マネになれました。
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「ケンマァーーーー!!」
今日も平和だ。朝からクロの声がする。
きっと研磨はまたゲームでもしてたんだろうな。
目をこすり天井が見えた。まだぼやける視界の中に大好きな”彼”がいた。
◇
近所に引越してきた2つ年上のお兄ちゃん。
目つきが悪くって乱暴そう。
最初はそんな印象だった。
毎日うちに来て”研磨~バレーしよう”そればかり。
「シロウトとやってもつまんないでしょ」
「つまんなくない。覚えるの早い!!頭いい!」
そんな会話を聞いたこともある。
それから2人でチームを見に行ったり、毎日のように練習をしていたみたい。
「私にも教えて!」
そう言って初めは教えてもらったものの、ボールを上げれば頭に当たり、レシーブをすれば前に転び、スパイクをしようものならミスったボールに
どうやら私にバレーは向いてないようだ。
さすがのクロも心配になり、教えることをやめた。
◇
研磨は私のお兄ちゃん。いつもゲームばかりでつまらない。
「ねえ、研磨。バレーができなくてもバレーが好きならいつかできるようになるかな」
「さぁ、俺にはわかんない。クロに聞いてみたら?」
相変わらずゲームをしながら適当な返事だ。
まあきっと今日も来るでしょ。なんて言っている。
「けーんま!バレーしよ」
噂をすればなんとやら。
2人はボール片手に青空の下へ駆け出した。
◇
中学に入っても私は全然ダメだった。
なんとなく気づいてはいたが私は運動音痴なんだと思う。
プレーヤーになれなくてもマネージャーと言うものがあることを知り、入部してみた。
だが、ボールを運ぶと転んでぶちまける。
ネットを張ろうと支柱を持てば足に落とし骨折。
ドリンクを作れば蓋を閉め忘れ全身に浴びる。
こうなると運動音痴どころでは済まない。
「私ってなんでこうもダメなんだろう」
体育館の隅で落ち込んでいると不意に足音が聞こえた。
「まあ、あれだ。
そう声をかけてくれたクロは、じゃあな。と言って練習に戻った。
◇
「なんかあれだよな〜研磨より妹ちゃんの方がやる気あるのに、研磨のがバレー上手いよな」
「上手いって以前に、妹は歩く以外何もできないだろ」
「ハハハッ」
そう
そんなの自分が1番分かってる。悔しくて涙が出そうになるのを堪えて、唇を噛み締めた。
「そう言いなさんなって。誰でも苦手なことはあるでしょ。」
「苦手ってレベルじゃないですよ、黒尾さん」
そう笑い続けている後輩たちに、ちくりとクロは言った。
「努力してる子を悪く言うんじゃない」
静かに諭すように放たれた言葉はその場の空気をピリつかせた。
「まずは自分たちがレギュラー入りしようね」
そう言いながら笑っていたが、目は真剣だ。
慌てて練習に戻る後輩たちをよそにクロは後ろを振り返った。
「りか、そこにいるだろ」
恐る恐るぴょこりと顔を出す。目の前には頭に手を当て、申し訳なさそうな顔のクロがいた。
「クロ
そう笑って見せたが、切れた口元を見てクロは頭を下げた。
「うちの奴らが悪かった」
「別にクロ
また悔しさが込み上げてくる。泣いてたまるか!と力一杯口を閉じる。
「お前はさ、ちょっと不器用なだけだよ。大丈夫。」
そう言って私の頭をポンと叩く。
「辞めんなよ」
そう言い残し体育館へ消えていった。
◇
それから私はひたすら(完璧な)マネージャーになるために色々な学校へ偵察に行った。
もちろん1人で行く勇気もなく、クロと研磨も一緒にいる。
「マネージャーってお洗濯も、ドリンク作りも、部室の掃除まであるんだね。」
「まあ基本、選手がプレーに集中できる環境を整えるのがマネージャーかな…」
「りかはさ、家でも掃除とかしないからできないんじゃない?」
退屈そうに大きなあくびをしながら言う研磨に、一発蹴りを入れた。
「決闘じゃ!」
そう言って構えてみるも、やめなさいよ。とクロは仲裁に入る。
