11.江戸参戦
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数多のアクマが融合して作られた巨大な魔物に、先に上陸していたクロス部隊の面々は為す術もなく打ちのめされていた。
絶望が頭の中を支配する。今まで数多のアクマを破壊してきた自分達の対アクマ武器の切っ先が、これっぽっちも届かないだなんて。
向かっては跳ね返され、それがもう何度目かもわからない。魔物の攻撃によって崩れた瓦礫の中、倒れた泣き虫な吸血鬼と小柄な翁の肢体に血が滲む。
「動けるか……アレイスター」
「ああっ……くそ! 世界は広いな……私の牙が届かんっ」
イノセンスを最大限に活用しているはずなのに、あの鋼鉄の皮膚には傷一つ付けられない。
息も絶え絶え、二人は傷だらけの体に入らない力を入れて起き上がろうとする。
そこにまたしても爆音。勢いよく壁が破壊されたかと思えば、ノアの一人へ威勢よく向かっていったはずの真っ赤な弟子がそこに転がっていた。情けなくやられている姿に翁、ブックマンが叱咤する。
「何やっとるアホ! 奴をボコボコにするんじゃないのか、しっかりせぇボケ!」
「くっ、くそじじぃっ。その台詞そんまま返すさっ」
「わしゃ年なんじゃ!」とブックマンが噛み付く。体は満身創痍だが、お互い悪態をつけるくらいの元気は残っている様子。心が壊れれば、本当に終わってしまう。
ラビはなんとか起き上がって、痛む頭を片手で抱えた。
「反則みてぇに強ェなチクショーっ、ケガに浸みる……」
刹那、頭上から船員の生き残りの一人の叫ぶ声がして、ギョっとした。
「まずいっあのヤロ、リナリー達の所にっ!」
「ミランダ!!」
倒れた濃いブラウンヘアーの女性を、短い黒髪の少女が受け止める。腕の中の彼女の顔色が、血を抜かれたように真っ青だった。中国から江戸まで、そしてこの瞬間も守備を任された彼女はずっと発動のために体力も精神も削っていた。ただでさえ細いこの肢体が限界をむかえている。
「体力切れ?」
耳元で聴こえた声に少女、リナリーの背筋が冷える。反応が間に合わず後ろから声の主に首を捕まれた。
「ふーん女のエクソシストね。そっちの貧弱そうな彼女大丈夫か? 無理しすぎちゃった?」
屋根の中から空間を抜けて姿を表したであろうノアの男。言葉の軽さと相反するようにリナリーの首は力強く締めあげられる。屋根に倒れたミランダの口から血が流れた。
指を鳴らし、苦しむリナリーにティキは笑む。
「女は無理しないで綺麗に死ねよ」
その時、後ろから放たれたであろう誰かの拳がティキの胸を突き抜けた。イノセンス以外の物質は、彼の体を傷つけることはできない。
「エクソシスト様を放せ化物!!」
背後を見れば怯えた様子の幼げな顔立ちの男が自分に言い放った。
「チャオジーさん……ダメ……」
ただの人間がノアに敵うはずがない。リナリーの悲痛が逃げろと訴えるも、残り二人の船員の生き残りもそれぞれ武器を手にとっていた。ティキは煩わしそうに軽く息を吐いた。
「シラけんなぁ」
彼の背中から巨大な蝶が現れ、チャオジーに襲いかかる。
「ティーズ、喰っちまえ」
ティキの攻撃がチャオジーの肢体を飲み込もうとした――刹那。
肩に重みが圧し掛かってきた。ふと屋根に伸びる自分の影の上に、誰かが立っているのが見える。すかさずティキが頭上を見遣れば、自分の肩に立ち片足を振り上げた人間がそこに。自分の頭目掛けて、足を思い切り蹴り上げてきた。
「っぶね……!」
瞬時に避けて距離を取る。突然の事で少し怯んだ。ティキがやっとまともに自分に攻撃したであろうその顔を確認ができたのは、相手が屋根に着地した直後だった。
「あ」
「……?」
