっただろう。怪我をおいながら泣き言も言わず、よく付いてきてくれたと思う。
アレンは微かに震えるチャオジーの手にそっと自分の手を添えた。
「あとひとつ、この先に待ってるものを乗り越えれば、きっとホームに帰れますよ。不安なときは楽しいことを考えて。元気がでます」
泣きべそをかきながら、チャオジーが頷いた。
必ず帰る。そして教団の仲間たちへ「ただいま」を言いたい。
「どんなに望みが薄くったって、何も確かなものが無くったって、僕は絶対諦めない」
光のような想いを背に乗せて、アレンは最後の階段を上りきった。