逢ひ見ての【仁王夢】
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仁王君に彼女がいると知って数日。
未だにメールは毎日するし、学校で話すのは変わらない。
止めなきゃと自分で思うけど、嬉しいのが先に来て止められない。
ズルいよね…
そう思いながらも今日もメールをする。
『もう街はイルミネーションで綺麗だよね!』
『そうじゃな。行きたいんか?』
『まぁね…。でも一人で行く勇気はないよ…』
『カップルだらけじゃからな…。名無しさんが行きたいなら一緒に行くか?』
『え、いいの!?』
『ああ。』
『やったぁ!ありがとう!!』
仁王君からの誘いに舞い上がる。
日にちや時間、待ち合わせ場所を決めて幸せな気持ちで眠りについた。
「雅治!おはよー!」
未だに慣れないけど二人の時は名前で呼ぶ。
「ああ、早いのぉ。まだ待ち合わせ時間まで少しあるじゃろ。」
「うん!楽しみすぎて早く着いちゃった!雅治こそ早いね!」
「女子を待たせる訳にはいかんじゃろ?」
「っ!////」
また耳元で囁かれる。
仁王君は私の反応を面白がって笑う。
「雅治…!////」
恥ずかしさで顔が熱くなる…
そんな状態で歩いた。
最初は映画を観て、お昼ご飯を食べて、時間に合わせて電車に乗ってイルミネーションをやっている遊園地に行く。
何だか本格的なデートみたいで凄くドキドキする…!
仁王君はただ気を遣ってくれてるだけなのは知ってるけど、何だか嬉しい。
そんなことを思いながら歩いていると、人が多くてはぐれそうになる。
「うわ…!」
ギュ…
はぐれるのが怖くて、つい仁王君の服の裾を掴んでしまった。
「あ…!ご、ごめん!////」
パッと手を離すと、仁王君はニコッと笑って言った。
「掴んどきんしゃい。迷子になったらおまんは小さいきに、見つけられん。」
「もぉ!それって私がチビってことー!?」
頬を膨らまして文句を言いつつ、仁王君の言葉に甘えて服を掴んだ。
心臓がうるさい…
仁王君に聞こえてたらどうしよう…!
映画を観ている間も、隣に仁王君がいるということに意識が集中して内容があまり入ってこなかった。
夕方になり、電車に乗ってイルミネーションに行く。
着いた頃には陽は沈み、イルミネーションの光がキラキラと輝いていた。
「うわー!すっごい綺麗!」
まるで宝石を散りばめたようなその光景に目を輝かせる。
「まっこと綺麗じゃ。」
一つずつ見て廻るだけでも何度カップルとすれ違っただろう。
幸せそうに手を繋いだり腕を組むカップルを見て、いいなーと思う。
…仁王君も…名無しさんちゃんと…
そう考えると胸がキュッと締め付けられる。
私は気持ちを誤魔化すようにイルミネーションを見る。
すると…
ギュ…
「え…?」
仁王君が急に私の手を握った。
「氷のように冷たいのぉ。俺が暖めちゃる。」
そう言う仁王君の手は凄く暖かい。
「あ、えっと…その…////」
「何じゃ?こっちの方がええんか?」
言いながら仁王君は所謂恋人繋ぎをした。
「うわ…//////」
あまりにも恥ずかしすぎて顔が熱くなる。
「こうされたんは初めてか?」
「う、うん////」
コクンと小さく頷く。
「そいつは悪いことしたのぅ。すまん。」
パッと手を離す仁王君に少し驚いて思わず言ってしまった。
「全然大丈夫!…こっちの方がいい…から……////」
小さな声で呟くと、仁王君はフンッと笑ってまた恋人繋ぎをしてくれた。
その状態で歩いていると、廻りからはどう見えてるんだろう?とドキドキする。
「あ、観覧車だ…」
ふと呟いてしまった独り言。
「乗るか?」
私の独り言に反応してくれる仁王君の方を向く。
「いいの!?」
「ああ。上から見るのも綺麗じゃろう。」
仁王君に手を引かれて観覧車の列に並んだ。
「結構並ぶんだね…」
「ま、話しとればすぐじゃ。」
「そうだね!」
私たちは学校のこと、プライベートでのことをたくさん話す。
すると私の頭にあることが浮かんだ。
…仁王君、顔に出してくれるかな…?
そう思いながら私はそっと仁王君の後ろに立つ。
そして…
「えいっ!」
ギュッ!!
「っ…!」
私は不意打ちで後ろから思いっきり仁王君に抱きついた。
やってる私自身も凄く恥ずかしいけど、今までやられてる仕返し!
「いつもの仕返し!…ドキっとした?」
ニヤリと笑いながら仁王君の顔を後ろから覗き込む。
「…卑怯じゃ……」
そう呟いて仁王君は顔を背ける。
「ドキってしない?顔に出してくれないの?」
どうしても顔を見せてくれなくて何度も覗き込む。
「ドキっとせん訳なかろう…////」
そう呟かれて、仁王君は前へ進んでいった。
…つまり、照れてくれたってことだよね?
