独占欲。
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夏の暑さが落ち着いたころ
僕は一目惚れをした。
◇
教室のドアが開く。
「今日からこのクラスに転校してくる…入ってこい」
先生に言われドキドキしながら教室へと足を踏み入れる。
「鈴木 りかです。父の仕事の関係で東京から来ました。よ、よろしくお願いしますっ」
「じゃあ鈴木は一番後ろの空いてる席な」
ぺこっとお辞儀をして席に着く。
隣には眼鏡をかけた金髪の男の子。
「よ、よろしくね」
どうも。とだけ言って彼は目も合わせない。
綺麗な横顔だな。なんてじーっと見つめる。
「何?」
今度はこっちを睨む彼と目が合った。
「ご、ごめんね。なんでもないの」
見つめていた自分が恥ずかしくなり慌てて下を向く。
「授業始めるぞー」
先生の声にハッとして私は教科書を開いた。
◇
休み時間になると席の周りにたくさん人が集まってきた。
「東京のどこに住んでたの?」
「スカイツリーって行ったことある?」
質問攻めに合うのも転校生の宿命か…
「えっと…」
たくさんの質問に圧倒され困ってしまう。
「ねえ、邪魔なんだけど」
隣の席の彼が低い声で言った。
「おぉ、わりぃ月島」
誰かがそういうと皆席へと戻っていく。
「怖いよね、月島くん」
誰かがぼそっと言うのが聞こえたが、彼は気にもしない。
「あ、ありがとう。どうしたらいいか困ってて…」
ヘヘッと笑うも、プイっと横を向きヘッドホンをつけ始める彼。
「怒らせちゃったかな…。」
トントンと彼の肩を叩く。
ヘッドホンを少しずらし、
「う、煩くしてごめんなさい。」
初日から嫌な思いをさせてしまった…最悪だ。深々と頭を下げて謝るも何も言われない。
ちらっと顔を見るとびっくりした様子の彼がいた。
「ふっ。君が煩くしたわけでもないのに何謝ってるの」
ドキッ。
不意に笑った彼に思わずときめいてしまう。
「僕は月島蛍。」
それだけ言うとまたヘッドホンをつけ、本を読みだしてしまった。
「な、なんなの…」
ドキドキと早い鼓動とともに、私の耳は赤く染まっていった。
◇
月島くんはバレー部に入っているらしい。
同じクラスの山口くんとよく一緒にいるところを見かける。
月島くんはいつも塩対応で山口くんの話を聞いているが、山口くんはとても嬉しそうだ。
「仲良しなんだなーいいな」
そうつぶやいた自分にびっくりする。
”いいな”って何が?!
ガタッ
自分でも顔が赤くなるのが分かる。
ふと誰かの視線を感じたが、恥ずかしくてその場にいることはできず席を立った。
◇
あれから私の席の周りに人は集まらなくなった。
「転校生に興味があるのは初めだけだもんね」
ぽつんと席に座り外を眺めながらつぶやく。
「鈴木さん、部活何入るか決めたー?」
振り返ると綺麗な黒髪の背の高い女の子が立っていた。
「私、近藤玲奈。よろしくねりかちゃん。あ、りかて呼んでいい?」
なんて気さくに話しかけてくれる。
「も、もちろん。私も玲奈って呼んでもいいかな?」
嬉しくて少し照れながら言うと、もちろん。と笑う玲奈は私の頭を撫でる。
「私は吹奏楽部なんだけど、りかちゃんは?」
「まだ決めてなくて…」
「そっか。何か気になる部活ある?水曜なら部活ないから、見学行くからね!」
ニコッと笑顔でそう言われ、連絡先を渡される。
「授業始まるから後で登録しといて」
手渡されたメモを受け取ると、玲奈は席へ戻っていった。
◇
「部活どうしよう」
そうベッドの上でつぶやく。
中学でもこれと言ってやりたいことはなく、流されるまま部活に入ったが高校でも続けたいと思うほど好きにはなれなかった。
明日は水曜日。
せっかく玲奈が一緒に見学に来てくれるというのに、気になる部活がない。
