8.夜市
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「夜市に行こう」とティエドールからお誘いを受けたのは夕食の席でのことだった。食事が全員分ティエドールの部屋へ運ばれたのは間違いなく彼の差し金で、宿泊代表者名を元帥で登録してしまっていたのもある。
自室で食べるつもりで仕方なしに取りにいくとすでに兄弟子と同業の女の姿がそこにあり、師を含め円形のテーブルを囲んで座っている。一緒に食べようと当たり前のようにティエドールは言った。もちろん神田は拒否した。頑固として。きびすを返す神田の肩をティエドールがやわらかい笑みで、なおかつすごい力で掴み強制的に椅子に座らせる。悪態をつきながら抵抗するもマリと咲耶の諦めろと言わんばかりの視線に二人も彼の圧に逆らえず今に至ることを悟った。
舌打ちを一つ。抵抗を放棄せざる追えない状況で皆箸を手に取った。テーブルに並ぶ本場の中華料理に舌つづみをうつ中、冒頭の提案を一介のエクソシスト三人はうけることとなる。どうやら宿の主人からこの辺りの大通りでほぼ毎日夜になると出店で賑わうと聞いたらしい。神田が今度こそ固く拒否した。
「断ります」
「あれれ、君の今の仕事って私の護衛じゃなかったっけ?」
――任務放棄とは我が子ながら情けない!
いつあんたの子になったと罵倒しそうになったが任務の単語を出されては、上から押し込むように怒りを抑えるほかない。
この後一階に集合とにこやかに言ってティエドールは京醤肉絲を口に運んだ。北京地方の味付けのためか少し濃い気がする。
「チッ、」
「少しの息抜きだと思え」
マリが宥める。こうやって心穏やかに過ごせるのもあとわずかなのは四人共に承知だった。神田は手早く食事を済ませ誰よりも早く席を立った。足早に部屋を出て自室へ向かう。
「待って神田」
廊下の後方から咲耶が袋を持って追ってきた。
「これ新しい団服だって」
そういって袋の中から黒い衣類を取り、自分に差し出してきた。丁寧に畳まれたそれの胸元らしき位置に見知った十字の装飾が施されている。なんとなしに咲耶の持つ袋を見てみればおそらくもう一着分の衣類の端が覗いていた。
「それはお前のか」
「うん。そう」
「……何だよ」
彼女の視線が自分の手に持つ団服へ一心に注がれている。
「神田。私男性用がいい」
「ふざんけんな俺はどうなる」
「…………女性用……」
「…………切られたいようだな」
「あー、冗談冗談」
愛用の刀は常に彼の腰に。鞘に手をかけ今にも抜刀しそうな構えの神田から咲耶はすかさず離れた。
海辺の街にまもなく夜が舞い降りてくる。
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自室で食べるつもりで仕方なしに取りにいくとすでに兄弟子と同業の女の姿がそこにあり、師を含め円形のテーブルを囲んで座っている。一緒に食べようと当たり前のようにティエドールは言った。もちろん神田は拒否した。頑固として。きびすを返す神田の肩をティエドールがやわらかい笑みで、なおかつすごい力で掴み強制的に椅子に座らせる。悪態をつきながら抵抗するもマリと咲耶の諦めろと言わんばかりの視線に二人も彼の圧に逆らえず今に至ることを悟った。
舌打ちを一つ。抵抗を放棄せざる追えない状況で皆箸を手に取った。テーブルに並ぶ本場の中華料理に舌つづみをうつ中、冒頭の提案を一介のエクソシスト三人はうけることとなる。どうやら宿の主人からこの辺りの大通りでほぼ毎日夜になると出店で賑わうと聞いたらしい。神田が今度こそ固く拒否した。
「断ります」
「あれれ、君の今の仕事って私の護衛じゃなかったっけ?」
――任務放棄とは我が子ながら情けない!
いつあんたの子になったと罵倒しそうになったが任務の単語を出されては、上から押し込むように怒りを抑えるほかない。
この後一階に集合とにこやかに言ってティエドールは京醤肉絲を口に運んだ。北京地方の味付けのためか少し濃い気がする。
「チッ、」
「少しの息抜きだと思え」
マリが宥める。こうやって心穏やかに過ごせるのもあとわずかなのは四人共に承知だった。神田は手早く食事を済ませ誰よりも早く席を立った。足早に部屋を出て自室へ向かう。
「待って神田」
廊下の後方から咲耶が袋を持って追ってきた。
「これ新しい団服だって」
そういって袋の中から黒い衣類を取り、自分に差し出してきた。丁寧に畳まれたそれの胸元らしき位置に見知った十字の装飾が施されている。なんとなしに咲耶の持つ袋を見てみればおそらくもう一着分の衣類の端が覗いていた。
「それはお前のか」
「うん。そう」
「……何だよ」
彼女の視線が自分の手に持つ団服へ一心に注がれている。
「神田。私男性用がいい」
「ふざんけんな俺はどうなる」
「…………女性用……」
「…………切られたいようだな」
「あー、冗談冗談」
愛用の刀は常に彼の腰に。鞘に手をかけ今にも抜刀しそうな構えの神田から咲耶はすかさず離れた。
海辺の街にまもなく夜が舞い降りてくる。
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