「りかちゃんもさ、女の子なんだから蹴り入れないの。」
パンツ見えるよ?なんてニヤリとするクロにも蹴りを入れた。
睨みあう私たちをよそに、俺帰るね。とゲームをしながら歩き出す研磨にあっけにとられ、家路に着くのだった。
◇
季節はあっという間に過ぎ、あれから3度目の春が来た。
「クロ
そう決めてから私は一生懸命勉強した。
きっと2人ともバレーを続ける。だからあの”音駒”に行くんだ。
今度こそ2人の力になりたい。チームみんなの力になりたい。
そう心に決めて”音駒”の門をくぐった。
◇
「おぉーりか!」
聞き慣れたその声に振り返ると”彼”がいた。
「クロ
毎日のようにうちに来て、研磨とバレーをしてる。久しぶりに会うわけでもないのになんだかとても懐かしい気がした。
「ここでもマネージャー、やってくれるのかな?」
そう言いニヤリと笑うクロ。
「見てなよ。私、クロ
「レベルアップって、ほんとお前ら…」
ガハハと笑いながら、あとでな!なんて手を振り行ってしまった。
◇
キーンコーンカーンコーン…
放課後を告げるチャイムが鳴り、急いで体育館へ向かう。
ガラッ
ドアをあけると大きな声で挨拶した。
「1年1組 弧爪 りか。マネージャー志望です。全力でみなさんをサポートするのでよろしくお願いします!!」
顔を真っ赤にし怒鳴るとも聞こえる挨拶を終えると、なんだか恥ずかしさで下を向いた。
あれが研磨の妹か。ぼそりと聞こえた。
声がした方へ顔をあげると金髪モヒカン頭の人がこっちを見ている。
「お前、研磨と違って根性ある挨拶じゃねえか!」
こ…こわい。ブルブルと震える私に、ちょっとトラ顔怖いよ。なんて研磨が言っている。
「集合ー!」
直井コーチの声が響く。その横には優しそうなおじいちゃんがいた。
「あれが名将猫又監督か〜」
独り言をつぶやいて皆と一緒に駆け出した。
◇
小さい頃、研磨とクロは猫又監督に一度だけ会ったことがあるらしい。
「最初こそできるヨロコビじゃないか」
そう言われ、始めてスパイク打った!と目を輝かせて帰って来た。
きっと2人はあの日を絶対に忘れないだろう。
こうして音駒高校に来たのもきっと猫又監督がいたから…
◇
「元気でよろしい!宜しく」
こちらを見つめる眼差しはどこか鋭くも優しく、私も入部できたことを嬉しく思った。
…ー
……ー
入部して間もなく試合があった。
私たちは…勝ち進むことができなかった。
「俺達はインハイ予選で負けた、先に進むために選ぶべきは何か?」
そう問いかけられて下を向く。
悔しい…でもみんなの方がもっと悔しいに決まってる。ここで私に何ができるのか見つけなきゃ。
そう強く心に決めて、大きな声で宣言した。
「まだ1番下っ端の私にできることなんて少ないって分かってます。それでもできることがあるなら、なんでもやります!なんでも言ってください!!」
驚いた顔でこっちをみんなが見ていた。
「ハハハッ、真っ直ぐだねえ。俺は嫌いじゃないよ」
入部の時と同じように猫又監督が優しく答えてくれた。
「なんでりかちゃんが宣言してるんだー?」
チームの誰かがそう言って、体育館は笑いに包まれた。
「根性だな!根性!」
なんだそりゃ?と首をかしげたが、みんなには伝わっていたようで変わらず笑い声が響く。
「りかは諦めないで俺たちについて来たんだ。真っ直ぐで負けず嫌いで…俺らも負けてられないな!」
おっしゃー!。とみんなが気合を入れ直す。
「俺たちは新しい血液が回り始めた。…次は勝つぞ」
そう言い立ち上がったみんなの後ろ姿はとても頼もしかった。
◇
「えー。ゴールデンウイークに練習試合をすることになった。今回は宮城へ行く。そして最終日だが、烏野高校と試合をする」
淡々と直井コーチが説明をする。
烏野って?と小声で犬岡くんに聞いてみた。
「なんか昔うちとライバル関係にあった高校なんだって。今はそんなに強くないみたい」
ふーん。弱いのか…
