自信【リョーマ夢】
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私は青学テニス部所属の二年生。
女だけど男子テニス部。
その理由は自分で言うのもなんだけど、所謂女子テニス部にいるには強すぎて、男子テニス部の方が私のテニススタイルに合った練習が出来るから。
特例中の特例で、後にも先にも女子なのに男子の部活にいるのは私だけだろうと校長先生が言っていたらしい。
そんな私には同じテニス部の一年生に彼氏がいる。
スーパールーキーの越前リョーマ。
一年でレギュラーの座につき、レギュラー落ちしたことは一度もないくらい強い。
私も青学レギュラーとして負けてられない!
…けど、やっぱり彼女の私としてはリョーマには負けてほしくないと思う。
そんな事を思っていたある日…
ドンッ
「あ、ごめんマムシ…!」
タオルを取ろうとベンチへ歩くと、マムシこと海堂くんとぶつかった。
「あ?」
相変わらずの目で私を睨む。
それにムッと来てつい言い返した。
「何よ!睨むことないでしょ!?」
「ちゃんと前向いて歩けっつってんだろ?」
「だから謝ったじゃない!?」
「そういう問題じゃねぇんだよ!」
「じゃあどうすればいいのよ!」
今にも掴みかかりそうな私たちを、大石先輩が止める。
「よせ、二人とも。…海堂、お前も女の子相手に掴みかかるなよ…」
「…ケッ…!」
マムシは私を一瞬見たあと、すぐに練習に戻った。
「海堂なりの照れ隠しだね。」
不二先輩がクスッと笑いながら言う。
「…あれがですか?」
「うん。まぁ、僕なら君に素直に気持ちを伝えるけどね。」
不二先輩が私の頭を撫でる。
「もぉ、不二先輩…冗談止めてくださいよ~」
苦笑しながら不二先輩を見上げると、後ろからタカさんが来た。
「不二、それくらいにしておきなよ」
「…タカさん。…そういうタカさんこそ、杏菜に触れたいんでしょ?」
「えっ!?…そ、そんなことはないよ…!/////」
相変わらず分かりやすいくらい顔を赤くするタカさん。
部の癒しだな~…………ラケットを持たなければね…
「こらそこ!何を話している!練習に集中しろ!」
急に手塚部長の声が聞こえてビクッとする。
「罰として、グランド10周!」
「ビリの人には特製乾汁だ…」
怪しげな色のドリンクを持って乾先輩までニヤリと笑う。
先輩たちは逆らえないというようにグランドを走り出した。
私も走り出そうとすると…
「お前は8周でいい…」
「ええっ!?」
急にボソッと手塚部長がそう言ってきた。
「手塚部長、私は確かに女ですけど男子テニス部にいるんですから、先輩たちと同じことをやります!」
力強く手塚部長を見上げると、根負けしたように手塚部長が頷いた。
「…わかった。では10周、行ってこい!」
「はい!」
返事をして私も先輩たちに遅れを取った分、かなり本気を出して走った。
何より乾汁を飲みたくないから………
「手塚、走る回数を彼女だけ減らしたのは、女子だからという理由だけではないだろう?」
「乾。お前こそ、乾汁の後ろに隠されている普通のドリンクをあいつにあげるつもりだったんだろう。」
「…やはりお互い私情が出たということか。」
「そのようだな。」
はぁ…はぁ…はぁ…
手塚部長と乾先輩がこっちを見ながら何か話してる気がする。
…何か怖いな……
そう思いながらグランドを走り続けた。
ーお前は8周でいいー
走りながらしばらく手塚部長の言葉が頭から離れなかった。
手塚部長は多分、私が女だからそう言ったんだと思う。
いくら他の女子より体力が桁違いにあったり、テニスが強いからって女の私が男子テニス部にいること自体、やっぱりおかしいんじゃないか…
前にも一度そんな事を思って手塚部長に相談したら、先生の許可も得ているから問題ないと言われた。
だから私が心配することじゃないけど……
あれ…?そもそも私、女なのにレギュラーでいいの…?
私より力が強い荒井くんとか池田くんとかも、レギュラーになるために一生懸命練習してるのに…
そんな“男子”テニス部でレギュラーなんて……いいんだろうか…?
