引き裂かれた想い【キルア夢】
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―俺はあいつを守れなかった…
―兄貴を……止められなかった―
俺は最近家族に内緒で会っているやつがいる。
幽姫。
有名な裁判官の娘らしい。
まぁ、俺は知らなかったけど。
数ヶ月前、俺が仕事帰りに寄り道してると、幽姫が声を掛けてきた。
「ねぇ、ちょっと話さない?」
「…あんたは?」
「幽姫。裁判官の娘よ。」
「ふ~ん……俺はキルア!…ちょうど暇だし、話そうぜ!」
そう言って俺たちは木の上に登ってパドキア共和国の夜景を眺めながら話した。
「何で俺に話しかけたんだ?」
「ん、なんとなく。退屈だったから」
俺が聞くと幽姫は即答した。
「…プッ!何だよそれ!」
幽姫の答えについ吹き出してしまった。
そんな俺につられて幽姫も笑った。
それから俺たちは、毎日のように会うようになった。
待ち合わせ場所は最初に話をした木の上。
ワクワクしながら待ち合わせ場所に向かう。
俺が木の下に着くと幽姫はもう既に来ていて、笑顔で手を振っている。
俺もそれに返す。
そしてその日にあった出来事を話し合う。
毎日この繰り返し。
一見退屈に見えるけど、俺には何よりも楽しみなことだった。
そして俺は、生まれて初めて恋をした。
ある日、いつものように内緒で家を抜け出し、待ち合わせ場所に行こうとしたとき、イル兄に出会った。
「兄貴…!」
「やぁキル。どうしたんだい?今日は仕事はなかったはずだろ?どこに行くんだい?」
無表情で俺に問いただす。
俺は怪しまれないように誤魔化した。
「散歩だよ。部屋ん中にいても退屈だからさ~!…そういう兄貴は?仕事?」
「うん、すぐ帰るよ。…じゃ。」
それだけ言って兄貴は仕事に向かった。
このときの俺は、何も知らなかった。
いつものように待ち合わせ場所に着いたけど、珍しく幽姫がまだ来ていない。
「何かの用事で遅れてんのか…」
そう思っていたとき、近くで幽姫らしき悲鳴が聞こえた。
「…!幽姫!!」
俺は木から飛び降りて悲鳴のする方へひたすら走った。
「幽姫に何が起こったんだ…?」
走りながらそれだけをずっと口にしていた。
走った先には追い詰められて怯える幽姫がいた。
「幽姫!!」
俺の声に気がついて、幽姫は涙を流しながら俺の名前を呼んだ。
「キルア!!来ちゃだめ!!!」
幽姫が言うと、幽姫を怯えさせている人物が喋りだした。
「キル、どうしてお前がここにいるんだい?」
「っ…!………兄…貴…!」
暗闇から現れたのは俺の兄貴だった。
「な…んで…兄貴が…」
目を見開いて兄貴を見る。
「仕事だよ。」
あっさりと言う兄貴に俺は聞き返した。
「…仕事…?」
「そう。俺の依頼人は、この子の親に裁判で裁かれた恋人なんだ。その親に自分と同じように大切な人を亡くす苦しみを味わわせる為に依頼したんだって。」
淡々と語る兄貴。
俺はそれをガタガタと震えながら聞いている。
「…嘘、だろ?」
「嘘じゃないさ。さぁ、そろそろ仕事終わらせようか。」
幽姫に向き直って殺気を放つ兄貴に、俺は必死に止める。
「止めろ!!」
俺が叫ぶと、兄貴は少し俺に目線を配った。
「どうしてキルが彼女の心配をするんだい?」
「っ!」
兄貴に言われて息を詰まらせる。
足が動かない。
幽姫を助けたいのに思うように動けない。
「もしかして彼女かい?」
「…!」
「図星か…。なら…余計に殺したくなっちゃった。」
「なっ…!」
兄貴の言葉に血の気が引いた。
兄貴はゆっくりと幽姫に近づいていった。
「いや…やだ……いや!」
怯える幽姫を他所に兄貴は手刀を構える。
「や…止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ズシャッ
俺の悲痛な叫びと幽姫の叫びはほぼ同時に響いた。
幽姫は残酷ながら、首を兄貴の手刀で切られていた。
「ふぅ~…仕事完了。キル、帰るぞ。」
兄貴は向き直り、帰り道を歩いた。
「…幽姫………」
俺はその場に立ち尽くしたまましばらく動けなかった。
息のない幽姫の頬に涙が伝った。
END