「烏野とは全国の舞台で対戦することがなくてね」
口を開いたのは猫又監督だった。
「烏養のやつ監督を引退して、すっかり付き合いがなくなった。だが今回の先生がまたしつこくてな」
困ったよ。そう言いながらもどこか嬉しそうに話す監督にどうしてか涙が出そうになった。
「勝ちましょう」思わず声に出していた。
「ハハハ、先に言われちまったな。主将にいいとこ取っとけよ」
私たちは今日も”繋ぐ”バレーをした。
◇
気が付けばゴールデンウイーク。
初めての遠征にわくわくして眠れない。
気づけば0時を超えていた。
「やばっ明日は6時集合だったような…」
最後に荷物を確認してから…と、もう何度もこれの繰り返し。
ひとしきり確認を終えてベッドへ戻る。
「研磨は寝たかな~まさかゲームしてないよね…ふふ」
気づけば瞼は閉じていた。
◇
「ケンマァーーーー!!」
目をこすり天井が見えた。まだぼやける視界の中に大好きな”クロ”が見える。
あれ?夢?ずるっとよだれを拭くと近づく顔。
「よだれ垂らしてたのか?りか。行くぞ」
夢ではないことに気づき、ガバッとベッドから飛び起きた。
「な、なんでいるのおおおお」
両手で耳を抑え、まだ5時だから静かにしろと口の前で指を立てる。
「お、女の子の部屋に勝手に入ってはいけません!」
顔を真っ赤にして言うと、そうだな。なんて後ろを向く。
「はいはい。下にいるから準備しておいで。それと…腹見えてるぞ」
慌てて自分のお腹を見るとめくれ上がったパジャマ。
ククッと言いながら階段を下りる音がして、私は全身が熱くなるのを感じた。
◇
すでに外は明るかった。
まだ5月だというのに初夏のような日差し。
それでも風は涼しく、爽やかに春の終わりを告げていた。
バスに乗り込むと研磨はもうゲームを始めようとしていた。
「ねえねえ、こっち!」
そう言われて座席をポンポン叩くのは、犬岡くん…?
「隣座っていいの?」
「もちろん」
あのさ…続けて何かを話そうとする彼。
「全員揃ったなー。出発するぞ!」
バスはゆっくりと走り出した。
コーチの声に遮られ聞きそこなった言葉。
何を言おうとしていたんだろう。そう思って横をチラッと見ると照れた様子の犬岡くん。
「犬岡くん?」首をかしげて声をかけるも、えーっと。と言いながら下を向く。
「何か言いかけてなかった?」
緊張して持ってきたペットボトルを飲みながら話す。
「えっと、もしかしてりかちゃんってクロさんのこと好き…かなって」
ブーッ。口に入れたお茶は見事、犬岡くんに吐き出された。
「ご、ごめん。」
謝る犬岡くんに、こっちこそごめんね。とタオルを渡す。
顔を拭きながら何かを話す犬岡くん。
「ご、ごめん。聞こえない」
ぽかんとしていると、アハハと笑いだす。
「ごめん。って俺ら謝ってばっかりだ。ハハハ」
と笑う。確かにー…つられて私も笑った。
…ー
「なんで分かったの?」
聞いてみれば、顔に出てるよ。なんて言われてしまった。
「きっと本人以外はみんな気づいてる。」
びっくりして目を丸くしていると肩を叩かれた。
「大丈夫。応援してるよ、みんな」
「こらー犬岡。うちのマネに触らない」
クロがニヤニヤしながらこっちを見ている。
みんなのマネだそー!と野次が聞こえる。
なんなら研磨の妹だー!と誰かが言った。
「そうなんだけど、みんなうるさい。ゲームに集中できない」
研磨の大きなため息が聞こえると、そのあとドッとみんなの笑い声も聞こえた。
◇
ゴールデンウイーク中は色々な学校と毎日、練習試合をするようだ。
今回の遠征はベンチ入りまでのメンバーしかおらず、やることがいっぱい。
バタバタと体育館中を走る。
「転ばなくなったな」
「まあ、毎日がんばってたからね、家事。」
ガハハと笑っているクロと研磨が見えたけど、私の足は止まることはなかった。
「あざーした」
どうやら練習は終わりのようだ。
みんなにドリンクとタオルを渡したあと、干していたビブスを回収しに向かう。
