ハロウィーン・マジック【リョーマ夢】
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夏の暑さが徐々に消え、過ごしやすい気候になった季節。
10月ともなれば朝晩冷えることも増え、日中は秋晴れで心地が良い。
街のスーパーやコンビニはハロウィーンの装飾になり、お菓子が安売りしていたりする。
こんなに綺麗に装飾しても、31日が終わればすぐにクリスマスの装飾になる。
一年というのはあっという間だ。
ある日、リョーマが彼女の名無しさんとデートをしていた時のこと。
「日向は暖かいけど、日陰だったり風が吹くとちょっと肌寒いねー!」
秋らしい服装でリョーマの隣を歩く名無しさん。
繋ぐ手は少しだけ冷たい。
「俺は過ごしやすくて丁度いいけど。」
そうは言ってもちゃんと名無しさんの手を暖めようとするリョーマに、名無しさんは微笑んでリョーマにくっついた。
「ちょ…!くっつきすぎ…////」
名無しさんの胸元が腕に触れ、リョーマが顔を赤くする。
「可愛い彼女が寒そうにしてるよ〜!優しい彼氏が暖めてくれないかな〜!」
「それ、自分で言う?」
クスッと笑いながら二人は街中を歩いた。
「じゃあ、また学校でね!」
「ん。」
名無しさんを駅まで送り届けたリョーマは、名残惜しさを隠して短めの挨拶をした。
名無しさんが改札を通るのを確認して、リョーマは踵を返して歩き出した。
帰り道、駅前の広場に大きな懸垂幕が目に入った。
“ハロウィーンイベント禁止”
なかなか終息しないウイルスの感染拡大防止として、更に毎年問題になっているゴミのポイ捨て等を考慮して、数年前からこの時期に掲示される。
「アホらし…」
それを横目で見てそう呟く。
『とりっく おあ とりーと!!』
『あら、可愛いオバケさんたち。…はい、お菓子よ』
『うわーい!!』
アメリカにいた頃、リョーマとリョーガはハロウィーンのイベントとして、仮装をして家々を渡り歩いた。
日本人だろうと周りの人たちは暖かく二人を迎えた。
抱えたトリートバッグにお菓子が増えていくにつれ、リョーマは嬉しげにスキップまでしだす。
『ったく!…おいチビスケ!待てよー!』
ある意味保護者代わりのリョーガがスキップするリョーマを追いかけた。
本来のハロウィーンのイベントとは違う日本のハロウィーンのイベントに、リョーマは面食らうのと同時に嫌悪感さえ抱く。
本場を知っている彼だからこその感情だろう。
オバケどころかアニメやゲームのコスプレをして夜の街を渡り歩く日本のハロウィーンイベントは、最早ただのコスプレイベントだ。
そんなことを思いながらリョーマはひたすら歩いた。
10月31日
ハロウィーン当日
クラス内では主に女子が、ハッピーハロウィーンと言いながら色んな人にお菓子を配る。
教室内は甘い香りがそこかしこに漂っている。
朝練を終えて教室に入るリョーマ。
その瞬間、今まで違うところにお菓子を配っていた女子たちがほぼ全員、リョーマに駆け寄りお菓子を差し出した。
「え…」
「バレンタインかっつーの…!」
リョーマを横目に堀尾が悪態をついた。
大量のお菓子を抱えて席に着くリョーマに、堀尾は声をかけた。
「お前も大変だな…」
「別に…。」
チラッと堀尾を見ていつも通りの返事をした。
放課後、部活に行くのに教室を出ると、桃城が丁度通りかかった。
「越前!…また随分と荷物が多いな…」
「桃先輩…」
「お前、アメリカでもお菓子もらってたのか?」
両手に抱える袋を桃城が一つ持つ。
「向こうのハロウィーンは日本のハロウィーンと違うんで。」
「あ、そりゃそうだよな!こっちじゃコスプレするだけのイベントだもんな〜。」
桃城にしては珍しい。
そういうイベントが好きそうなイメージだったが、案外リョーマと同じで嫌気がさしている感じがした。
「でもよ…」
言いながら桃城はリョーマの肩に腕を乗せて顔を近づけた。
「お前の彼女がハロウィーンでコスプレしたらどんなだと思う?」
「…!」
鬱陶しそうな表情から一気に目を見開く。
その反応を見て桃城は更にニヤニヤする。
「日本のハロウィーンは女は承認欲求、男はナンパ目的って言われてるけど、特別な相手だけにコスプレするなら、割りと良いイベントだと思わねぇか?」
ニカニカと笑いながらリョーマから離れてすたすた歩きだした。
「ちょ…!桃先輩!」
リョーマも桃城を追いかけて部活に急いだ。
数時間の部活も終わり、校門で待つ名無しさんの元へリョーマは急いだ。
「リョーマ!お疲れ様!」
笑顔で手を振る名無しさん。
だがすぐに驚きの表情になった。
「凄い荷物だね!」
「まぁ…ちょっと…」
いくら何とも思ってないとはいえ女子からバレンタイン並みにお菓子を貰ったとなれば、彼女の名無しさんは良い気はしないだろう。
「これだけ貰ったら、私のはいらないかな〜!」
ニヤニヤして名無しさんはリョーマに何かをチラつかせる。
「え、何?」
そこにはリョーマの大好きなグレープ味の炭酸飲料。
「あ…!」
小さな声をあげて欲しそうにするリョーマ。
だがそう簡単には渡さない。
「合言葉は?」
「…Trick or Treat」
流石帰国子女。
完璧な発音でハロウィーンの合言葉を言ったリョーマ。
「はい!」
ニコッと笑って缶をリョーマに差し出した。
「サンキュー。」
商店街はやはりハロウィーンムード。
至るところにお菓子やらハロウィーンをモチーフにしたケーキやら仮装グッズが並ぶ。
「あ、そうだ!妹にお使い頼まれてたんだ!」
ふと思い出したように名無しさんが一つのお店に入っていく。
「何買うの?」
「妹がね、家でハロウィーンの仮装したいんだって。それに合うカチューシャを買ってきて欲しいってさ。」
小学校低学年の名無しさんの妹。
妹思いの名無しさんは妹の頼み事を面倒くさがらずに、寧ろ楽しんで引き受けている。
そういう人の良さも、リョーマが名無しさんに惹かれた要因だ。
「あ、これどうかな?」
そう言って黒猫のカチューシャを手に取って頭につけてみた。
「トリックオアトリート!」
手で猫の仕草をしながらリョーマを見る。
「…っ!//////」
その瞬間、リョーマの脳裏に桃城の言葉が過った。
ーお前の彼女がハロウィーンでコスプレしたらどんなだと思う?ー
つけているのはカチューシャだけだが、リョーマの頭の中で全身可愛い猫のコスチュームを着ている名無しさんを想像してしまった。
表情を悟られまいとリョーマは足早に店を出た。
「ちょっとリョーマ?!待ってよー!」
頭につけたカチューシャを取って急いで会計を済ませ、リョーマを追いかける。
「ねぇ!何で先に行くのよー!」
やっと追い付いたリョーマの背中に聞く。
「別に…/////」
すたすたと歩いていくリョーマ。
名無しさんも負けじと後を追った。
自分にだけ見せてくれるコスプレなら…日本のハロウィーンもありかな
家のベッドでカルピンと遊びながらリョーマはそう思った。
END