15.闇色ラプソディ
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争っているようで、そうではない。そんな強い声色の攻防戦に意識を叩き起こされた。
「ダメよっ、あんなにケガしてるのに、戻らないと!」
「リナリっ……」
「放してアレンくん! これ以上みんなバラバラになっちゃダメだよ!」
今にも扉へ駆けだそうとしているリナリーをアレンが止めている。
状況判断に時間がかかった。双子のノアと邂逅して、それからしばらくしてからの記憶がない。
「咲耶さん、気が付いたんっスね」
「チャオ、ジー、さん……わたし、一体……、何が、あったんですか…………?」
床に転がっていたのであろう上半身を起こして彼に問う。
ノアの特殊能力に放浪され、鍵をなくしかけたこと。倒せたと思った敵の本来の力の前に手も足もでなかったこと。そしてその敵を相手に、クロウリーがたった一人残って戦っていること。
皆の顔と体に、傷が増えているのが見て取れる。激しい戦闘の痕。
「絶対みんなで一緒に教団に帰ります」
混じり気のない空のような、真っ白な彼の澄んだ決意だった。思わず二人の様子を傍観していた三人の視点がアレンへ向く。リナリーの頬を包みこみ、彼女にも自分自身にも言い聞かせるように、彼は紡ぐ。
「絶対諦めません。踠いて踠いて、全部守ってやるって思ってます。いつも強いリナリーらしくないですよ。僕よりお姉さんでしょ」
「お兄さん達も諦めてねーさ」
二人の間にラビとチャオジーが体をねじ込ませた。クロウリーのこと、ただ信じる。それだけラビはいった。それが今の自分たちにできること。
ただまっすぐ前に進め。ふりむかず、それがかれらのねがい。
双子が戻ったとの知らせを聞いた。つまりはエクソシストとの戦闘に勝利したと一瞬解釈したが、どうやら相打ちらしい。相当な痛手を負ったとか。
ロードに手を引かれ、仕方なしにと一室へ連れてこられたティキの目に入ってきたのは、ベッドの上に並んだ双子の姿だった。ぴくりとも動かず、一瞬死体と間違うほどで。双方の左腕が焼け爛れたように焦げていた。辛うじて命を繋ぎ、眠る二人の髪をベッドに腰かけそっと撫でる人物がいた。
「おかえり二人共ぉ」
「おーおー、相当やられてんねぇ」
ロードがベッドに駆け寄り、眠る二人へ甘く声をかけた。ノックもなしに入ってきた乱入者たちを男はちらりと見ただけで、また双子へ視線を戻した。
やれやれとばかりにティキが咥えていた煙草を口から放す。
「……甘党が死んだ」
「察したさ。お前達の誰よりも先に」
「今、どんな気持ち?」
「聞いてどうしたい?」
「十年以上、誰よりもお前が待ってたんじゃねぇの。この時をさ」
男はふっと笑った。
「――くるべくして順番がきた。それだけだよ」
次はティキが呆れたように苦笑する。
「俺たちはエクソシスト共を討ちに行く。お前も来いよ」
「だめだよティッキー。この子にはこの子のペースってものがあるの」
「気が利かないなぁ」と半ば強引にティキを連れ、ロードは部屋を出ていった。
部屋に再び静けさが戻る。願わくはいつも煩いこの双子ももうしばらく眠っていてほしい。先程から身体に巡るこの感覚を、じっくりと噛みしめたい。
待っていたのだ。この時を。男の皮膚が、爪先から暗い灰色に、徐々に徐々に蝕まれていく。最終的に顔をも覆いつくし、男は薄っすら瞬きをした。
その額には神の十字が、まるで啓示のように羅列されていた。
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