「手伝おうかい?」
気づけば横にはクロがいた。
バスでの会話を思い出す。後ろを見るとみんがニヤニヤしていた。
「だ、大丈夫!疲れてるんだからクロ
タタタっとその場から離れると、そうか。と少し寂しそうな顔をしたクロがいた。
◇
忘れ物がないことを確認しバスに乗り込む。
どうやら宿はすぐ近くのようで、あっという間に到着した。
「私さきにおーふろっ♪」
そう言って荷物を置いてすぐ大浴場へ向かった。
ちゃぷん。
「はー最高~」
女子ひとりで貸し切りは贅沢だなぁなんて思いながらも、足を伸ばし今日の疲れを癒す。
お風呂から出ると研磨が入口にいた。
「いちを見張り」
まぁ念のためだけど。とぼやきながらとぼとぼ部屋へ戻っていった。
よくわかんない…そう首をかしげているとがやがやと部屋から声がする。
「りかちゃん出たんだろ。通せー!!」
と賑やかだ。
ガチャっと音がしたと思えばみんなが走ってくる。
「俺が一番だー!!」
トラ先輩がのれんをくぐるが、一瞬私と目が合い、硬直していた。
「風呂あがりの女…子…?」
ボッと赤くなるトラをみて、ただのりかだよ。と研磨が言ったのが聞こえた。
おい、
◇
みんなが出てくるまで今日のスコアをまとめておこう。
あとは、気になった動きもまとめて質問してみようかな…気づけば部屋の入口にクロがいる。
「全然気づかないねえ」
はあとため息をついている。
「いつからいたの?」
「5分前くらいかね」
なぜ声もかけずにそこにいたんだ?と思えば
「集中してたから邪魔しちゃ悪いと思ってね」
なんて返事がきた。
こちらの心が読めるのか!とびっくりしていたが、
「ハハハ、飯行くぞ」
……おい、また心を読んだのだな。クロにはなんでもお見通しか…キッと睨みつけると、顔に出てるぞ。なんて言って歩き出した。
「バレてないよね…」
そうつぶやいた声には気づかなかったようでホッと一安心して、私も後ろを歩いた。
◇
みんなよく食べるな~
研磨は普段からあんまり食べないからびっくりした。
目の前に座る犬岡くんですら、お替り3回目。
隣に座るクロに至っては4回目…
「まだ食べるの?」
「りかもいっぱい食べて大きくなんなさい」
そう言われ唐揚げをくれた。
正直もうおなかいっぱいだけど、せっかくだし。
パクッ。もぐもぐ。
…ー?
視線を感じる。
顔をあげれば犬岡くんの隣に座る夜久先輩に見つめられていた。
「な、なんでしょう?」
「嬉しそうに食べるね」
慌てた私は、唐揚げ好きなんで。と言うも
「ふーん」それだけ?なんて顔をしてくる。
途端に真っ赤になる私に
「まあまあやっくん。いじめなさんな」
「へへ、可愛いからつい」
この気持ちがみんなにバレているのは本当のようだ。
心臓の音が大きい。この音が隣にいるクロに聞こえていませんように。
「ごちそうさまでした」
手を合わせそんなことを祈りながらその場を後にした。
気のせいか、クロが夜久先輩を睨んでいた…
◇
いよいよ明日はゴールデンウイークも最終日。
烏野高校との練習試合だ。
この3日、みんなにバレてるならと開き直った。
小さい頃のようにクロの後をついて行ったり、マネージャーの仕事の相談もした。
「なぁ研磨。りかって俺のこと好きなのか?」
「何それ。小さい頃からそうでしょ」
クロはほんとバレーしか興味ないからね。とゲームから目を離さずに答える。
「それはどう言う意味ですかねぇ」
全く理解していないクロに珍しく研磨が睨む。
「泣かせたら許さない」
じゃあ寝る。そう言って布団へ潜り込んでいた。
◇
烏野高校へ向かう途中、とても綺麗な景色だなと見惚れていたら久しぶりに転んだ。
「おいおい、大丈夫か?」
「試合前に転ぶとか縁起でもないからやめて」
久しぶりに研磨に怒られて下を向く。
-5月6日 烏野総合運動公園 球戯場-
「お願いしアス!!」
「しアース!」
挨拶を終えて体育館へ入る。