少し嬉しくなって満足するけど、内心ドキドキしてるのは変わらない。
ようやく観覧車に乗った時には30分以上経っていた。
どんどん上へ上がっていく観覧車。
遠くなる景色をうっとりとした目で見つめる。
「うわー!上から見ると全然違う!」
「ほうじゃのう…」
仁王君の声がすぐ隣にある。
「え…?」
振り返るとさっきまで向かい合って座っていた仁王君がいつの間にか私のすぐ隣にいた。
「ま、雅治…?//////」
「ほれ、景色見んと終わるぜよ。」
「う、うん//////」
仁王君にそう言われてドキドキしながら窓を見つめる。
綺麗だけど、集中出来ない…
「ふぅー…」
「ひゃぁぁぁん!//////」
急に仁王君が私の耳元で息を吹いた。
ビックリとくすぐったさで思わず変な声を出してしまった。
「き、急に何するの!?/////」
「さっきの仕返しじゃ。…まさかそんな声出すとは思わんかったが…」
自分の出した声を思い出して顔を真っ赤にする。
「だ、だってビックリしたから…/////」
心臓がバクバクしてる/////
どうしたらいいのかわからず、とりあえず景色を見ることにした。
「可愛い反応じゃのぉ…」
またぼそっと呟く仁王君。
観覧車という密封空間。
恥ずかしさでドキドキしっぱなしだった。
約15分間の観覧車も終わり、また手を繋いで園内を廻る。
時刻は20時過ぎ。
「もうこんな時間か…。名無しさん、腹減っとらんか?」
「ん~…微妙かな…?雅治、お腹空いた?」
「まぁ、ちいとな…」
「じゃあ、何か食べに行こうか!」
「名無しさんの手料理が食べたいのぉ…」
「えっ!?」
ふとそんな事を言われてビックリする。
「冗談じゃ…。…まぁ、食べてみたいのは事実じゃがな。」
独り言のように言う仁王君。
…確か今日って……
「あ、あの、雅治…良かったら家に来る?私何か作るよ?」
俯いて思い切って言ってみる。
「ええんか?…親とかおるんじゃろ?」
戸惑って言う仁王君に、私はまた口を開く。
「実は…今日お母さんたちいないの…。」
「そうなんか…。そいつは是非行ってみたいのぉ。」
ニコッと笑って仁王君が言う。
「うん!」
その答えに私も笑顔になった。
まだ仁王君と一緒にいたい…
まだ離れたくない…
そう思っていたから凄く嬉しかった。
何作ろうかな?
そう思いながら二人で電車に乗って家に帰った。
「どうぞ。」
「お邪魔します。」
仁王君をリビングに通して、私はとりあえずお茶を入れて仁王君に出す。
「はい。…私、ご飯炊いてくるね!」
「あぁ。…何作ってくれるん?」
「オムライスだよ!」
振り返って言う私に仁王君も笑ってくれた。
「ほ~う、そいつは楽しみじゃ。」
その言葉を背中に受けてキッチンに向かった。
1時間くらい経過した頃、無事にオムライスも出来て二人で食べる。
「ん、美味い!」
「本当!?良かった!」
「名無しさんは家庭的じゃのぉ」
「えへへ!ありがとう!」
凄く嬉しいけどやっぱり照れる。
仁王君がここにいるというのがまず不思議で…。
ご飯も食べ終わり、他愛のない話で盛り上がる。
すると仁王君が私の後ろに回り、首元に手を遣わせた。
さわ…
「いやぁ…ん…!」
「お、いい反応じゃ。」
くすぐったくてまた変な声が出てしまった。
「や、止めてよぉ////」
「そんな可愛い反応されたら、止められんのぉ…」
そう言ってまた首元に手を遣わせる。
「あぁん!」
どうしても声が出てしまう。
でも何だか心地よくて……
「っ!…ダメ…!!」
気がつくと、私は仁王君を突き飛ばしていた。
「…!…すまん。ちぃとやりすぎた…。」
仁王君が申し訳なさそうに言う。
その表情を見て私は慌てて言った。
「違うの…!嫌じゃないんだけど……」
そこまで言って言葉を詰まらせる。
ダメ…このままだと仁王君への気持ちも伝えてしまう…!
