関係【君島夢】
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冬の寒さがなくなり、春の訪れを感じる季節。
18歳の誕生日を迎えたのと同時に君島は普通免許を取得した。
早生まれの君島は同級生より一足遅い免許取得。
君島は初めて自分の誕生日を少し恨めしいと思った。
だがこればかりは法律で決められているから仕方がない。
何故、君島がこんなにも免許を取得したがっていたかというと…
プップー!
公園の前でクラクションを鳴らして止まる。
「お待たせしました」
窓を開けて君島が運転席から声をかける。
「カッコいいー!」
その相手は君島の高校の同級生で彼女の名無しさん。
手を振りながら君島の姿を見て言う。
「さぁ、どうぞ」
名無しさんの言葉にニコッと笑って車内へと促す。
ガチャ…バタン!
「おや…?」
名無しさんの乗った席は君島の隣の助手席ではなかった。
「何故、後部座席なんですか?」
「だって育斗は芸能人でしょ?ファンも多い育斗に彼女がいるって知られたら、育斗のイメージ落ちちゃうもん」
そう言い放つ名無しさんに君島は驚く。
まさか自分のことをこんなに考えてくれているなんて…
だがそれと同時に寂しさや残念な気持ちも増えていく。
「そんなこと…名無しさんが気にする必要ありませんよ?」
「気にします!…さぁ、行こう!」
早く早くと急かす名無しさんにそれ以上何も言えず、君島はアクセルを踏んだ。
「確か、名無しさんの行きたいところは…ここでしたよね?」
君島はカーナビに設定されている目的地の名前を指差して名無しさんに聞く。
名無しさんは少しだけ前に身を乗り出して頷いた。
「うん!覚えててくれたんだ!」
「当たり前ですよ。…でも、デートで脱出ゲームがしたいだなんて変わってますね。」
クスッと笑いながら君島がバックミラーから名無しさんをチラッと見た。
「今子どもっぽいって思ったでしょー!脱出ゲームをデートスポットにするカップル増えてるのよー!」
頬をプクーと膨らませて言う。
「そうなんですか?」
その姿が可愛くてまた君島が笑う。
「一度の回で何人か集まって、同じフロアで脱出ゲームをするのもあるんだけど、小さい規模の脱出ゲームだと、一グループごとに狭い個室でプレイできるの。…だから、育斗と二人きりでいられるから…」
少し声が小さくなり、照れた表情をする名無しさん。
その姿に君島も顔が赤くなる。
「そ、そういうことですか…!」
照れを隠すように君島は運転に集中する。
しばらく沈黙が続いたが、先に口を開いたのは名無しさんだった。
「運転、上手だね!あんまり左右に揺れないし、免許取り立てとは思えないよ!」
「ありがとうございます。このデートの為に練習していたんですよ。ただ、初心者マークがあるのが少々カッコ悪いですが、これは仕方ないですね…。」
苦笑しながら言うと、名無しさんは嬉しそうに笑った。
しばらく走ると目的地が見えてきた。
駐車場に車を止め、会場まで歩く。
自動ドアを通ると受付にスタッフがおり、二人分のチケットを買った。
スタッフに一通り案内され、いよいよ脱出ゲームスタート。
5畳くらいの部屋に通され、暗号やパズルを解いていくスタイル。
「うわー…いきなり意味わかんない!」
暗号化された問題を見て頭に?マークを浮かべる名無しさん。
その横で渡されたメモ帳にスラスラと何やら書きながらあれこれと考える君島。
すると程なくすると、君島はニヤリと笑って言った。
「解けました。」
「え、嘘!?」
名無しさんが驚く間に君島は解答用紙に答えを書いていく。
それからもほぼ君島がスラスラと問題を解いていき、いよいよ最終問題。
[国を跨ぐ遠距離恋愛に合う花は?]
「は、花…ですか…?」
スラスラ解いていた君島が眼鏡を押し上げて悩む。
「遠距離……国…?」
問題を見つめて考え込む名無しさん。
そしてしばらくして…
「あ!わかった!」
パッと閃いて回答用紙に答えを書き込んだ。
君島はその様子を見つめて言った。
「紫陽花…?」
「紫陽花をひらがなにしたらわかりやすいよ!“あい”の間に国を跨ぐ遠距離恋愛で発生する“じさ”があるでしょ?」
「なるほど!それで紫陽花ってわけですね!」
君島も名無しさんの解説に納得した。
「あとは…今までの答えの一字をここに入力すれば……」
カチ…
「開いた!!」
鍵の開く音がして扉を開く。
すると入口のスタッフとは別のスタッフが二人に拍手をして出迎えた。
「おめでとうございます!見事脱出成功です!」
「やったー!」
「!!////」
喜びで思わず君島に抱きついた名無しさん。
普段冷静な君島も流石に顔を少し赤くした。
脱出成功の景品をもらい、二人は嬉しそうにその場を後にした。
気付けば昼過ぎ。
近くにあったレストランへ入り、食事を済ます。
「すっごく美味しいね!」
「先日、CMのロケの途中で食べたんですが、とても美味しくて。是非名無しさんと一緒に行きたかったんですよ」
美味しそうにご飯を食べながら話す二人。
レストランを出て少しドライブを楽しみ、夕暮れ時には二人で海の浜辺に座り込んでいた。
しばらく夕日を見つめていると、君島が口を開いた。
「名無しさん。実は、少し真面目な話があるのですが…聞いていただけますか?」
「真面目な話…?何?」
君島を見つめて名無しさんが聞く。
「私たちの関係のことです。」
「…関係…?」
君島の真剣な表情に、名無しさんは少し不安を抱く。
「ええ。…私たちの関係を…世間に公表しようかと思っています。…もちろん、名無しさんの名前は伏せますよ!」
「えっ!?///////」
突然のことに名無しさんは目を見開いて瞬きさせる。
「でも…育斗のファンはきっと殆どが女性だよ?それなのに彼女がいるって公表されたら育斗のファンが減っちゃうかも…」
「もちろんファンは大事ですが、それよりももっと大事にしたいのは貴女です。」
「育斗…!」
真っ直ぐ見つめながら言う君島に、名無しさんは嬉しさと戸惑いを隠せないでいる。
「本当にいいの?」
「ええ。もちろんです。」
ニッコリと笑う君島に、名無しさんも笑って頷いた。
それから数日後、ネットやテレビのニュース、雑誌の記事に君島が交際中という情報が流れた。
そのニュースを、名無しさんはソファーに座りながらテレビで見ていた。
『今CMで大人気の方ですからねー!』
『お相手は一般の方だそうですが…』
「………」
黙ってテレビ画面を見ている名無しさん。
苦笑しながら君島が入れたお茶をテーブルに置いて名無しさんの隣に座った。
「そんなに凝視することですか?」
「だって…凄く嬉しいけど、やっぱり育斗の芸能活動の邪魔にならないか不安で…」
「そんなこと考えてたんですか?」
名無しさんの肩に腕を回して自分の方へ抱き寄せる。
「…!/////」
「私は名無しさんを愛していますよ。」
甘く囁く君島に何も言えなくなってしまい、そのまま身を委ねた。
「私も、愛してるよ。」
END