11.江戸参戦
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「気をつけろユウ!! そいつメチャクチャ硬ぇ…………ぞっ?」
六幻を二刀解放させ、高く跳躍した黒色剣士に太陽兎が叫ぶも、まるで一寸の狂いもなく丸太を縦割りする所作でアクマを葬った彼に、ラビの杞憂が一瞬で終わってしまった。
「また気持ちよく斬りおった! 腕を上げたな神田め」
「カンダ……? なんてガキだ…………」
その様子を見ていたブックマンから出た少年の名前であろうそれを呟いて、クロウリーが唖然とする。自分達の力では全く歯が立たなかったあの巨人兵を一撃で倒した。元々全員負傷していたのが大きな要因ではあるが。思いがけない援軍の到来にブックマンは安堵を口にした。
丁度ラビの元へと咲耶が到着すると同時に、神田も屋根に舞い戻ってきた。
「おい貴様」
背を向け刀を肩に預けた彼の、冷たい声色。恐らくラビの事だろう。その証拠に怯えながらも赤い髪の少年が返事をした。ぎろりと他者を射殺せそうな眼光で神田は彼を睨みつける。
「俺のファーストネームを口にすんじゃねぇよ……刻むぞ」
低く冷淡な刃物に襲われた気がして、ラビの肝が氷のように冷えた。二人の様子にやっぱりラビの事を嫌っていたのかと腑に落ちる。
「? どうした咲耶」
自分の視線に気付いたであろうラビが問いかけてきた。彼が抱えている彼女、気絶しているのか動かなくて。
「…………その子」
「あ、会うの初めてだっけ。リナリー」
やはりそうだった。自分の中で答え合わせが出来た、その直後――。
ぞくりと三人の背筋に得たいの知れない寒気が駆け抜けた。次に視界を覆ったのは、漆黒の光。思考を司る神経が、活動を止めた。
「うわ~惚れるね千年公、江戸がスッカラカンだよ」
我等が王の力は、空想をも超える。そんな戯言が本当のように思えてティキ・ミックは軽く畏怖を唱えた。力の一割すら出していないだろう伯爵のお遊びのような一撃は、そこにあった筈の街を一瞬で更地に変え、土地の残骸の欠片すら残っていない。地面は土すら跡形もなく消え去り黒く艶やかで、まるで夜空の墓場だった。
「あ、エクソシストみっけ。まだ形があったか」
目を凝らしてみると動いている小さな影が見える。しぶとい奴もいたものだと伯爵に一言言って、ティキはふわりと地上に降りて行った。
地面に刀を突き刺し、神田はなんとか体を支えた。もう片方の膝は意地でもついてやるものか。
黒い光が視界一面に広がって、爆発なんてものが比じゃないほどの衝動が襲ってきた。体を内側から破壊されるようなおぞましい感覚。髪紐が解け、艶やかな黒髪が彼の団服の背に晒される。荒い呼吸と口から血が滲むのも無視して、毒の言葉を吐いてやった。
「ヤロォ……倒れっかよボケ……っ!」
神田の後方で倒れていたラビが、苦しみながらも体を起こす。
「っ…………咲耶、平気、か……?」
「…………ぅっ、」
「リナ……リは、…………」
隣で倒れている咲耶がぴくりと動いた。意識はあるようだ。
腕に抱えていたはずの彼女がいない。思考がまだうまく回らない頭の中に、ふわりと自分を呼ぶ声がした。
(ラビ……)
視界の端に光る何かが見えた気がしてそちらを向けば、見た事のある大きな結晶がそこにあった。海上で戦ったリナリーを探しに行って見つけたそれは、彼女のイノセンスが自分の意思で適合者を守った現象そのものだった。イノセンスの歴史において記録にない異例が今また目の前にいる。始めてそれを見た神田が眉をひそめた。
「おい、何だ コレは……!?」
(神田……ラビ……みん……な……皆……皆……っ!!)