そんなことしたら仁王君に迷惑だ…
言葉に困っていると、仁王君が私に近づく。
「その先は…?」
優しく言う仁王君。
あぁ…もうダメだ……
私はとうとう自分の気持ちを伝えた。
「…私、雅治を好きになってる…。…でも好きになっちゃいけないって思ってる。」
…言っちゃった……
「俺を好きになったらまずいんか?」
「…だって…!…雅治に付き合ってる人がいるの知ってるから…」
「…!」
少し驚いたように目を見開く仁王君。
私の目から涙が伝う。
「…苦しかった…。雅治を好きになった後に雅治が付き合ってることを知って…。このままじゃ彼女を傷つけちゃうって思ったけど、雅治が私をドキッとさせたり、言ったりするから…」
拭っても拭っても涙は止まらない。
すると仁王君が私を抱き寄せてギュッと抱きしめてくれた。
「そうだったんか…。辛い思いさせたんじゃな…すまんかった。」
優しい声色で言われる度にまたポロポロと涙が流れる。
「私、ズルイなって思ってた…。雅治に彼女がいるって知ってから、相手を傷つけるってわかってても、雅治と一緒にいたい、もっと仲良くなりたいって思ってた…。」
「俺もズルイ…」
そうポツリと呟く仁王君。
「おまんの気持ち、薄々気づいとった。じゃがおまんが可愛い反応したり恥ずかしがっとる所を見たら、止められんかった。」
仁王君がゆっくりと言う。
「俺が悪い…」
そこまで聞いて、私は胸が苦しくなって仁王君の首に腕を回して思いっきり抱きついた。
「そうだよ…!雅治のせいだよぉ…!二人の女の子を傷つけたんだよ?…バカぁ!!!」
止まりかけていた涙がまた零れだす。
仁王君は私に負けないくらい強く私を抱きしめてくれた。
すると仁王君がポツリと言い出した。
「名無しさん、ズルイことしてええか?」
「え?」
回していた腕を解いて仁王君を見つめる。
チュ……
「…!」
私の唇に暖かいものが触れる。
それも束の間、今度は仁王君の舌が私の口をこじ開けて入ってきた。
「ん…!ふ…んん!」
あまりにも急なことに驚いて呼吸をするのも忘れる。
酸欠になりそう…!
そう思ったとき、やっと仁王君が唇を離した。
「はぁ…はぁ…はぁ…/////」
肩で息をする私を仁王君は見つめる。
「大丈夫か?」
「う、うん…///……雅治、私、好きって言ったけど、雅治にとってはただのクラスメイトだよ…?」
驚きと酸欠で上手く頭が働かないけど、伝えることは伝える。
「…ただのクラスメイトにこんなことすると思うか?」
「え…?」
真っ直ぐ私を見つめる仁王君。
それ、どういう意味…?
仁王君の本当の気持ちが知りたい…
そう思うと、口が勝手に開いた。
「雅治。雅治の本当の気持ちを教えて…?…私が雅治のこと好きって言ったから優しくしてくれるの?」
「言ったら俺を嫌いになるぜよ。」
「大丈夫、ならないよ…?」
私が頷くと、仁王君はまた私の顔を真っ直ぐ見つめて言った。
「俺は名無しさんが好きじゃ。…じゃが今の人への気持ちが変わるわけじゃなか。」
そうハッキリと答えた。
「…それが雅治の本当の気持ち?…優しさで言ってくれてるのじゃない?」
「ああ。…名無しさんと仲良ぉするのがあと一年早かったら、俺は確実に名無しさんに告白しとった。」
そう言って仁王君はまた私を抱き締めた。
「こんな俺でもええんか…?俺はズルいやつぜよ。」
「…お互いズルいよ……」
仁王君の体に腕を回して抱き合う。
「雅治…好き…」
「ああ、俺もじゃ。」
私たちはさっきよりもキツく抱き合った。
それから私たちは布団を敷いて二人で眠りについた。
起きた時には朝。
目の前には仁王君がスヤスヤと眠っている。
…夢じゃないんだ……
仁王君の顔がすぐ近くにあってそれでまたドキドキする。
すると仁王君が目を開けた。
「ん、んん…おはようさん。」
「おはよ…////」
「もう朝か…。」
「うん、そうだね。」
仁王君がそう言うと、私を抱き寄せて寝転がったままギュッとされる。
「離しとぉない。」
「私も離れたくない…。でももう帰らないとまずいでしょ?」
「まぁな…」
チュ…チュ…
仁王君の舌が私の口に入ってくる。
私もそれに答えるように仁王君の口に舌を入れた。
お互いの舌を絡め合い、水音が鳴り響く。
そしてそれは名残惜しげに離れていく。
仁王君はニコッと笑って起き上がって帰る準備を始めた。
私も仁王君を駅まで送る準備をした。
手を繋いで二人で駅に向かう。
その道のりがやけに短く思えた。
「ありがとな。」
「ううん、こっちこそありがとう!気を付けてね!」
「ああ。」
手を振って仁王君を見送る。
改札を通っていく仁王君の後ろ姿をずっと見つめていた。
そして私は元来た道を戻って家に帰った。
家に着いて片付けをしていると、ふと仁王君とのことを思い出す。
さっきまで仁王君が寝ていた布団。
畳んでいると、ふわりと仁王君の香りがした。
「仁王君……」
布団を抱き締めて仁王君のことを思い出す。
逢ひ見ての のちの心に くらぶれば
昔は物を 思はざりけり
END