大人の余裕【不二夢】
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『僕は君が好き。』
不二がテニス部のマネージャーである名無しさんに告白して数日。
告白を受けた当の本人は……
「はい、リョーマくん!」
「これは桃先輩に!」
「不二先輩も、これどうぞ!」
「あぁ…。ありがとう。」
部活が一区切りついたところで休憩を入れるテニス部。
その間に名無しさんはみんなにタオルを配っていた。
「……………」
あの時、確かに不二は名無しさんに告白した。
今年一年生として青学に入学して、桜乃や朋香の薦めもあってテニス部のマネージャーになった名無しさん。
慣れないながらも一生懸命にみんなをサポートする姿を見て、不二は好感を持っていった。
部活が終わってみんなが着替えて帰る支度をするなか、名無しさんはボールの数を数えたりとマネージャー業務をこなしていた。
ザッ…
「?…あ、不二先輩!お疲れ様です!」
不二が地面の砂利を鳴らして近付けば、名無しさんはその音で振り返る。
「名無しさんちゃんも、遅くまでお疲れ様。」
「皆さんと一緒に帰らなかったんですか?」
「うん。ちょっと君に用事があってね。」
その一言に、作業をしていた手を止めて不二を見た。
「用事ですか?一体何でしょう?」
「急ぎじゃないから、それ終わってからでいいよ。」
そう言われて名無しさんは不思議に思いながらもせっせと業務をこなした。
「お待たせしました!」
待つこと十数分。
全ての業務を終わらせた名無しさんが不二の元に戻ってきた。
「お疲れ様。何か飲むかい?」
自販機を指差して不二がにこやかに言う。
「えっと…お茶を…」
「わかった。ちょっと待ってて。」
遠慮しようとも思ったが、いつもより急ぎ目で業務を終わらせたせいで喉がカラカラだ。
不二の厚意に甘えることにした名無しさんは、自販機で飲み物を買う不二を待った。
「はい。」
「ありがとうございます。」
不二からお茶を受け取ると、キャップを開けて何口か飲んだ。
「ふー!生き返るー!」
冷たいお茶が名無しさんの喉を潤していく。
夕方でも気温がなかなか下がらないムシムシとした東京の気候は堪えるものがある。
「で…。私に用事って何ですか?」
ペットボトルのキャップを閉めて不二に向き直る。
「単刀直入に言うね。僕は君が好きだ。」
「え…?」
あまりにもストレート過ぎる不二の言葉に、名無しさんの思考が停止する。
「急に言われても困るよね。だから、返事は急がない。ゆっくり考えてみてくれないかな?」
苦笑して言う不二に、名無しさんはただゆっくり頷くだけで精一杯だった。
それから数日。
名無しさんの不二への態度は以前と変わらなかった。
特に意識するわけでもなく、かといって気まずくて避けるわけでもない。
「夢じゃ…ないよね…?」
名無しさんの姿を目で追いかけながらポツリと呟いた。
翌日、不二は委員会の関係で撮影した写真を現像するため、写真室にいた。
ガラガラ…
すると写真室に名無しさんが入ってきた。
「やぁ。名無しさんちゃん。」
扉の方を振り返り手を振る不二に、名無しさんはビックリしたような声をあげる。
「不二先輩…!ごめんなさい、誰もいないかと思っちゃった…」
「委員会でもなきゃあまりここに人は来ないからね。写真の現像かい?」
「はい。先生に頼まれちゃって…。機械苦手だからちゃんと出来るのかどうか…」
「教えてあげようか?」
「良いんですか?お願いします!」
不二の言葉にパッと明るくなり、不二の隣に駆け寄った。
「まず、これをこうして…」
「あ、なるほどー」
不二の丁寧な説明に名無しさんは感心しながら一つ一つ作業を行っていく。
「あとは、このスイッチを押せば…」
ピッ
ウィーン…ガッガッガッ…
機械が動き出し、印刷が始まった。
「ありがとうございます!」
無邪気に笑う名無しさんに不二はクスッと笑う。
すると不二は名無しさんに一気に距離を詰めた。
「ふ、不二先輩…?」