ブーッ
携帯が鳴る。
『りかー!何か気になる部活あった?もしなかったら男子バスケ部見に行かない?カッコイイ先輩がいるんだって♡』
”カッコイイ先輩”には全く興味はないけれど、特に気になる部活もないし…
『いいよ!』
とだけ返事をして私は眠りについた。
◇
キーンコーンカーンコーン
部活が始まる時間だ…
「りかちゃーん、体育館いこっ」
珍しくスキップをして喜ぶ玲奈。
「可愛いな」
ぼそりとつぶやけば、ありがとう。と満面の笑みである。
「そんなに先輩はカッコイイの?」
「見ればわかるよ!」
とこれまた乙女の顔になる玲奈に思わず笑ってしまう。
「恋って素敵だね」
そう言ってお互い顔を見れば、笑顔になる。
「じゃあ行こっか!」
私は幸せそうな玲奈に手を引かれ、体育館へと向かった。
◇
-月島 Side-
忘れ物をしたことに気づき教室へ戻る。
「りかちゃーん、体育館いこっ」
教室から声が聞こえ、ドアを開ける手をひっこめる。
こっそりと中を覗くと彼女がいた。
会話までは聞こえないがキラキラと輝く彼女の笑顔を初めて見た。
「あんな風に笑うんだ」
転入してからコロコロと変わる表情に、気づけば目で追っていた。
いつもなら他人のことなど気にも止めないのに…
なぜだろう。
僕はこの気持ちが何かもわからず、笑顔の彼女から目を逸らせずにいた。
◇
「キャー!!!」
「先輩こっち向いてください!」
体育館中で黄色い声援が飛び交う。
「キャー!」
と隣でも玲奈が顔を赤らめながら叫んでいる。
うん、私のタイプではないな。そう確信し周りを見渡す。
バスケ部以外はこの体育館にいないようだ。
「玲奈、私ちょっとトイレ行ってくる!」
そう言ってその場を離れて外へ出るとため息が出た。
「すごい人気だなー」
トイレを探そうと角を曲がると誰かとぶつかった。
ぼふっとその人の胸に顔をうずめてしまい慌てて離れる。
「ご、ごめんなさい」
すぐ謝るも返事はない。
「…こっちこそごめん。」
聞いたことがあるその声に、顔を上げると少しだけ顔を赤くした月島くんがいた。
「…」
「…」
「…」
「じゃあ」
そう言い背を向けて歩く月島くんは黒いジャージを着ている。
「つ、月島くん!」
思わず大きな声が出てしまった。
「こ、これから部活なの?み、見に行ってもいい?」
「好きにすれば」
そう振り向いたかと思えばまたすぐ歩き出す月島くん。
パタパタとその後を追い、私も第二体育館へと向かった。
◇
-月島 Side-
忘れ物も見つかり、部活へと向かう。
途中、いつもより騒がしい第一体育館前は人だかりができていた。
僕はため息をついて、なるたけ人がいないところを通り第二体育館へ向かう。
角を曲がると誰かとぶつかった。
ふと柔らかくて小さいものがお腹辺りに当たっている。
「ご、ごめんなさい」
その声が”彼女”だということにすぐに気が付くも、平然を装うのに必死で言葉がでない。
「…こっちこそごめん。」
さっき教室で見えた笑顔とは違い、慌てた様子の彼女に欲が出てしまう。
「…」
「…」
「…」
「じゃあ」
わざと冷たく放った言葉に今度はどんな表情をするのか気になった。
「つ、月島くん!」
大きな声で名前を呼ばれつい口元が緩む。
「こ、これから部活なの?み、見に行ってもいい?」
「好きにすれば」
振り向いて彼女を見れば、頬を赤らめ嬉しそうに笑っている。
落ち着け。そう自分に言い聞かせ、歩き出す僕の後ろをパタパタと歩く音が聞こえる。
なるたけゆっくりと歩幅を合わせ、彼女の気配を感じる距離で歩く。
あぁきっと…僕はこの気持ちに気がついた。
◇
「月島ァ、オラ。どこいってんだコラァ」
怖そうな先輩がいる。
「忘れ物したんで取に行ってたんですよ。そんなすごまないでください。」