自分を見て瞳孔を開くノアに咲耶はなんの反応か知るよしもなし。腕の中に少女を抱えている。もしかしてこの子がコムイの妹だろうか。頭と顔に痛々しい手当の痕がある。再び向かおうとする前に、ノアの足元の屋根が内側から破壊され、そこから黒い長髪の少年が飛び出した。ティキが焦ったように一人ごちた。
「今日は客が多いな」
瞬時に猛攻をしかけて行く神田に押され、ノアが別の家の屋根へと後退していった。
「咲耶!」
「ラビ……!」
崩れた屋根の中から槌が伸びて、赤い髪の男が姿を現した。彼の足から頭までを交互に見て一言。
「傷だらけ……」
「ほっとけ……。いやマジ、来てくれて助かった」
「うん」
全力で戦ったんだろう。真新しい団服で印象もまた違う。悠長に久方ぶりの挨拶ができるわけもなく、巨大なアクマの一体が襲いかかってきた。ラビがすかさず槌を握り直す。
「水牢」
いつもより巨大な水の鳥籠を出し、その魔物を捕らえた。
「ここは私がやる。行って!」
「おう。チャオジー! ミランダを頼んださ!」
ノアに立ち向かっていった男性にそう言い残し、向かっていった神田の援護をすべくラビはその場を離れた。倒れた女性を男性三人が救護している。あそこは大丈夫だろう、咲耶はアクマへと向き直った。普通の攻撃ではまず効かない。ならば――
「水鼬 大刀!!」
必殺技である巨大な水の鎌鼬が虚空から現れ、アクマへと向かっていく。それは巨体を切り刻み、首を刈り取って真っ二つにした。悲鳴を上げ、崩れた体が地上に崩れ落ちていく。
離れた場所にいたもう一体から不気味な咆哮が上がった。そちらを見れば、糸らしきものに捕らわれている。あれはマリの弦だ。彼の美しい旋律は、アクマにとって不協和音そのものだ。弦をバネにして黒い誰かがが空を舞うのが見える。その手に握られた鈍色に光る刀の持ち主はたった一人だけ。そちらに向かうべく咲耶は屋根の上を飛んだ。
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絶望が頭の中を支配する。今まで数多のアクマを破壊してきた自分達の対アクマ武器の切っ先が、これっぽっちも届かないだなんて。
向かっては跳ね返され、それがもう何度目かもわからない。魔物の攻撃によって崩れた瓦礫の中、倒れた泣き虫な吸血鬼と小柄な翁の肢体に血が滲む。
「動けるか……アレイスター」
「ああっ……くそ! 世界は広いな……私の牙が届かんっ」
イノセンスを最大限に活用しているはずなのに、あの鋼鉄の皮膚には傷一つ付けられない。
息も絶え絶え、二人は傷だらけの体に入らない力を入れて起き上がろうとする。
そこにまたしても爆音。勢いよく壁が破壊されたかと思えば、ノアの一人へ威勢よく向かっていったはずの真っ赤な弟子がそこに転がっていた。情けなくやられている姿に翁、ブックマンが叱咤する。
「何やっとるアホ! 奴をボコボコにするんじゃないのか、しっかりせぇボケ!」
「くっ、くそじじぃっ。その台詞そんまま返すさっ」
「わしゃ年なんじゃ!」とブックマンが噛み付く。体は満身創痍だが、お互い悪態をつけるくらいの元気は残っている様子。心が壊れれば、本当に終わってしまう。
ラビはなんとか起き上がって、痛む頭を片手で抱えた。
「反則みてぇに強ェなチクショーっ、ケガに浸みる……」
刹那、頭上から船員の生き残りの一人の叫ぶ声がして、ギョっとした。
「まずいっあのヤロ、リナリー達の所にっ!」
「ミランダ!!」
倒れた濃いブラウンヘアーの女性を、短い黒髪の少女が受け止める。腕の中の彼女の顔色が、血を抜かれたように真っ青だった。中国から江戸まで、そしてこの瞬間も守備を任された彼女はずっと発動のために体力も精神も削っていた。ただでさえ細いこの肢体が限界をむかえている。