結晶の中から聞こえる声と、伸ばされた手の影が自分達の仲間である少女に他ならない。
咲耶も体を起こして立ち上がり光る結晶を見る。イノセンスの気配。原石、とはまた違うような。
それに伯爵が目をつけるのを即座に察知したティエドールがマリに警告した。
「危険だぞ神田!」
盲目の兄弟子の叫びが神田の耳に届いた時、ティキの鋭い攻撃が神田を襲った。即座に反応して刀で受け止める。
「もらうよ彼女」
「チッ!」
「ユウ!」
始った二人の男の戦闘に負傷した体を引きずりながらもラビが援護しようとしたその時、目の前に大きな影が圧し掛かってきた。自分の二倍以上はあろうノアの大男が、不気味な笑みを浮かべて拳を振り下ろしてくる。
(あのノアは……!)
咲耶の目が見開く。中国大陸に向かう汽車で見た男だった。あの時は戦うことなく消えていったが、まさかこの場でまた会うなんて。
「甘いのは好きか?」
場にそぐわない問いと拳をぎりぎりのところでラビが避けた。後方で巨大なアクマの一体が地上から現れた巨人兵に組み敷かれている。あれはティエドールのイノセンスだ。元帥である彼が相手ならばあのアクマに勝ち目はない。だとすると自分が優先すべきはこちらのほうだ。
「水鼬!」
水の鎌鼬でノアの男を攻撃するが、巨体にそぐわぬ動作で交わされ、自分が視界に入っていないとでもいうようにラビだけに襲い掛かっていった。
「ラビ!!」
「くっ!」
その時ラビの意識が結晶に矛先を向いた。風船のように大きな体の異質なピエロが傘を揺らめかせ上空から降りてくる。彼の掌から黒い球体が現れたかと思えば、躊躇せずそれを結晶に取り込んだ。
「リナリィー!!」
太陽兎の悲痛な叫びが木霊する。
刹那、悲しい三日月だけが浮遊する上空に、歪な形の何かが現れた。
「空が割れた……!?」
「一体……っ」
ラビと二人、開けた空を見上げる。砂埃と眩い光。何かがこの場に来ている。季節にそぐわない雪色の気配。伯爵の口端だけが、薄気味悪く吊り上がった。
2024/12/6.
六幻を二刀解放させ、高く跳躍した黒色剣士に太陽兎が叫ぶも、まるで一寸の狂いもなく丸太を縦割りする所作でアクマを葬った彼に、ラビの杞憂が一瞬で終わってしまった。
「また気持ちよく斬りおった! 腕を上げたな神田め」
「カンダ……? なんてガキだ…………」
その様子を見ていたブックマンから出た少年の名前であろうそれを呟いて、クロウリーが唖然とする。自分達の力では全く歯が立たなかったあの巨人兵を一撃で倒した。元々全員負傷していたのが大きな要因ではあるが。思いがけない援軍の到来にブックマンは安堵を口にした。
丁度ラビの元へと咲耶が到着すると同時に、神田も屋根に舞い戻ってきた。
「おい貴様」
背を向け刀を肩に預けた彼の、冷たい声色。恐らくラビの事だろう。その証拠に怯えながらも赤い髪の少年が返事をした。ぎろりと他者を射殺せそうな眼光で神田は彼を睨みつける。
「俺のファーストネームを口にすんじゃねぇよ……刻むぞ」
低く冷淡な刃物に襲われた気がして、ラビの肝が氷のように冷えた。二人の様子にやっぱりラビの事を嫌っていたのかと腑に落ちる。
「? どうした咲耶」
自分の視線に気付いたであろうラビが問いかけてきた。彼が抱えている彼女、気絶しているのか動かなくて。
「…………その子」
「あ、会うの初めてだっけ。リナリー」
やはりそうだった。自分の中で答え合わせが出来た、その直後――。
ぞくりと三人の背筋に得たいの知れない寒気が駆け抜けた。次に視界を覆ったのは、漆黒の光。思考を司る神経が、活動を止めた。
「うわ~惚れるね千年公、江戸がスッカラカンだよ」
