Train×Trouble【不二夢】
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いつもと同じ時間に起きて
いつもと同じ時間に家を出て
いつもと同じ時間の電車に乗る
いつもと変わらない一日だと思ったら…
違った…
「………?」
いつも通り満員電車で揺られていると、不意に太もも辺りに違和感を覚えた。
「(…何?)」
太ももに目を落とした時、急に電車が大きく揺れてバランスが崩れる。
「…っ!」
それと同時に太ももの違和感が無くなった。
…満員電車だからカバンか何かが当たってたのかな?
そう思っていると…
「……?」
また太もも辺りに違和感…
でもそれはカバンのような無機質な物ではなく、生暖かい人の手の感触だった。
その手は確実に私の太ももを撫でていた。
「(え…これって……痴漢…?)」
そう確信した時、徐々に手がお尻の方へ移動し、撫でるどころか鷲掴みするように手が動いた。
「(……っ!//////)」
どうしよう…叫ばなきゃ……!
でもこんな満員の中で叫ぶのは恥ずかしい…!
普段からあまり喋らなく、大きな声を出すのが苦手な私にとって、この状況は地獄でしかない。
そう思いながら少しだけ後ろを向くと、ニヤニヤしながら男がお尻を触っている。
…嫌だ……気持ち悪い…!
叫びたくても叫べなくてギュッと目を閉じる。
すると隣から声がした。
「次の駅で降りましょうね?」
その声に目を開けて見上げると、同じクラスの不二くんが痴漢の男の手を掴んで微笑んでいた。
「大丈夫?名無しさんさん。」
「…ふ、不二くん……」
ビックリして不二くんを見上げたまま固まる。
「名無しさんさんも次の駅で降りて、駅員さんに事情を説明してもらえるかな?」
「あ…う、うん…」
コクリと頷いて、チラッと男の方を見ると、悔しそうに下を向いていた。
程なくして駅に着き、人混みを掻き分けて不二くんが男の手をしっかりと掴んだまま降りていく。
私もその後を付いていく。
「すみません。この人、彼女に痴漢をしたんです。」
駅員さんにそう伝える不二くんを、駅員さんはビックリして見る。
「本当かい!?ありがとう!ちょっと事情を聞かせてもらえるかな?…君も一緒に…」
不二くんの後ろに隠れていた私を見て、駅員さんが駅員室に私たちを招き入れた。
痴漢の男を駅員さんがしっかりと捕まえていた。
ソファーに座らされ、お茶が出てくる。
「さて、早速だけど、状況を聞かせてもらえるかな?」
そう言って駅員さんがノートにメモをしだす。
「あ…えっと……」
どう話していいかわからず困っていると、不二くんが優しく言ってくれた。
「ゆっくりでいいよ。落ち着いて。」
その言葉が嬉しくて、私はゆっくりと話した。
長い状況説明が終わり、ようやく解放された頃には既に10時近くになっていた。
「長い間ごめんね。君たち、青学の生徒だろ?学校にはこちらから連絡しておくから、安心してね。」
「いえ、こちらこそ、ありがとうございました。…よろしくお願いします。」
不二くんが駅員さんに礼を言うと、私はペコリと頭を下げた。
「大変だったね。本当に大丈夫?」
私に優しく問いかけてくれる不二くんを見て、ふと思い出した。
…私、不二くんにお礼言ってない…!
「あ、あの…助けてくれて…ありがとう…」
深く頭を下げてお礼を言う。
「好きな子が他の男に、ましてや痴漢に触られてるのを見たら、見過ごせないよ。」
「…え?」
「さ、そろそろ学校行こうか。」
何事も無かったかのように歩く不二くん。
……今、何て言ったの?
気になったけど、不二くんは先々行くし、何より私にそんなことを聞く勇気なんてなかった。
だから私は諦めて不二くんの後を付いていった。
END