優しさからくる戸惑い【不二夢】
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「じゃあまた明日ね~♪」
「あ…ちょっと…!!」
そう言い残して名無しさんをおいて先に帰る。
別に嫌いだからというわけではなく、彼女は…
「…帰ろっか…」
「う、うん…(名無しさんのやつ~!)/////」
同じクラスの菊丸くんとクラス公認のカップル。
名無しさんとは電車が同じだから一緒に行ってたけど、最近は一人で行き帰りをしてる。
ただ単に楽しくて囃し立てるけど本当は…
「…ったく!クラスでイチャつくなよな~!」
半分、羨ましくもある。
じゃあ彼氏作れば?って言われるけど…もう中3の1月。
青学の高等部には進学しないから、今付き合ったとしてもなかなか会えなくなる。
だから私は彼氏は作らない。
…こんなの言い訳かもしれない。
本当は自分に魅力が無いことくらいわかってる。
ーこれでも私、気になってる人、いるんだ…ー
その言葉を心の中に閉まって一人歩いた。
次の日の帰りもまた同じ。
「じゃあね~名無しさん!ごゆっくり~!」
「え!?また!?え~!!!!/////」
ニヤニヤしながら名無しさんに手を振ると、顔を真っ赤にして私を見つめる。
「(顔、笑ってるよ。)」
そうとは言わずに廊下を歩いた。
嫌だとか言って恥ずかしがりながらも名無しさんはいつも幸せそう。
菊丸くんがちょっと喋っただけですぐに菊丸くんを見る。
正直、意識してるのバレバレ…
そう思いながら門のところに行くと、先の方に不二くんが一人で歩いていた。
「…あ。」
「?」
その声に気づいて不二くんが振り返る。
「あれ?一人?」
「リア充と帰りたいと思う?」
苦笑して言うと、不二くんも同じように苦笑した。
「あはは…。そうだったね…。…じゃあ一緒に帰ろうか。」
「え…?う、うん…。」
不二くんの思いがけない言葉に戸惑いながらもコクンと頷く。
席が近いことでよく話す私たち。
勉強も教えてくれて一緒にいて楽しい。
それが“好き”に繋がるのかと言ったら正直わからない。
でも紛れもなく不二くんは気になる存在だった。
「僕たちがこうして歩いてると、何か言われるかな?」
フと不二くんが言い出した。
「あはは…!私でごめんね~!」
いつものように笑って答えるけど、内心ドキドキ…
…何て返ってくるかな…?
そう思っていると…
「僕は別に構わないよ。」
ーえ…?ー
それって…?
これ以上は恥ずかしくて話を半ば無理矢理変えた。
「あ、あのさ、名無しさんたちって、やっぱり手、繋いでんのかな…!?」
不二くんはクスッと笑って言った。
「どうかな?…多分そうなんじゃないかな?」
少し考えた後にそう答えた。
「名無しさんさん、こっち。」
「え?」
歩道に差し掛かったところで不二くんが私の左側から右側に移動した。
「?どうしたの?」
見上げて不二くんに聞いた。
「女の子に車道側を歩かせるわけにはいかないからね。」
サラッとそんなことを口にする不二くんの優しさに胸が熱くなる。
「ありがと…。/////」
俯いて歩いていると、不二くんがまた口を開いた。
「英二も車道側を歩いてるかな?」
独り言のように笑う。
「…どうなんだろう…。」
すると今度は…
「あ、こっちに寄って…!」
「え…キャ…!」
いきなり不二くんの手が私の腕をつかんで不二くんの方に引き寄せられた。
どうやら反対側から自転車に乗った人が通ったみたい。
ドキドキして気づかなかった…
「突然ごめんね。大丈夫だった?」
「あ、うん…!ごめんね!前方不注意だった…!」
あははと照れ笑いして気持ちを誤魔化す。
そんなことを言いながら歩いていると、分かれ道になった。
右か左か。
どっちに行っても駅には着くけど、左に行くと遠回りになるからいつも右に行く。
「名無しさんさんはどっちに行くの?」
「え?…えっと…」
急な問いに言葉を選んでいると…
「左から行こうよ。」
私の答えを待たずに不二くんは左に行った。
「あ…うん…!」
言われるまま不二くんに着いていった。
駅に着き、今度こそ本当に別れる。
「じゃあ、僕こっちだから。…また明日ね、名無しさんさん。」
ホームに向かって行く不二くんを見つめて言う。
「うん。また明日ね…!」
電車に乗っていく不二くんを見てから私も来ていた電車に乗った。
電車に乗りながら考える…
どうして一緒に帰ろうだなんて言ったんだろう…?
引退したとはいえ他の部活メンバーと一緒に帰ることだって出来たはず。
「…それに……」
あの時どうして腕を引っ張ったんだろう…?
口で言えばよかったのに…
…まぁ…あの場合は口で言うより行動した方が早かったのかもしれないけど…
分かれ道の時だって、どうして左から行こうって言ってくれたんだろう…?
あのまま“じゃあね”って別れればいいのに…
「…もう……わかんないよ…」
思い出すだけでも心臓がドキドキするのに、同時に得体の知れない何かに押し潰されそうになる。
「やっぱり好きなんだ…」
そう確信した頃、電車は私の降りる駅に停まっていた。
END