ククっと見下ろす月島くんに先輩はまた何か言っている。
「あぁ、見学したいそうですよ」
そう言って私をちらりと見る。
「こんにちは」
小さな声で挨拶をすれば怖そうな先輩は赤くなっていた。
「女子っ!」
だんだんと近づいてくる坊主頭の先輩。
「君はマネージャー希望かな?」
キラッとポーズを決めている先輩に笑いをこらえ
「ち、違うんです。ただバレーが見たくて…」
と伝えるとがっかりされてしまった。
「あ!鈴木さんだ!」
山口くんが私に気づき手を振ってくれる。
つられて振り返すと月島くんに睨まれてしまった。
「見学ならここ座ってね」
と山口くんが椅子を持ってきてくれた。
優しさに感激しつつも玲奈のことを忘れていたことに気づき一度体育館を出る。
連絡を入れ体育館へと戻ると練習は始まっていた。
キュッと床をこする靴の音、バシッと規則的に聞こえるボールの音がなぜだか心地よく、時間も忘れて練習を見ていた。
◇
-月島 Side-
「あぁ、見学したいそうですよ」
ちらりと彼女を見れば恥ずかしそうに挨拶をしている。
可愛い。思わず言葉にしそうになるのを堪え視線を逸らす。
「あ!鈴木さんだ!」
山口が手を振り、振り返している彼女をみて嫉妬した。
山口はさりげなく椅子まで用意して、気さくに話している。
素直な気持ちを言えない自分に苛立ち、僕はその場を離れた。
◇
「バレー部どうだった?」
翌日玲奈にそう聞かれ、とても楽しかった。と伝えれば入部するのね!と言われてしまう。
「まだ考え中なんだ」
と曖昧に答えれば、そっか。また見学行こうね。と手を振り、部活に行ってしまった。
1人で帰るのもなんだか寂しくて、私の足は体育館へ向いていた。
「来ちゃった」
どうしようかと入り口でうろうろとする。
「何してるの」
びっくりして振り向くと、怪しいものでも見るような目つきの月島くんがいた。
「えっと…」
なんて答えようかと悩んでしまう。
「見学なら大歓迎だよ!」
ひょこっと月島くんにの後ろから山口くんが現れた。
「う、うん。今日もお邪魔します」
そう言って2人の後をついて行く。
「こんにちは」
昨日より少しだけ大きな声で挨拶をする。
「また来たのかー!」
坊主先輩が勢いよく走ってくる。
「田中さん怖いですよ」
そう言って私との間を阻むように月島くんが立つ。
「な、なんだとー!!!」
ギロっと怖い顔をする先輩を見て、ケラケラと笑う山口くん。
私はチラッと月島くんの陰から顔を出し、怖くないですよ。と言えば、そうだろー!とドヤ顔の先輩。
はぁ。ため息をつきながら月島くんはその場を離れた。
「月島くん。が、がんばって!!」
背中に向かって声をかけるも返事はない。
「俺も応援よろしく!」
そう言って練習に向かう山口くんに頷き、私は隅へと移動した。
◇
-月島 Side-
着替えを終えて体育館へ向かうとうろうろとしている君がいた。
「何してるの」
声をかければ驚いたのか困った顔でこっちを見上げている。
自然と上目遣いの彼女に照れるのを誤魔化し睨んでしまった。
「見学なら大歓迎だよ!」
僕の後ろから声をかける山口の存在を思い出す。
ぱっと嬉しそうな表情になる彼女にまたしても自分の小ささに嫌気がさす。
さっさと体育館へ行こう。そう自分に言い聞かせて歩き出す。
「こんにちは」
彼女の声が後ろから聞こえた。
と同時に田中さんが彼女に近づくのが見えて、とっさに間に入った。
それなのに、怖くないですよ。なんていう君にため息をつく。
僕だけを見てくれればいいのに。
だが歩き出すと同時に聞こえた君の声に僕の鼓動は高鳴った。
「月島くん。が、がんばって!!」
震えるその声に嬉しくなった。
彼女は今どんな顔をしているだろう。
振り返りたくなる衝動を抑え、僕はコートへ向かった。