ここ数日、ずっと同じことを考えていた。
それは、大好きなリョーマと一緒にいるときも…
いや、リョーマと一緒にいるからこそ、余計に考える。
同じレギュラージャージを着て、同じようにコートに立つからこそ…。
「杏菜先輩、聞いてるっスか?」
「…え……?」
リョーマと帰っているとき、リョーマが私を見上げて言った。
またあの考え事をしてたみたい。
「あ、ごめん。何だっけ…?」
苦笑しながら私が聞き直すと、リョーマは溜め息を吐いて言った。
「先輩、最近何か考え事してるっスよね。」
いきなり確信をつかれた…
でも、リョーマに心配はかけたくない。
「そんなことないよ!元気元気!!」
「ふ~ん…。ま、いいけど。」
私のこんな空元気も、多分リョーマには嘘だってことはわかってると思う。
だけどこれ以上聞かないでいてくれた。
次の日、部活が終わって帰り支度をしていると、同じ二年の荒井くんたちが来た。
「おい!お前最近調子に乗ってねぇか?」
来るなり急に荒井くんがそう言った。
「え?どういう意味よ!」
少し強気に言い返すと、更に荒井くんが声を荒げて言った。
「レギュラーだからって先輩たちに気に入られやがって!」
「だいたい女なのに男子テニス部ってのがおかしいだろ!?」
「っ…!」
普段なら言い返すけど、一番悩んでいることを言われて何も言い返せない。
「……」
何て答えればいいのかわからなくて困っていると、どこからか聞き覚えのある声が聞こえた。
「それってただの妬みでしょ?」
「あん?」
荒井くんたちが振り返ると、そこには凄い形相で睨むリョーマがいた。
「リョーマ…!」
「越前、お前先輩に向かってどういう口利いてんだよ!」
普段はそんな言葉は言わない池田くんが強気にリョーマに言い放った。
「別に。ただの妬みで八つ当たりしてる人たちを先輩と思いたくないだけ。」
「んだと!?面白れぇ!先輩の偉大さを思い知らせてやるぜ!」
荒井くんたちがリョーマを連れてテニスコートに行った。
「リョーマ!」
「安心して見ててくださいよ。」
リョーマが少し笑って私に言った。
リョーマがレギュラーでもないやつらに負けるわけないってわかってるのに、私のせいでこんなことになってしまった申し訳なさが強い。
コートに立ったリョーマ。
その反対側には……
「…!卑怯よ!!2対1なんて!」
リョーマの反対側のコートには、荒井くん、池田くんの二人がいた。
「誰もシングルスなんて言ってないぜ?ハハハッ!」
嘲笑うかのように荒井くんが言う。
私は自分のラケットを持ってリョーマのいるコートに立とうとしたけど…
「大丈夫。杏菜先輩はそこで見てて。」
まるで勝利を確信したかのようなリョーマの表情。
私はそれを見て少し安心して下がった。
「1ゲームでも取れたら許してやるよ。」
「その言葉、多分後悔するよ。」
「何!?」
いつものように挑発するリョーマ。
大丈夫……よね?
「荒井、トゥーサーブ!」
林くんが審判席で叫ぶと同時に、荒井くんは力強いサーブを放った。
「はぁ…!」
「っぁあ!!」
軽々とリョーマがそれを返す。
それを池田くんがまた返す。
しばらくラリーが続いたと思ったら…
「0ー15!」
リョーマが最初の得点を取った。
「次行くぞ…!」
荒井くんが声を出して気合いを入れ、また強いサーブを放った。
だけど……
「0ー30!」
「0ー40!」
特別な技は出してないのに、次々とリョーマが点を入れていく。
「先輩たち、次で終わりっスよ?」
ニヤリと笑ってリョーマが言うと、荒井くんが一瞬睨んだ。
「はぁっ!!!」
荒井くんが今までより一番強いサーブを打った。
「はっ…!」
ラケットに当たるボールの音が明らかに違う。
それだけ打球が強かったんだろう。
けどリョーマにはそんなでもなかったみたいで、それもすぐに返した。
そして…
「げ、ゲーム越前…1ー0…」
「クソッ…!」
荒井くんと池田くんが悔しそうにリョーマを睨む。
私はリョーマに駆け寄ろうと近づいたとき…
「たったあれだけのラリーで疲れてるようじゃ、まだまだだね。」
「っ………!」
二人がリョーマを睨むと、リョーマは振り返って私に笑った。
「大丈夫って言ったでしょ?先輩。」
「うん!」
悔しがる荒井くんたちを置いて私たちは帰り支度を始めて校門を出た。
「杏菜先輩。」
「ん?何?」
「杏菜先輩は俺から見てもテニス強いし、レギュラーになるだけの力があると思う。」
「え…?」
「堂々としてていいっスよ。」
「うん、ありがとう!」
あれだけ悩んだのに、リョーマのこの一言でスッと気持ちが楽になった。
堂々としてていい…
その通りだね、リョーマ!
END