13.スキン・ボリック・ルーム
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全速力でかけぬけた先のまだ辛うじて地面の形を保っている場所で、皆呼吸が落ち着く暇もなく次なすべきことを思案する。ラビが先手をきって開口した。
「どーするよ……。逃げ続けられんのも時間の問題だぜ。伯爵の言う通り三時間でここが消滅するならさ」
「あと二時間レロ」
「どの道助からないである!」
「ロードの能力っていう空間移動は僕らも身に覚えがあります」
「うん」
扉の持ち主、巻き戻しの街で少女のノアと邂逅したアレンとリナリーがその時のことを思い起こしていた。
「しゃーねぇってか」
「こればっかりは、ね」
「ちっ……」
仕方なしに便乗するラビに咲耶が続き、神田も舌打ちで同意するほかなかった。
扉を開けるのが誰かとの話になり、うらみっこなしでじゃんけんで決めることになった。複数人との勝負にもかかわらず一回で負けたのはアレンだった。ラビと神田の多少馬鹿にするような視線に納得はいかないものの、彼は適当な扉に鍵を差し込む。その瞬間なんの変哲もなかったブラウンの扉に、きらびやかな色合いの絵のようなものが浮かび上がった。
皆の間に緊張が走る。この先に何があるのか。どんな危険が口をあけているの待っているのか。
「絶対脱出です」
アレンが手の甲を差し出した。それに便乗するように一人、また一人と手を重ねていく。
「おいさ」
「である」
「うん」
「ウッス」
積み重なっていく決意の表れに、咲耶は皆をちらりと見ればやはり自分にも視線が向けられていので、諦めてそろりと上に手を置いた。そして次に皆の視線が向かった先にはやはり怪訝な表情に、これでもかと腕を汲んで同調しない意思を顕示している神田の姿が。
「神田~……」
「やるか。見んな」
「……ですよね」
「行くぞ」と相も変わらず平坦に言ってのけ、神田は扉を開けた。部屋の中を見て思わず皆思わず呆ける。外とはうって変わって、そこは数多の星と月が空で軽快に遊ぶ夜の世界だった。むきだしの大地から高い岩々が生えている。水のない乾燥地帯はこんなところだろうかとふと考えた。当たりを見渡す中、黒髪の剣士がなにかを見つけて足を止めた。
「神田?」
「シッ、黙れ」
口を開くアレンを静止し、「いるぞ」と声に冷静と鋭さを含んで前方を見ていた。
皆神田の視線の先を追えば、場に不釣り合いな大柄が男がそこにたっている。反応したのは神田に加えもう一人、咲耶だった。中国へ向かう汽車にて、一度戦闘したその異形の姿は忘れるわけがない。
「お前ら先行ってろ」
刀に手をかけ、温度感にかける声色でいってのける黒の剣士に、アレンとラビが即座に反応する。
「えっ!?」
「ユウ?」
「アレはうちの元帥を狙ってて何度か会ってる」
彼らしいといえばそこまでだが、あまりに無謀だ。リナリーが焦りぎみに割って入った。
「カッ、神田一人置いてなんか行けないよ!」
「勘違いするな。別にお前らの為じゃない。うちの元帥を狙ってる奴だと言っただろ」
腰の対アクマ武器に手をかけ、彼はすらりとその刀身を空に晒した。冷たい刃に細い指を滑らし自身の気を込めて発動する。
「アイツとは俺がやる」