◇
すでに時計は18時を過ぎたころ…
誰一人帰る気配はない。
「ねえねえ」
オレンジ頭の男の子に声をかけられた。
「君はバレー好き?あ、俺は1組の日向翔陽」
「私は4組の鈴木りか。バレーは最近好きになったの」
照れながらそう答えると嬉しそうに笑ってくれた。
「ひ、日向くんってすごい飛ぶんだね!」
唐突に出た言葉はあまりにも幼稚すぎて、自分でも顔が赤くなるのが分かった。
「ニヒッ!でも俺もっと上手くなりたいんだ。ビュンって飛んでこうバシッて打てるようになりたい」
そう言いながら目の前でスパイクを披露してくれた日向くんに思わず笑ってしまう。
「自主練がんばってね」
「おう!鈴木さんも気をつけて帰ってねー」
手を振り練習へと戻る日向くん。
私も手を振りかえし、挨拶をして入り口へと向かう。
途中、月島くんと目が合った気がしたが言葉を交わすことなく体育館を後にした。
◇
「おはよー」
教室に入るのは緊張する。
少しずつ友達もできて馴染んできたものの、隣の席の彼とは相変わらず話せていない。
いつも挨拶をしても、はよ。と短い言葉で会話は終わり彼はヘッドホンをつける。
…だが、今日は違った。
「昨日、日向と何話してたの?」
珍しく彼から会話を振られてビックリしていると
「別に言いたくないならいいけど」
とヘッドホンに手をかけ始める。
「あ、あのね!」
話を終わらせないようについ、ヘッドホンへと手が伸びる。
掴まれた手をじっと見つめ、今度は月島くんがビックリしている。
慌てて手を離し、ごめんね。と謝るもなんだか変な空気が流れてしまった。
「…」
「それで?」
「えっと…。すごく飛ぶねって話したらスパイク打つところ見せてくれたの」
日向くんの笑顔を思い出して、ついつい微笑んでしまう。
「ふーん」
月島くんはつまらなそうな返事をして会話は終わってしまった。
「…あとは私もバレーが好きになり始めたのって言ったの」
なんとか会話を続けようと私のことを話したが、その情報いらないよね。と反省する
「へー」
またしても興味なさそうな返事である。
これ以上会話を続ける勇気はなくなり、私は机を見つめた。
「じゃあさ、今日の練習付き合ってよ」
予想もしない返事に固まってしまった…
「嫌なら別に…」
「私でよければ!!」
会話が続いたことが嬉しくて、微笑んでしまう。
「じゃあ後で」
今度こそヘッドホンをつけた月島くんはいつものように本を開く。
終始にこにこの私を愛おしそうに見つめる彼に、まだ気づくことはできなかった。
◇
今日は月島くんと山口くんと並んで歩く。
「着替えてくるね」
「うん、先に行ってるね」
と山口くんに伝えて体育館へ向かう。
「ねえ。忘れてないよね」
月島くんにそう言われ朝の出来事を思い出す。
「もちろん!」
笑顔でうなずくと月島くんの顔がほんのりと赤くなった。
「ツッキー何の話?ねえねえ俺にも教えてよー!!」
「山口うるさい」
なんて楽しそうに階段を上る姿を見届けて、今日は大きな声で挨拶をし扉を開けた。
◇
「あのね…少しだけ手伝ってほしいんだけどいいかな?」
目の前の綺麗な先輩に話しかけられ、顔が真っ赤になる。
「は、はいっ!」
裏返った声にハハハと笑う先輩は美しい。
「最近暑いから、ドリンク足りなくて」
このボトルにね。とやり方を丁寧に教えてくれた。
「あの子また来てるね」
「入部はまだ考えてるって言ってたよ」
先輩たちが話してるのが聞こえ恥ずかしくなる。
「急いで入部を考えなくて大丈夫だからね」
私を気遣って声をかけてくれる先輩は内面まで美しい。
「はい…その入部してないのに迷惑にならないでしょうか」
俯き話す私に、そんなことないよ。むしろとっても助かってるの。と笑顔で答えてくれた。
「ありがとね」