「体力切れ?」
耳元で聴こえた声に少女、リナリーの背筋が冷える。反応が間に合わず後ろから声の主に首を捕まれた。
「ふーん女のエクソシストね。そっちの貧弱そうな彼女大丈夫か? 無理しすぎちゃった?」
屋根の中から空間を抜けて姿を表したであろうノアの男。言葉の軽さと相反するようにリナリーの首は力強く締めあげられる。屋根に倒れたミランダの口から血が流れた。
指を鳴らし、苦しむリナリーにティキは笑む。
「女は無理しないで綺麗に死ねよ」
その時、後ろから放たれたであろう誰かの拳がティキの胸を突き抜けた。イノセンス以外の物質は、彼の体を傷つけることはできない。
「エクソシスト様を放せ化物!!」
背後を見れば怯えた様子の幼げな顔立ちの男が自分に言い放った。
「チャオジーさん……ダメ……」
ただの人間がノアに敵うはずがない。リナリーの悲痛が逃げろと訴えるも、残り二人の船員の生き残りもそれぞれ武器を手にとっていた。ティキは煩わしそうに軽く息を吐いた。
「シラけんなぁ」
彼の背中から巨大な蝶が現れ、チャオジーに襲いかかる。
「ティーズ、喰っちまえ」
ティキの攻撃がチャオジーの肢体を飲み込もうとした――刹那。
肩に重みが圧し掛かってきた。ふと屋根に伸びる自分の影の上に、誰かが立っているのが見える。すかさずティキが頭上を見遣れば、自分の肩に立ち片足を振り上げた人間がそこに。自分の頭目掛けて、足を思い切り蹴り上げてきた。
「っぶね……!」
瞬時に避けて距離を取る。突然の事で少し怯んだ。ティキがやっとまともに自分に攻撃したであろうその顔を確認ができたのは、相手が屋根に着地した直後だった。
「あ」
「……?」
自分を見て瞳孔を開くノアに咲耶はなんの反応か知るよしもなし。腕の中に少女を抱えている。もしかしてこの子がコムイの妹だろうか。頭と顔に痛々しい手当の痕がある。再び向かおうとする前に、ノアの足元の屋根が内側から破壊され、そこから黒い長髪の少年が飛び出した。ティキが焦ったように一人ごちた。
「今日は客が多いな」
瞬時に猛攻をしかけて行く神田に押され、ノアが別の家の屋根へと後退していった。
「咲耶!」
「ラビ……!」
崩れた屋根の中から槌が伸びて、赤い髪の男が姿を現した。彼の足から頭までを交互に見て一言。
「傷だらけ……」
「ほっとけ……。いやマジ、来てくれて助かった」
「うん」
全力で戦ったんだろう。真新しい団服で印象もまた違う。悠長に久方ぶりの挨拶ができるわけもなく、巨大なアクマの一体が襲いかかってきた。ラビがすかさず槌を握り直す。
「水牢」
いつもより巨大な水の鳥籠を出し、その魔物を捕らえた。
「ここは私がやる。行って!」
「おう。チャオジー! ミランダを頼んださ!」
ノアに立ち向かっていった男性にそう言い残し、向かっていった神田の援護をすべくラビはその場を離れた。倒れた女性を男性三人が救護している。あそこは大丈夫だろう、咲耶はアクマへと向き直った。普通の攻撃ではまず効かない。ならば――
「水鼬 大刀!!」
必殺技である巨大な水の鎌鼬が虚空から現れ、アクマへと向かっていく。それは巨体を切り刻み、首を刈り取って真っ二つにした。悲鳴を上げ、崩れた体が地上に崩れ落ちていく。
離れた場所にいたもう一体から不気味な咆哮が上がった。そちらを見れば、糸らしきものに捕らわれている。あれはマリの弦だ。彼の美しい旋律は、アクマにとって不協和音そのものだ。弦をバネにして黒い誰かがが空を舞うのが見える。その手に握られた鈍色に光る刀の持ち主はたった一人だけ。そちらに向かうべく咲耶は屋根の上を飛んだ。
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