さっきまでとは違う雰囲気に、名無しさんは不二を恐る恐る見上げる。
名無しさんの背中には壁。
右横では写真の印刷機が無機質な音を立てながら動いている。
「名無しさんちゃん、その態度わざと?それとも本気?」
「え…」
「僕は君が好きだって言ったはずだよ?返事は待つとは言ったけど、そこまで何事もなかったかのように接せられると傷付くよ…」
尚も名無しさんに近付いて言う不二。
目線を逸らそうにも不二の雰囲気がそれを許さない。
「あ…あの…」
しどろもどろになりながら必死に言葉を探す。
「それに…」
名無しさんの耳元に自らの顔を近付け…
「君を好きだっていう男と二人きりになってもいいの?」
「…っ!//////」
不二の囁きに名無しさんは全身に力が入る。
逃げなきゃとはわかってはいるものの、体が言うことを聞かない。
最近まで小学生だった名無しさんと、もうすぐ高校生になる不二。
二人の体格差は歴然だ。
不二は怯える名無しさんの髪にそっと触れる。
「さっきも言ったけど、ここはあまり人が立ち入らない。だから君を襲うことだって出来る。」
「…先……輩…っ…!」
名無しさんの首筋に不二の唇が触れる。
ゾワッとする感覚と、今からされるであろう行為が想像できて小さく身震いする。
不二を押し退ける腕が掴まれ、更に抵抗出来なくなる。
すると…
ピーーーー
印刷が終わったのか、甲高い機械音が鳴った。
その瞬間、腕を掴む力が緩んだ。
「残念。タイムリミットみたいだ。」
さっきの雰囲気とはガラッと変わって不二がにこやかになった。
「怖い思いさせてごめんね。…でも、名無しさんちゃんへの気持ちは、決して遊びじゃないから。」
印刷し終わって無造作に置かれた写真を整え、名無しさんに渡す。
「それじゃあ、僕は行くよ。」
名無しさんから背を向けて写真室を出ていこうとする不二を、咄嗟に呼び止めた。
「あ、あの…!」
その声に立ち止まり、くるりと振り返る。
「不二先輩を傷付けたことは…ごめんなさい…!…ただ…あの…あれから不二先輩とどう接したらいいのか…わからなくて…」
下を向いていた名無しさんがゆっくりと不二を見上げた。
「意識しすぎるのも違うし…でも避けることも絶対したくなかったし…」
「結果、普段通り接することしか出来なかった…」
名無しさんの言葉を紡ぐように不二がポツリと呟くと、名無しさんはコクンと頷いた。
いつの間にか名無しさんの目の前に来ていた不二が名無しさんに問う。
「君は僕のことをどう思ってるの?」
「ちょ…!それ聞きます?!//////」
「元々僕は告白の返事を名無しさんちゃんから聞かなきゃいけないからね。」
名無しさんの反応を完全に楽しんでいる辺り、さっきの怖い雰囲気とはまるで違う。
「…不二先輩、わかってて聞いてます?」
頬を膨らませて不二を睨む。
すると不二の顔が少しだけ曇った。
「…さっき、名無しさんちゃんに怖い思いをさせたからね。嫌われたかな?って不安にもなってる。」
罰が悪そうに言う不二に、名無しさんは首を横に振った。
「嫌いになんてなってません!…いつもと違った不二先輩は少しだけ怖かったけど…」
「怖かったのに…どうして嫌いにならなかったの?」
明らかに揶揄う不二の言葉に名無しさんは頬を膨らます。
「だ、だから…!不二先輩わかってて聞いてますよね?/////」
再び抗議をする名無しさんに、不二はチュッ…とキスをした。
「…!/////不二先輩…ズルいです…」
俯いて顔を真っ赤にする名無しさん。
「私も…不二先輩が…好きです…/////」
俯いたままボソッと呟くと、不二は優しく名無しさんを抱き締めた。
「ありがとう。」
名無しさんの小さな体が、不二の大きな体にすっぽりと納まる。
不二も華奢な方ではあるが、恥ずかしさで余計に小さくなる名無しさんには充分すぎるほどだった。
気が付くと、下校時間を知らせるチャイムが写真室に鳴り響いていた。
END
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