その一言がとても嬉しくて私も笑顔になる。
戻ろっか。たくさんのボトルを抱えて先輩とみんなの元へ戻った。
◇
そのあとも何かできることはないかと先輩に聞いてはお手伝いをした。
ゼッケンを干したり、タオルを準備したり…
「マネージャーって大変だな」
ぼそりとつぶやいた独り言。
「嫌になっちゃった?」
「ひゃあっ。」
驚いて変な声が出てしまった。
「ごめんね。驚かせちゃったね」
えへへと笑うのは爽やかな笑顔の先輩。
「あ、いえ大丈夫でつ」
今度は緊張して噛んでしまう。
「アハハ!みんな入部してほしいなーとは思ってるけど、急いで決めなくていいし気にせずいっぱい見学来てね」
先ほどの会話を気遣ってか優しい一言に胸が熱くなる。
「あ、ありがとうございます。最近バレー好きになってきて、近くでバレーが見れてとっても楽しいです!」
素直にそう答えれば、いい子だねぇ。と先輩は私の頭をぽんっと叩く。
「あの」
後ろから声がして振り向く。
「ちょっと借りてもいいですか?」
そう言って月島くんに手を引かれコートへ向かう。
「ははーん、月島おまえ…」
爽やか先輩の話を無視して、月島くんはどんどん進んでいく。
ちらりと顔を覗けば、なんだか怒ってい…る??
「ねえ、菅原さんのこと好きなの?」
唐突に聞かれ混乱し黙っていると、大きなため息が聞こえた。
「僕のことだけ見ててよ」
突然立ち止まり、真剣な顔をする月島くん。
「そ、それはどういう…」
「練習付き合って」
それだけ言うとボールを渡された。
◇
-月島 Side-
清水さんのお手伝いをする彼女が気になって目で追ってしまう。
せっせとドリンクを作り、両手いっぱいに抱えたそれは今にも落ちそうだ。
…ー
気が付くとタオルを持ちながら菅原さんと何かを話している。
頬を赤く染め、嬉しそうな眼差しで菅原さんを見つめている。
と、菅原さんの手が彼女の頭へと伸びた。
チッ
気が付けば僕は彼女の手を引きコートへと連れていく。
「ねえ、菅原さんのこと好きなの?」
こんなこと言うつもりなかったのに、嫉妬から溢れ出た言葉は醜い…
彼女からの返事は無く、黙る彼女に苛立って想いを口に出してしまった。
「僕のことだけ見ててよ」
困ったような彼女を見て、あまりにも自分勝手な想いだと冷静になる。
「そ、それはどういう…」
これ以上は無意味だ。
彼女にボールを渡し、練習を始めた。
◇
1時間ほどボールを上げたり、スパイク時のフォームを撮ったりする。
「そろそろ帰らないと…」
時計を見ると19時を過ぎていた。
「ごめん、送る。着替えてくるから待ってて」
そう言って月島くんは更衣室へと走って行ってしまった。
◇
-月島 Side-
彼女と練習するのは楽しかった。
難しい表情をしながらボールを上げる姿は可愛い。
僕の言う通り、フォームの確認と称して写真を撮ってもらうのも他のやつを君の視界に入れないため。
「そろそろ帰らないと…」
そう言われて時計を見るとあれから1時間ほど経っていたことに気づいた。
「ごめん。送る。着替えてくるから待ってて」
慌てて更衣室へと着かえに向う。
更衣室のドアを開けると今一番会いたくない人がいた。
「お疲れさまです。」
「おう!月島かっ。お疲れ~」
菅原さんは着替えを終えて荷物をまとめている。
「なあ、月島ってりかちゃんのこと好きっしょ」
あぁ、この人のこういうところ嫌いだ。
「だったらなんですか?」
強い口調で睨みつけるように言う。
「ハハハ、別に獲ったりしないからそんなに怒るなよ。さっきだって後輩として可愛いと思っただけで特別な感情なんてないからさ」
「なら触らないでください」
ヘラヘラと笑う菅原さんが余裕に見えて苛立ちを抑えられない。
…ー
少しの沈黙が流れた。
「悪かったな…でもお前のものでもないだろ」
