身分【キルア夢】
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―私は使用人―
いくらあの方を好きになっても、それは決して叶わない恋…
「今日から新しく使用人を勤めさせていただきます、名無しさんと申します。」
執事室の応接間でペコリと頭を下げて挨拶する。
周りは体の大きな人たちばかり。
でも一人だけ私と同じくらいの女の子がいた。
ある日門の前を掃除していると、中からゾルディック家の方たちが出てきた。
綺麗なドレスを身に纏っているキキョウ奥様。
その横に赤い着物を着ているカルト様。
そして二人から少し離れて歩いてくるキルア様。
多分、仕事に行くんだと思う。
「行ってらっしゃいませ。キキョウ奥様、カルト様、キルア様。」
深々と頭を下げて礼をする。
すると、キルア様が私の方に近づいて言った。
「お前、新しく入ったやつだろ?…名前は?」
急に名前を聞かれてびっくりする。
「名無しさん…です…。」
「ふ~ん、名無しさんか…。」
納得したように頷くキルア様。
そこへ、キキョウ奥様が甲高い声で言った。
「キル!そんな使用人見習いに話しかける暇なんてないのよ!さぁ、早くいらっしゃい!」
その言葉を聞いて、何だか胸にナイフが刺さったような気分になる。
そんな私の様子を見てキルア様が言う。
「お袋の言うこと、気にするなよ!…じゃあな~名無しさん~!」
そう優しく言ってキルア様は大きく手を振った。
「あ、ありがとうございます…!」
去っていくキルア様にもう一度深々と頭をさげてお礼を言う。
それから私は何をするにしてもキルア様のことばかり考えていた。
「名無しさんさん、真面目に仕事をしないのなら、辞めても構わないのよ。」
私に呆れたカナリアさんが冷たく言う。
「も、申し訳ありません…!カナリアさん…。」
任された仕事にも手がつけられず、頭を下げてばかり。
「いったい何を考えてるの。」
真顔で聞かれて戸惑う。
「…実は私、キルア様を…お慕いするようになりました…//////」
目元を赤くしてそう告げた。
でも、カナリアさんからの返事は決して祝福するものじゃなかった。
「何を言ってるの。私たちは使用人、しかも見習いなのよ。主をお慕いするどころか、親しくなることすら許されない身分なの。だから諦めることね。」
冷たくあしらわれ、予想していたとはいえやっぱりショックを受ける。
「そう、ですよね…すみません…。」
誰にも目を合わせられず、ずっと下を向いて仕事をした。
そんな私にさらに追い打ちをかけた。
私が前みたいに門の前を掃除していたときのこと。
門の中から出てきたのは、顔に返り血を浴び、手は血に塗れてスケボーを持っているキルア様だった。
「キルア様…!」
キルア様の姿を見て驚いて思わず呼び止めた。
キルア様は暗い表情を浮かべてたけど、私の声でパッと明るくなった。
「名無しさん!俺、この家出るから!」
「え…?」
その言葉を聞いた途端胸が張り裂けそうになった。
「そ、そうですか…かしこまりました…。」
涙が溢れそうな衝動を抑え、キルア様を見て言った。
「い…」
―行かないで―
「行ってらっしゃいませ…。」
たった一言“行かないで”と言いたかった。
でも、私たち使用人見習いには、そんな権利はどこにもない。
深々とお辞儀をする私の顔には涙が伝った。
すると、キルア様から思いがけない言葉が出てきた。
「何言ってんだ?名無しさんも俺と行くんだぜ?」
「え…!?」
思わず顔を上げて目をパチパチさせる。
「今日から名無しさんは俺んのだかんな!ついて行くのは当たり前だろ?」
一瞬何を言われたかわからず聞き返す。
「えっと…どういうことでしょうか…?」
「だから!…俺、名無しさんのこと好きだってことだよ…//////」
真っ赤な顔で私にそう告げるキルア様。
「…そんな…私は使用人ですよ?私がキルア様にお慕いしていただく資格なんてありません!」
半分自虐的に訴える。
「資格とか関係ねぇよ!…それとも俺のこと、嫌いなのか…?」
心配したような悲しい表情になるキルア様に必死に頭を振って否定する。
「そ、そんなことありません!私、初めてキルア様にお会いしたときから、キルア様をお慕いしておりました!」
つい勢い余ってずっと心の中に留めておいた言葉を口にしてしまった。
後から後悔したけどもう遅かった。
「ホントか?」
「は…はい…//////」
少し戸惑いながら頷く。
その瞬間、キルア様は私に手を差し出した。
「え?」
差し出された手とキルア様を交互に見比べた。
「ほら、早くしねぇと親父たちが来るぜ!」
ニッと笑ってキルア様が言う。
「え…ですがキルア様…」
「様とか付けんなよ!あと敬語もなし!」
被せるように言うキルア様。
「ですけど…」
「言っただろ?今日から名無しさんは俺のなんだし、もう使用人じゃねぇんだからな!」
はっきりとそう言われたけど、嫌な気持ちは全くしない。
むしろ嬉しいとさえ思う。
「キルア……うん!」
私はキルアの手を取って、走り出す。
初めて“キルア”と呼び捨てにして、少し違和感があったけど、私は胸を弾ませて走っていた。
END