我等が王の力は、空想をも超える。そんな戯言が本当のように思えてティキ・ミックは軽く畏怖を唱えた。力の一割すら出していないだろう伯爵のお遊びのような一撃は、そこにあった筈の街を一瞬で更地に変え、土地の残骸の欠片すら残っていない。地面は土すら跡形もなく消え去り黒く艶やかで、まるで夜空の墓場だった。
「あ、エクソシストみっけ。まだ形があったか」
目を凝らしてみると動いている小さな影が見える。しぶとい奴もいたものだと伯爵に一言言って、ティキはふわりと地上に降りて行った。
地面に刀を突き刺し、神田はなんとか体を支えた。もう片方の膝は意地でもついてやるものか。
黒い光が視界一面に広がって、爆発なんてものが比じゃないほどの衝動が襲ってきた。体を内側から破壊されるようなおぞましい感覚。髪紐が解け、艶やかな黒髪が彼の団服の背に晒される。荒い呼吸と口から血が滲むのも無視して、毒の言葉を吐いてやった。
「ヤロォ……倒れっかよボケ……っ!」
神田の後方で倒れていたラビが、苦しみながらも体を起こす。
「っ…………咲耶、平気、か……?」
「…………ぅっ、」
「リナ……リは、…………」
隣で倒れている咲耶がぴくりと動いた。意識はあるようだ。
腕に抱えていたはずの彼女がいない。思考がまだうまく回らない頭の中に、ふわりと自分を呼ぶ声がした。
(ラビ……)
視界の端に光る何かが見えた気がしてそちらを向けば、見た事のある大きな結晶がそこにあった。海上で戦ったリナリーを探しに行って見つけたそれは、彼女のイノセンスが自分の意思で適合者を守った現象そのものだった。イノセンスの歴史において記録にない異例が今また目の前にいる。始めてそれを見た神田が眉をひそめた。
「おい、何だ コレは……!?」
(神田……ラビ……みん……な……皆……皆……っ!!)
結晶の中から聞こえる声と、伸ばされた手の影が自分達の仲間である少女に他ならない。
咲耶も体を起こして立ち上がり光る結晶を見る。イノセンスの気配。原石、とはまた違うような。
それに伯爵が目をつけるのを即座に察知したティエドールがマリに警告した。
「危険だぞ神田!」
盲目の兄弟子の叫びが神田の耳に届いた時、ティキの鋭い攻撃が神田を襲った。即座に反応して刀で受け止める。
「もらうよ彼女」
「チッ!」
「ユウ!」
始った二人の男の戦闘に負傷した体を引きずりながらもラビが援護しようとしたその時、目の前に大きな影が圧し掛かってきた。自分の二倍以上はあろうノアの大男が、不気味な笑みを浮かべて拳を振り下ろしてくる。
(あのノアは……!)
咲耶の目が見開く。中国大陸に向かう汽車で見た男だった。あの時は戦うことなく消えていったが、まさかこの場でまた会うなんて。
「甘いのは好きか?」
場にそぐわない問いと拳をぎりぎりのところでラビが避けた。後方で巨大なアクマの一体が地上から現れた巨人兵に組み敷かれている。あれはティエドールのイノセンスだ。元帥である彼が相手ならばあのアクマに勝ち目はない。だとすると自分が優先すべきはこちらのほうだ。
「水鼬!」
水の鎌鼬でノアの男を攻撃するが、巨体にそぐわぬ動作で交わされ、自分が視界に入っていないとでもいうようにラビだけに襲い掛かっていった。
「ラビ!!」
「くっ!」
その時ラビの意識が結晶に矛先を向いた。風船のように大きな体の異質なピエロが傘を揺らめかせ上空から降りてくる。彼の掌から黒い球体が現れたかと思えば、躊躇せずそれを結晶に取り込んだ。
「リナリィー!!」
太陽兎の悲痛な叫びが木霊する。
刹那、悲しい三日月だけが浮遊する上空に、歪な形の何かが現れた。
「空が割れた……!?」
「一体……っ」
ラビと二人、開けた空を見上げる。砂埃と眩い光。何かがこの場に来ている。季節にそぐわない雪色の気配。伯爵の口端だけが、薄気味悪く吊り上がった。
2024/12/6.
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