コーチや監督も挨拶をしている。
「スコア私もやります」
駆け出すとそばかすの男の子と目が合った。
「音駒高校対烏野高校の練習試合を始めます!」
ピーと笛が鳴りいよいよ試合が始まった。
◇
9番10番の速攻すごい。そう思っていると猫又監督
「天才はしょうがねぇ…が、天才1人が混じったところでそれだけじゃ勝てやしないのさ」
猫又監督はちらりと研磨を見て何かを話している。
みんないつもとは違って真剣だ。そりゃ練習試合といえど負けたくないってわかるけど、少し怖いと思った。
気づけば第1セットは
「このまま2セットもらう」
声に出していたことに気づき隣をみると、俺らだって負けません!と微笑んだ男の子がいた。
…ー
ピピー!笛が鳴り試合終了を伝える。
「もう一回!!」
オレンジ頭の男の子が目を輝かせて言った。
「おう、そのつもりだ!”もう一回”がありえるのが練習試合だからな」
猫又監督も嬉しそうだった。
その後2試合、3試合としたがストレートで音駒が勝った。
「「集合ー!!」」
「…圧倒的
猫又監督のその言葉に胸が締め付けられた。
みんながそれぞれにお互いを誉めあう声が聞こえる。
”好敵手”素敵な関係だな…私はぼそりとつぶやき片付けを始めた。
◇
バスに乗り込む前、もう一度お互いに挨拶を交わす選手たち。
私も美人マネージャーさんにお礼を言い頭を下げた。
「1人だと大変なこと多いと思うけど、がんばってね」
微笑んだ顔が美しすぎて真っ赤になる私。
行くぞー。とクロに呼ばれ、もう一度頭を下げてからみんなのもとへと走り出した。
◇
帰りの新幹線ではクロの隣だった。
いらっしゃい。と手で呼ばれストンと座る。
みんな疲れたのかニヤニヤとする人は1人もいない。
席に着いたばかりだと言うのに寝息さえ聞こえる。
「今日はお疲れ様でした」
緊張してそう言えば、お互い様ですねぇ。と返ってくる。
チラッと横を見ると目が合った。
ニッと笑うクロにドキッとするも何か話さなきゃとオドオドする。
「なあ。あれからりかも成長したよな。一度も転ばなかった」
なんて言った後、試合前にこけたか。ガハハと笑う。
「小さい頃から、後ろをついて来て転んで、泣いても諦めないで真っ直ぐにボールを見つめる姿に励まされたよ」
照れくさそうに言うクロに私まで恥ずかしくなり
「今日も俺たちのプレーを一生懸命ノートにメモする姿を見て、あの頃と変わらず真っ直ぐだと励まされた。」
だが…と言いかけて横を向くクロ。
「夜久に可愛いと
は?何言ってんだ。と思いながら横を見る。
耳までほんのり赤くなるクロにびっくりした。
「えーっと。どうしたのクロ
「つまりだな、妹みたいに思ってたんだがどうやら違うみたいだ」
びっくりして立ち上がる私に、こらこら座んなさい。と腕を掴まれた。
慌てる私にクロはクスクス笑う。
「なんとなーく中学の時気付いてたんだが、厚意だと思っていて…ほらお前バレー好きだし」
なんてはぐらかす。
「うん、ずーっとクロ
”厚意”ではなくて違う方の。なんて言うと今度はクロがビックリして口を開けている。
変な顔〜。と少し馬鹿にする。
こんにゃろうなんて頭をポンと叩かれる。
顔を見合わせて笑う私たち。
「好きだ、りか」
真剣な眼差しのクロに照れながらも、うん。と頷き手を繋いで眠りに着いた。
◇
「こらークロー起きてー」
研磨の声がする。お前らやっとかよー。と誰かが言う。
「りかもほら。起きて」
研磨に肩を揺らされて目を覚ますとみんなに見つめられていた。
握られた手に気づくも離してはくれないようだ。
「よかったね、りかちゃん。」
犬岡くんの優しい声に思わず顔をあげると
みんなの優しい笑顔があった。
「明日からもよろしくな。」
目を覚ましたクロにそう言われ、任せてよ!と返事をし手を繋いだまま家路に着くのだった。
Fin
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