核心を突かれて言葉を失う。
「まあ、もう少し素直になれよ」
肩をぽんっと叩かれ、ひらひらと手を振り階段を下りる音がした。
ぐっと唇を噛みしめる。
「余裕なさすぎるだろ」
バンッとロッカーを閉めて急いで階段を下りた。
◇
月島くんを待っている間、さっき撮っていた写真を見返す。
「かっこいいなぁ」
自分にしか聞こえないように小さな声でつぶやく。
「お疲れ~」
菅原先輩が先に更衣室から出てきた。
「月島ならすぐ来ると思うよ」
「な、なんで分かったんですか?」
驚いて聞くと、自主練なんて珍しいからさ。と言って手を振り帰ってしまった。
全く意味がわからず首をかしげていると後ろから呼ばれる声がした。
「帰るよ」
パタパタと月島くんに駆け寄り隣を歩く。
会話はあまりないけれど、とても居心地がいい。
「さっきね月島くんの写真見てたんだけど、すごくかっこよかった」
写真を見せようと立ち止まり、ほら。と言って顔をあげると、すぐ近くに月島くんの顔があった。
「ご、ごめん。」
「ねえ、僕が君のこと好きだって気づいてる?」
あまりに唐突に告白をされ、口を閉じるのを忘れてしまった。
「写真撮らせたのだって、他のやつを見てほしくないからだよ」
”僕のことだけ見ててよ”そう言われたことの意味をやっと理解し、私の顔はみるみる赤くなる。
「可愛い」
そっと私の頬に月島くんの手が触れる。
「どんな表情も僕だけに見せて」
体中が熱をもち、涙がこぼれそうになる。
「その顔たまらないね」
ニヤリと笑い近づく顔に思わず目をつぶる。
だがいくら待っても何も起きない。
そっと目を開けると勝ち誇った顔の彼がいた。
「何?キスされると思った?」
「なっ!!?」
途端に自分の行動が恥ずかしくなり手で顔を覆う。
だがその手も彼にはがされる。
「ちゃんと見せて」
彼には勝てないと思い、抵抗することもなく手は繋がれた。
「明日から覚悟して。僕のこと好きにさせるから」
嬉しそうに微笑んだ横顔にもう恋に落ちていた。
◇
-月島 Side-
平然を装って彼女のところへ向かう。
パタパタと隣へ並ぶ彼女に口元がにやけてしまう。
「さっきね月島くんの写真見てたんだけど、すごく
ほんと君は僕の気も知らないで。
何かがプツンと切れる音がした。
「ねえ、僕が君のこと好きだって気づいてる?」
口を開けたまま固まる君をみて欲は増していく。
「写真撮らせたのだって、他のやつを見てほしくないからだよ」
「可愛い」
「どんな表情も僕だけに見せて」
次々と気持ちを伝えれば、その羞恥心に耐えられず涙目になる彼女。
ニヤリと顔を近づけてみると案の定、彼女は目をつぶった。
その綺麗な顔をただ見つめる。
僕が何もしないことに驚いて顔を隠すが、それすらも許さない。
手をどかし真っ赤な顔をした彼女をみて僕は満たされた。
◇
「ふぅ。」
教室に入る前、深呼吸をする。
「おはよう」
すれ違う人に挨拶をして席につく。
「はよ」
珍しく月島くんから挨拶をされドキドキする。
「お、おはよう」
私の反応をみて嬉しそうに笑う月島くんはずるい。
「じ、授業はじまるね」
負けじと笑顔で話しかける。
「何、まだ僕と話したいの?」
勝ち誇った顔の月島くんに悔しくも照れてしまった。
◇
キーンコーンカーンコーン
やっとお昼休みだ…
授業の間中、こちらを見ては微笑む月島くんを意識せずにはいられなかった。
散々睨んできたかと思えば、今度はあんなに優しそうに笑うなんて反則!!
心のなかでそう問いかけて、机に突っ伏した。
「りか、どうしたの?」
トントンと肩を叩かれて顔をあげると玲奈がいた。
「玲奈ー!!」
聞いて~と抱きつけばよしよしと頭を撫でてくれた。
「テラスに移動する?」
気を利かせてくれるなんてさすが玲奈!
