青学テニス部の新選組恋愛物語【手塚夢】
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「文化祭の出し物、テニス部は劇をしようよ!」
この言葉で全ては始まった。
青学テニス部のマネージャーの名無しさんは目をキラキラさせて提案した。
数ヶ月後、午前11時。
青学テニス部による劇『新選組恋愛物語』の幕が下ろされた。
出演
土方歳三:手塚国光
梅雨姫:名無しさん名無しさん
近藤勇:大石秀一郎
沖田総司:不二周助
斎藤一:海堂薫
永倉新八:桃城武
原田左之助:菊丸英二
藤堂平助:越前リョーマ
山南敬助:乾貞治
井上源三郎:河村隆
徳川慶喜:荒井将史
護衛1:堀尾恥史
護衛2:水野カツオ
護衛3:加藤勝郎
武士1:池田雅也
武士2:林大介
梅『さよなら、父上…。』
梅雨姫、暗闇の中で城から抜け出し、下手へ退場
暗転
朝になり梅雨姫、下手から出る
屯所の看板を見つめながら
梅『…随分遠くまで来たけどここって…新選組の屯所…』
屯所の中から近藤、土方が出てくる
二人、梅雨姫を見て
土『…?何だお前。新選組屯所に何の用だ。』
近『その着物、町人ではないな?』
梅雨姫、無言で頷く
近『とにかく、中に入りなさい。』
近藤、梅雨姫の腕を取り中へ案内する
土方も続いて中に入る
暗転
新選組幹部が梅雨姫を見つめて座っている
こそこそと話している幹部
土『で、あんたはいったい誰だ。』
梅『…私は、徳川慶喜の娘の梅雨です。』
みんな一斉に
『は!?』
永『ど、どういうことだよ!?』
原『何で将軍の娘の姫様がこんな所にいるんだよ!?』
梅『…私、自分は弱虫なくせに他人に戦ばかりさせる父上に嫌気がさして城を抜け出しました。』
斎『抜け出した…?』
梅『はい。ですから皆さんにお願いがございます。どうか私をここにおいてはもらえないでしょうか…?』
近『梅雨姫様のお願いとあらば、断るわけにはいきますまい。…どうだい、トシ。』
土『近藤さん!もし慶喜公に見つかりでもしたら全員打ち首では済まないぞ!』
沖『土方さん、いいじゃないですか。彼女、上様が嫌だから逃げ出したんでしょう?なら無理に帰らせるのも可哀想だ。』
井『そうですね…。私も賛成しますよ。』
土『源さん…ったく、わかった…。だが、慶喜公が梅雨姫を必ずお探しになるだろう。もし匿っているのが新選組ということが慶喜公の耳に入れば、素直に慶喜公の指示に従うぞ。』
梅『ありがとうございます!』
梅雨姫、深々と頭を下げる
暗転
上手に慶喜、下手には護衛3人が頭を下げている
慶『梅雨姫はどこだ!どこにおるのだ!』
護1『腰元が早朝、梅雨姫様のお部屋に行ったときには既におられなかったようです…』
護2『恐らく城のものが寝静まった時刻に城を抜け出したものと思われます。』
護3『早急に捜索いたします。』
慶『頼んだぞ。』
暗転
屯所内を歩き回っている梅雨姫
それに気づき藤堂が声をかける
藤『何やってるんですか?』
梅『土方殿のお部屋を探していて…』
藤『土方さんに何の用ですか?』
梅『ちょっと相談したいことがあって…』
藤『では私が案内します。』
梅『ありがとうございます。藤堂殿。』
二人、上手へ移動
上手の照明点
藤『ここです。では。』
藤堂、下手へはける
梅『失礼します。』
土『…?どうぞ…。』
一礼して土方の部屋に入る
土『どうしました?』
梅『土方殿、京の町を案内してくださらないかしら!』
土『何を言っているんですか!貴方は城の姫様だ。そんな人が京の町を…』
梅『なら、この格好でなければいいんですね?』
土『…そういう問題では…』
梅『私、今まで城から出たことが無いんです。いつも庭で外の世界を想像していました。…一度でいいから自由に町を歩きたい…』
土『……わかりました。だが俺も着いていきます。』
梅『はい!ありがとうございます。』
梅雨姫、頭を下げて部屋から出る
土『…ったく、不思議な姫様だ。』
暗転
京の町
逃げるときに持ってきた着物を着て二人並んで歩く
梅『広いですね~!』
土『あんまり走らないで下さい!』
梅『だって面白いんですもの!』
はしゃいで走り出し数人の侍とぶつかる
梅『あ、ごめんなさい…。』
武1『あ?何だお前!』
武2『俺たちを誰だと思ってんだ?武士だぞ武士!』
梅雨姫の腕を掴んで怒鳴る
梅『は、離しなさい!』
武士たち、抵抗する梅雨姫にさらに密着する
横から土方が刀を抜いて梅雨姫を庇う
土『それぐらいにしてもらおうか。』
武士たち、土方の姿を見て驚く
武1『し、新選組の…土方…!』
武2『へっ!次はこうはいかねーからな!』
悔しそうに去っていく
土『大丈夫ですか?』
梅『は、はい。ありがとうございます…。』
二人、しばらく町を歩き回る
下手から護衛3が歩き、二人に気づく
護3『………』
そのまま上手へはける
二人は気づかず町を歩き回る
暗転
慶喜がイライラするなか護衛3が掛けて来る
護3『上様!只今城下にて梅雨姫様らしき人物が男と歩いておりました』
