ふぁーいと!【菊丸夢】
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今日は桃とオチビと新しいテニスラケットを見に出掛ける日。
13時に駅前で待ち合わせのはずが……
時計を見ると12時…
「一時間間違えちった~…」
楽しみすぎて気持ちが早まり、待ち合わせ時間より早く来てしまった。
「ん~どうしよっかにゃ~…」
このまま一時間立ったままじゃ暇だし、どこかで時間を潰そうと周りをキョロキョロする。
すると、駅の向かい側に一軒の喫茶店が目に入った。
「あそこで時間潰すか…」
そう思い、信号を渡って喫茶店に向かった。
チリンチリン…
ドアを開けるとドアに付いていた鈴が鳴り、奥からウエイトレスのお姉さんが出てきた。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
明るい声で言われ、少し焦りながら答えた。
「ひ、一人です…!」
「かしこまりました。お席へご案内致します。こちらへどうぞ!」
お姉さんがニコッと笑うと席へ通された。
ちょうどお昼時で、ランチを食べに来る主婦やサラリーマンでお店は少し賑やかだった。
一人で喫茶店に入ることはないから、ちょっと緊張する…。
ソワソワしていると、さっきのお姉さんがお水を持ってきてくれた。
「あ、どうも…!」
無意識に背筋を伸ばしてペコリと軽くお辞儀をする。
お水と一緒に渡されたメニューを見ると、女子に人気そうな可愛いパンケーキや、ガッツリ系なオムライスやカレーももある。
「何にしようかな~…」
メニューとにらめっこする。
「…オムライスにしよう!」
メニューを決めると周りをキョロキョロして店員を探すと、さっきとは違うお姉さんが来て注文を取ってくれた。
お姉さんがペコリとお辞儀をすると、キッチンに注文を伝えるために奥に下がっていった。
お水を一口飲んで一息吐くと、急に少し大きな笑い声が聞こえた。
「…?」
何だろう?と覗いてみると、俺を席まで案内してくれたお姉さんがいろんなお客さんと話していた。
『は~…これからまた外周りだよ~…』
『こんな暑い中外は歩きたくねぇよな~…』
『あっはは!ファイトですよ!』
『名無しさんさーん…明日から試験なんだよ~…。数学とかもうわかんねぇよー!』
『ふぁーいと!大丈夫!きっと上手くいくよ!』
楽しそうに話すお姉さん。
お客さん達はほとんどが常連だと思う。
ボーッと見ていると、熱々のオムライスが出てきた。
「お待たせしました。フワッとビーフオムライスです。」
「ありがとうございます…!」
卵がフワフワしてすっごい美味そう!
スプーンを取って一口食べると、見た目以上に卵がフワフワしていて美味しかった。
その間もお姉さんの笑い声が聞こえる。
気になって仕方ないけど、冷めるともったいないからなるべく気にしないようにひたすら食べた。
気がつくともうすぐ待ち合わせ時間。
「うわ!急がなきゃ!」
お姉さんの話し声が気になって結局遅くなってしまった。
そのせいで時間を忘れて遅刻寸前。
急いで伝票を持ってレジに行って会計をする。
「お待たせしました!…540円です。」
お姉さんがお客さんとの会話を終わらせて急いでレジに来てくれた。
その時もずっと笑顔で対応するお姉さん。
「1000円お預かりいたします。……460円のお返しです。」
お姉さんはお釣りを俺の手の中に丁寧に入れて渡してくれた。
「ご、ご馳走さまでした…!」
「ありがとうございましたー!」
お釣りを渡された時に触れた手がポッと熱くなる。
お店を出ると、向かい側の駅には既に桃とオチビが待っていた。
「英二せんぱーい!!」
桃のデカイ声が響く。
信号を渡るとオチビが不思議そうに聞いてきた。
「何で英二先輩が喫茶店から出てくるんスか?」
「え……ん~…まぁ、ちょっと暇潰し…?」
喫茶店と言われただけなのにお姉さんのことが更に思い出されてドキッとする。
「とりあえず行きましょー!」
桃が先頭を歩き出した。
歩いている間もあのお姉さんの笑顔が忘れられない。
「…名無しさんさん……だっけ…?」
お客さんとの会話の中で出てきたお姉さんの名前。
ポツリと呟いてみる。
“ふぁーいと!”
「…俺も言ってもらいたいな~」
そう思いながら道を歩いた。
END