4.孤城の吸血鬼 Ⅲ
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「何してる! この子達はアレイスター様の大事な花よ!!」
少し露出した看護婦のような服に身を包んだ女性が二人を睨む。その姿を視界に捕らえたラビの脳内を、何かが打ちぬく音がした。女性がどこからか熱視線を感じてそれを辿れば、彼女の色気に打ちぬかれたであろう赤い少年が溶けた表情で自分を見ている。正直悪い気はしなくて、ウィンクサービス。
「可愛い子ね。どう? 私の恋人になる?」
「マジ!?」
「聞けぇ!!!」
蜂蜜のような誘惑に、思わずその気になる兎。ついにアレンの堪忍袋の尾がぶった切れた。
先ほどから何度呼んでも意識が美女に向いているせいで弾かれるラビの脳天に、容赦なく発動させたままの左拳をお見舞いする。
「何すんさー」
「喰われかけてんですよ!! 何あんなのに興奮してんですか!!」
「やっぱガキだなアレン」
「はああああああ!?」
「あんなの……?」
言い合いをする二人の会話の中で聞き捨てならない侮辱を聞いた気がして、思わず女性の額に十字が浮かび上がる。
「あたしはアレイスター様の助手のエリアーデ。あんた達ここに何しに来たワケ?」
「吸血鬼退治」
「男爵に連れ去られた村人を探してるんです!」
「村人ぉ? ああコレ? 今から埋めにいくとこだけどぉ?」
今しがた右腕で引きずっていたものを軽く持ち上げて見せつければ、二人は愕然とした。先ほどまで生きていたはずの村人の姿。青白い顔に生気はなく、すでに事切れているのが嫌でも分かる。
「ここに来たのが運の尽きね。城内にはこの花達の他に、あんた達みたいな侵入者を排除するための罠がいくつも仕掛けられてるのよ」
生きて帰れるとは思わないことね。勝ち誇ったように、エリアーデが鼻で笑った。
罠。彼女の口から放たれた短い単語に、アレンの背筋が凍った。
「咲耶さんが危ない!」
アレンの科白に、エリアーデの眉間に皺が寄る。
「他にも仲間がいるの?」
「女の子が城のどこかにいるはずなんです!」
「……女の子?」
聞こえるか分からないほどの低いトーンで、エリアーデが呟いた。少しの間だけ沈黙して、次の瞬間には通常の勝気な顔に戻る。
「――そう。まぁいいわよ。それよりコレ。欲しいなら……あげるわ」
右手の村人だった亡骸を、食人花の群れの中に投げ捨てた。アレンが彼の名を呼ぶのもの虚しく、一輪の花にその体を喰いつくされる。刹那、花々に星のペンタクルが浮かび上がり、当たりに強い光を放ちながら大爆発した。意識が追いつくのも間に合わず、二人の体は城の外に投げ出されたのだった。
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少し露出した看護婦のような服に身を包んだ女性が二人を睨む。その姿を視界に捕らえたラビの脳内を、何かが打ちぬく音がした。女性がどこからか熱視線を感じてそれを辿れば、彼女の色気に打ちぬかれたであろう赤い少年が溶けた表情で自分を見ている。正直悪い気はしなくて、ウィンクサービス。
「可愛い子ね。どう? 私の恋人になる?」
「マジ!?」
「聞けぇ!!!」
蜂蜜のような誘惑に、思わずその気になる兎。ついにアレンの堪忍袋の尾がぶった切れた。
先ほどから何度呼んでも意識が美女に向いているせいで弾かれるラビの脳天に、容赦なく発動させたままの左拳をお見舞いする。
「何すんさー」
「喰われかけてんですよ!! 何あんなのに興奮してんですか!!」
「やっぱガキだなアレン」
「はああああああ!?」
「あんなの……?」
言い合いをする二人の会話の中で聞き捨てならない侮辱を聞いた気がして、思わず女性の額に十字が浮かび上がる。
「あたしはアレイスター様の助手のエリアーデ。あんた達ここに何しに来たワケ?」
「吸血鬼退治」
「男爵に連れ去られた村人を探してるんです!」
「村人ぉ? ああコレ? 今から埋めにいくとこだけどぉ?」
今しがた右腕で引きずっていたものを軽く持ち上げて見せつければ、二人は愕然とした。先ほどまで生きていたはずの村人の姿。青白い顔に生気はなく、すでに事切れているのが嫌でも分かる。
「ここに来たのが運の尽きね。城内にはこの花達の他に、あんた達みたいな侵入者を排除するための罠がいくつも仕掛けられてるのよ」
生きて帰れるとは思わないことね。勝ち誇ったように、エリアーデが鼻で笑った。
罠。彼女の口から放たれた短い単語に、アレンの背筋が凍った。
「咲耶さんが危ない!」
アレンの科白に、エリアーデの眉間に皺が寄る。
「他にも仲間がいるの?」
「女の子が城のどこかにいるはずなんです!」
「……女の子?」
聞こえるか分からないほどの低いトーンで、エリアーデが呟いた。少しの間だけ沈黙して、次の瞬間には通常の勝気な顔に戻る。
「――そう。まぁいいわよ。それよりコレ。欲しいなら……あげるわ」
右手の村人だった亡骸を、食人花の群れの中に投げ捨てた。アレンが彼の名を呼ぶのもの虚しく、一輪の花にその体を喰いつくされる。刹那、花々に星のペンタクルが浮かび上がり、当たりに強い光を放ちながら大爆発した。意識が追いつくのも間に合わず、二人の体は城の外に投げ出されたのだった。
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