慶『何!?真か!…その男の身元はわかっておるのか?』
護3『恐らく新選組の土方と思われます。』
慶『新選組の土方…。…よし、早急に梅雨姫を連れ戻すのだ!』
護123『はっ!』
暗転
屯所内
縁側で星を眺めている梅雨姫
その隣に土方が腰掛ける
土『眠れないんですか?』
梅『土方殿。…城にいた頃、眠れない時にこっそり部屋を抜け出して庭に出て星空を見上げてたんです。』
土『…貴方らしい。』
梅『あら、てっきり風邪を引くから部屋に入れって言われるのかと思ってました。』
土『そう言いたいが、聞かないでしょう。』
梅『クスッ…ええ。聞く気はありません。だって綺麗なんですもの!』
土『…ええ。確かに綺麗だ。』
梅雨姫、土方の肩に頭を寄せる
土『…?』
梅『少しだけ、こうさせて下さい…。』
土方、何も言わず黙る
しばらくして眠る梅雨姫
土『…仕方ねぇな…』
そっと上着を脱いで梅雨姫にかける
朝、梅雨姫が目を覚ます
土『…起きましたか?』
梅『あ…すみません…!寝てしまったんですね…』
土『いえ。…さて、そろそろ広間に行きますよ。』
梅『は、はい。』
二人、立ち上がり広間に向かう
広間に隊士が集まる
屯所前に馬に乗った慶喜と護衛がやって来る
慶『新選組の土方はおらぬか!』
広間の隊士どよめく
藤堂、慌てて土方に詰め寄る
藤『土方さん!上様が梅雨姫を連れ戻しに参られたようです!』
梅『っ!』
土『やはり来られたか…。梅雨姫…』
梅『嫌!戻りたくない!戻れば二度と貴方に会えなくなる…そんなの……嫌…』
沈黙
土『…貴方がそこまで言うのなら俺は止める気はない。』
永『ちょ…待ってくださいよ土方さん!そんなことしたら俺たち上様を裏切ることになる!』
土『俺が説得に行く。』
梅『それはダメです!行けばその場で殺されます!私の問題ですから、私が行きます。』
土『……では一緒に行こう。』
梅『え…?』
また屯所の外から声が聞こえる
慶『土方はおらぬか!』
土『時間がない。行きましょう。』
土方、梅雨姫の手を引いて外に出る
護2『梅雨姫様!』
慶『お主が土方か。梅雨姫が世話になった。返してもらうぞ。』
梅『い…』
土『恐れながら申し上げます。こちら梅雨姫様は、上様の元へ帰りたくないと申しております。』
慶『何と…!それは真か梅雨姫!』
梅『はい。…私は城の生活が嫌になり、勝手ながら新選組の皆さんのお世話になりました。そして、想う方が出来ました。』
慶『その相手とは誰だ!』
梅『その方は普段は厳しく隊士を育て、時には優しく接して下さいました。そして強く、私を守って下さいました。…土方殿、私は貴方をお慕いしております。』
土『梅雨姫…!』
慶『何と…梅雨姫が土方を……』
梅『身分が違えど構いません。私は土方殿が好きです!』
慶喜、梅雨姫の強い眼差しに負けて踵を返す
慶『…好きにするが良い……。…土方!大切な娘だ。決して裏切らぬよう。』
慶喜、護衛123、下手へはける
土『はっ!』
梅『土方殿、ありがとうございます。』
土『いえ。…しかしさっきのは…』
梅『全て嘘偽りはございません。』
土方、梅雨姫を抱き締める
土『俺がこんな立場ではないことは承知の上だ。…だがもう抑えきれん…』
梅『…土方殿…?』
土『俺も貴方が好きだ。』
土方の体に腕を回す
梅『夢ではないのですね。』
土『ああ。夢じゃない…』
梅『嬉しい…』
暗転
屯所内広間
明るいムードが漂う
斎『まさか土方さんと梅雨姫が恋仲になるとは思いませんでした…』
井『私もだよ…』
原『人生何があるかわからないもんだな~…』
土『あんまり囃し立てるな!』
永『え~お似合いですよ~…なぁ平助!』
藤『…私に聞かないでくださいよ永倉さん…』
近『まぁまぁ。新選組一筋だったトシにも夫婦の相手が出来たんだからいいじゃないか!』
土『め、夫婦って…!俺らはまだ……』
梅『はいはい!そんなに照れてないで…さ、お茶ですよ…トシさん?』
土『…っ!つ、梅雨姫…!』
沖『やりますね土方さん!』
土『総司…お前まで…!』
山『いっそのことこのまま祝言を挙げたらどうですか?』
近『おっ!いいな!…よし、早速準備だ。』
隊士たち、立ち上がる
土『近藤さん!…ったく…』
土方、梅雨姫を横目で見る
楽しそうに笑っている梅雨姫
土方、溜息
土『…ま、良しとするか…』
隊士たち、祝言の準備を始める
幕
パチパチパチパチ………
名無しさん「お疲れ様!」
菊「疲れた~!」
汗を拭いながら水を飲む。
横では桃城と海堂が歪み合っていた。
桃「俺の方が演技上手かった!」
海「お前なんかより俺の方が上だ!」
慌てて止めにかかる大石だか、二人は聞かない。
名無しさん「もう!ほら、緞帳上がったから最後の礼しに行くよ!」
名無しさんの合図で、青学メンバーは拍手が止まない舞台へと再び出ていった。
翌日、テニス部の劇が想像以上に反響だったせいか、名無しさんを含めテニス部が何名か演劇部からの勧誘を受けていた。
END
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