Lonely【ゴン夢】
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ゼビル島の外れにある小さな家。
私はそこから一歩も外には出られない。
壁に固定された鎖に繋がれているから。
気に入らないことがあればすぐに親にぶたれる。
私はその度に体から血を流し、その痛みに泣いていた。
ある日、いつものように親にぶたれて血を流していると、一人になった部屋のほんの小さな窓から、赤い羽をヒラヒラと動かしながら蝶が一羽飛んできた。
「…?」
その蝶は私の傷口にピタリと止まった。
「…心配してくれるの…?」
か細く問いかけてみるけど、当然返事はない。
「ありがとう。」
私はしばらく蝶を眺めていた。
それから何日か経ち、私の傷は治っていった。
それと同時に蝶は空へ羽ばたいていった。
そしてまたぶたれて血を流すと、前みたいに赤羽の蝶が傷口に止まる。
「また来てくれたのね…。」
蝶に微笑みかける。
でもやっぱり私の傷が治ると蝶は帰っていく。
まるで私の傷が治るまで見守ってくれるみたい。
でもその蝶は、人の血に反応してやって来ることを知った。
私は一人になるのが怖くて、傷が治る前に違う箇所にまた一つずつ傷をつける。
…痛いのは慣れてる。
それよりも一人になる方がよっぽど嫌だから。
それから数ヶ月が経ち、ハンター協会からゼビル島を試験会場にしたいと連絡があった。
親たちは私を置いて一週間、違うところに行った。
鎖に繋がれてるから外に出られない。
そう言って出て行った。
たった一週間だけど、私にとってはすごく嬉しいことだった。
試験が始まったらしく、いろんな声が聞こえてきた。
すると、ドアの方からガチャ…と音がした。
足音は次第に大きくなり、私の部屋で止まった。
―まさか…お父さんとお母さん…?―
一人でビクビクしていると、ゆっくりとドアが開いた。
中に入ってきたのは、釣竿を持った私と同じくらいの年の男の子だった。
「ちょ…大丈夫!?」
男の子は私の姿を確認すると私の所へ駆け寄り、鎖に手をかける。
「…あなた……誰?」
小さく言うと、男の子は私の目を見て答えた。
「ゴン=フリークス…君は?」
鎖を力ずくで外しながら聞く。
「…私は………名無しさん」
私が答えた後、頑丈な鎖が外れた。
「はい。外れたよ!…それより、名無しさんは何で鎖に繋がれてたの?…それに体が傷だらけだし。」
私をジーっと見つめるゴン。
「私、親に虐待されて育ったの。鎖に繋がれて……」
俯きながら今までのことを思い返す。
「この、体中にある引っ掻いた傷も?」
私の傷を指差しながらゴンが聞いた。
「ううん。この傷は自分で付けたの。」
「えっ!?」
私の答えに驚きの声をあげる。
「人の血に反応する蝶とずっと一緒にいたくてわざとつけたの。…っ!……ほらね?」
私は自分の指を強く噛んで血を流した。
すると窓からヒラヒラと蝶が飛んできた。
「この蝶…ヒソカの肩にも…」
ゴンが思い出したように言った。
「私は生まれてからずっと一人だったし、誰からも愛されなかったわ。だからせめてこの蝶と友達になりたかったの。」
私の指に止まる蝶を見つめながら悲しげに言った。
「友達なら、その蝶だけじゃないよ!」
「え?」
「俺がいるじゃん!」
ニコッと笑ってゴンが言った。
「…ゴン……」
驚きと嬉しさが混ざった声で言う。
するとゴンは何かを思いついたように言い出した。
「そうだ!第四次試験が終わったら一緒に集合場所に行こうよ!事情を話したらネテロさん、きっと名無しさんを助けてくれるよ!」
私の手を握りながらキラキラした目で見つめるゴン。
「えっ!?」
「ねっ!そうしよう!!」
困惑している私を無視して言い出すゴン。
「…でも、そんなことできるの?」
「きっと大丈夫だよ!そうすれば、俺たちずっと一緒だよ!」
うんうんと頷きながら言うゴンに、とうとう私のほうが根負けした。
「わ、わかった…。」
「ホント!?やったーーーーー!!!!!」
私が頷くと、ゴンは小さい子どもみたいに喜んだ。
そんなゴンの姿に、私は久しぶりに笑った。
それから一週間後、私はゴンと一緒にハンター試験受験者の集合場所まで行った。
初めての外の空気はおいしくて、日差しが眩しかった。
ゴンは私の代わりに事情を説明してくれて、ハンター協会の会長はゴンの頼みを快く引き受けてくれた。
私は受験者たちと一緒に飛行船に乗り、今ではネテロさんの手伝いをして過ごしていた。
生まれたときからずっと一人だった私の目には、光が全くなかった。
でも私の大切な人、ゴンに出会ってから私の目はキラキラと輝いていた。
END