手を引いて急いでテラスへと向かった。
◇
昨日会ったことを玲奈に話す。
「な、なにそれー!!」
しーと玲奈の口を手で押さえる。
「じゃあ2人は付き合ってるってこと?」
キャーと嬉しそうな玲奈に言いづらそうに答えた。
「付き合ってないの」
途端に静かになる玲奈。
「ドキドキしたのは事実なんだけど、好きかどうか分からなくて…」
玲奈の頭の上には
「話せたことも嬉しかったし、バレーしてるのカッコイイと思うんだけど…す、好きってどういうことー!!?」
完全にパニくる私をなだめるように玲奈は頭を撫でてくれた。
「例えばさ、月島くんが他の子と手を繋いでたり笑ってたらどう?」
「そ、それは…胸がチクッとする…かも」
「答え出てるじゃん」
「なっ。でも今更なんて返事したらいいの?」
「覚悟してって言われたんでしょ?なら気持ち伝えたらいいじゃん」
泣きそうになる私に優しく話してくれる。
さ、そろそろ戻るよ。そう言って玲奈は立ち上がり手を出した。
その手をぎゅっと握り、私たちは教室へ戻った。
◇
-放課後-
「つ、月島くん!」
部活に向かう月島くんを引き留める。
「なに?」
ニヤニヤした顔で私を見下ろす彼に、なんだか悔しさがこみ上げる。
「ちょっといいかな?」
そう言って手を引いてテラスへ向かう。
「ちょっと…」
そう言われて自分が手を繋いでいたことに気づき、慌てて手を放そうとするも強く手を掴まれた。
「あ、あのね。昨日の事なんだけど」
「何のこと?」
明らかにとぼけたフリをする月島くん。
「だから、私を好きってこと…私も「僕のこともう好きになったの?」」
前のめりに被せられた言葉に思わず、月島くんを睨む。
ハハッと嬉しそうに声を出して笑う彼が眩しくて、思わず目を逸らす。
「だめだよ。覚悟してって言ったでしょ。」
顎をクイっと掴まれて目が合う。
「もっと好きにさせるから」
真剣な眼差しの彼に、鼓動は早くなる。
ぎゅっと目を閉じる。
…ー
ちゅっ
温かいものが唇に触れた。
そっと目を開けると真っ赤な顔の月島くん。
プイっと顔を逸らしながら、見ないで。と手で隠す。
「じ、自分からしておいて!!?」
背伸びして手をどかし、頬に触れるだけのキスをした。
「わ、私だってもっと好きにさせるんだから!」
負けないもん!と言いながらも恥ずかしさのあまり語尾が小さくなる。
何が起きたのか確認するように、自分の頬に手をあてている彼。
はぁ。大きなため息をつき座り込む月島くんの横へ、私も座る。
「
ぼそりとつぶやく月島くんの顔を覗き込む。
「ねえ、キスしていい?」
返事をする前に口を塞がれる。
さきほどとは違い長く優しいキス。
「…んっはぁ」
息ができなくて涙目になる私を見て、もう一度キスをされた。
優しく抱きしめられた背中に手をまわし、私も抱きしめた。
「余裕ないな」
離れた唇はまだ熱をもち、名残惜しそうに口は開かれたまま。
「好きだよ」
気づけば涙がこぼれていた。
「私も好きだよっ…グスッ」
こぼれた涙を大きな手が拭う。
「今日も練習付き合って」
手を繋ぎ私たちは体育館へ向かった。
Fin
あとがき
-月島 Side-
体育館へ向かいながら先ほどの事を思い出す。
何度も触れた唇。
うるんだ瞳。
紅潮した頬。
また君に触れたい…衝動を抑え強く手を握れば、僕を見上げてて微笑む君。
「明日も覚悟してね」
悪戯にそう言えば慌てだす君に愛おしさが増す。
「ねえ月島くん。私と付き合ってください」
うるんだ瞳で僕をみる彼女にもう理性は抑えられない。
ほんと余裕ない。
ちゅっ
軽いキスをして唇を話す。
「よろしくね」
再び真っ赤になる彼女に僕は微笑んだ。
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