12.閉幕ベルはまだ鳴らない
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爆風荒れる視界の中で、伯爵が剣を振り下ろすのが見えた。戦っている。忽然と上空に現れた黒い物体から出てきた何かと。
突風にラビと咲耶の体が吹き飛ばされそうになるが、その中から仮面が現れラビはアクマかと思い臨戦態勢をとろうとした。しかし、それは確かな姿を形成して二人の前に降り立ち、思わず驚愕した。
「ラビ!? 咲耶さん!」
白雪の妖精が、道化の姿でそこにいた。
「伯爵がこっちに来ませんでし「まちやがれコラァ!!」
舞う砂埃の中から怒号が聞こえたかと思えば、鬼の形相をした神田がアレンに襲い掛かっていった。殺気を乗せた刀を、亡くしたと聞いていたイノセンスの腕で受け止める。お互いの顔を認識し、二人共に何故だか嫌忌に歪んでいく。
「どういう事だ……?」
「僕が聞きたいんですけど」
「俺は天パのノアを追ってきたんだ。おい藤島、ラビ、奴知らねぇか!」
「さぁ……」
「そういやオレの相手してたマッチョのおっさんも……」
戦っていた筈の敵が、跡形もなく姿を消していた。激しい戦闘後を物語る冴えた空気と、未だリナリーを守るように聳える結晶だけがそこにある。
神田とアレンの言い争いが勃発して、それを止めようとしたラビまで飛び火をくらう始末。ラビ然り、アレンとも仲が悪いのを目にしてとことん彼と合う人間はこの世にいないのではないだろうかとも思ってしまう。
アレンとの再会に浸るには、ここでは少し無理なようだ。
真っ白な部屋の中、『俺』はふわりと目を覚ました。
「おはよぉ。眠り姫ぇ」
視界の横から顔を出してくる少女の姿をしたそいつに、思わず腕で顔を覆った。
いつの間に部屋に入ってきていたのか。
「…………何のつもりだ」
「僕たちが始めて会った時の再現〜」
「懐かしいでしょぉ」とベッドに肘をついて楽しそうに付け足すこいつは、昔から微塵も変わっていない。少女の見た目も、飴玉のような天真爛漫さも。その根底にノアの持つ狂気を孕んでいるのを知っている。
眠りから覚めたばかりの体を起こせば、シーツの中から素肌が空気に晒される。
「もしかして古傷えぐっちゃったぁ?」
「……千年公から仕事預かってるはずだろう。随分悠長だな」
「もう引っ越し準備終わったもーん。見てて、じきにエクソシスト達がこの方舟の中に入って来るよ。君にとって≪はじまり≫の時がくる」
「ロード」
こいつの、長子の名を口にした。「ん?」と小首を傾げる幼子のような仕草。あの日こいつと千年公に、命の意義を貰い受けた。
「人間の地獄への送り方を、ずっと考えていた」
「物騒~。見つかったの?」
「一番苦しい方法を」
「ははっ、断食明けの祭りみたい!」
窓の外から誰かの話し声が聞こえる。跳ねるようにロードが窓際に近づき、外にいるであろう人物達に声をかけた。「アラ、ロード。作業ご苦労様でしタ」と千年公独特の声色がこちらまで届いた。一度ロードが『俺』に振り返り、また後でと楽しそうに手を降って窓から下に降りていく。
止まっていた『俺』の時間。錆びついた秒針が鈍い音を立てて動き出した。
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突風にラビと咲耶の体が吹き飛ばされそうになるが、その中から仮面が現れラビはアクマかと思い臨戦態勢をとろうとした。しかし、それは確かな姿を形成して二人の前に降り立ち、思わず驚愕した。
「ラビ!? 咲耶さん!」
白雪の妖精が、道化の姿でそこにいた。
「伯爵がこっちに来ませんでし「まちやがれコラァ!!」
舞う砂埃の中から怒号が聞こえたかと思えば、鬼の形相をした神田がアレンに襲い掛かっていった。殺気を乗せた刀を、亡くしたと聞いていたイノセンスの腕で受け止める。お互いの顔を認識し、二人共に何故だか嫌忌に歪んでいく。
「どういう事だ……?」
「僕が聞きたいんですけど」
「俺は天パのノアを追ってきたんだ。おい藤島、ラビ、奴知らねぇか!」
「さぁ……」
「そういやオレの相手してたマッチョのおっさんも……」
戦っていた筈の敵が、跡形もなく姿を消していた。激しい戦闘後を物語る冴えた空気と、未だリナリーを守るように聳える結晶だけがそこにある。
神田とアレンの言い争いが勃発して、それを止めようとしたラビまで飛び火をくらう始末。ラビ然り、アレンとも仲が悪いのを目にしてとことん彼と合う人間はこの世にいないのではないだろうかとも思ってしまう。
アレンとの再会に浸るには、ここでは少し無理なようだ。
真っ白な部屋の中、『俺』はふわりと目を覚ました。
「おはよぉ。眠り姫ぇ」
視界の横から顔を出してくる少女の姿をしたそいつに、思わず腕で顔を覆った。
いつの間に部屋に入ってきていたのか。
「…………何のつもりだ」
「僕たちが始めて会った時の再現〜」
「懐かしいでしょぉ」とベッドに肘をついて楽しそうに付け足すこいつは、昔から微塵も変わっていない。少女の見た目も、飴玉のような天真爛漫さも。その根底にノアの持つ狂気を孕んでいるのを知っている。
眠りから覚めたばかりの体を起こせば、シーツの中から素肌が空気に晒される。
「もしかして古傷えぐっちゃったぁ?」
「……千年公から仕事預かってるはずだろう。随分悠長だな」
「もう引っ越し準備終わったもーん。見てて、じきにエクソシスト達がこの方舟の中に入って来るよ。君にとって≪はじまり≫の時がくる」
「ロード」
こいつの、長子の名を口にした。「ん?」と小首を傾げる幼子のような仕草。あの日こいつと千年公に、命の意義を貰い受けた。
「人間の地獄への送り方を、ずっと考えていた」
「物騒~。見つかったの?」
「一番苦しい方法を」
「ははっ、断食明けの祭りみたい!」
窓の外から誰かの話し声が聞こえる。跳ねるようにロードが窓際に近づき、外にいるであろう人物達に声をかけた。「アラ、ロード。作業ご苦労様でしタ」と千年公独特の声色がこちらまで届いた。一度ロードが『俺』に振り返り、また後でと楽しそうに手を降って窓から下に降りていく。
止まっていた『俺』の時間。錆びついた秒針が鈍い音を立てて動き出した。
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