忘れられない…【桃城夢】
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幼稚園の頃から幼馴染だった武と、ようやく付き合えた。
私から告白したけど、武は快くOKしてくれた。
そのときの私は凄く幸せで、毎日が楽しかった。
でも、それも長くは続かなかった。
『俺、中学から東京に行って、“青学”っていうテニスの名門校に入るんだ。』
そう告げられたとき、私はどんなに悲しんだだろう。
テニスが大好きな武にとって、青学という学校は憧れなのだ。
だから私は、悲しさを抑えて笑顔で応援した。
小学校も無事卒業し、武は東京に行ってしまった。
私は地元の鹿児島で、全寮制の中学に入学した。
それからしばらくは一日に一回、必ず連絡を取った。
武からかけてくれたり、私からかけたり…。
そんな日々が一年続いた。
私たちが二年に上がってすぐの頃、ある日突然武からの連絡が途絶えた。
私がいくらかけても全く出ない。
「…どうしたんだろう……」
ケータイに耳を当ててコールしても、聞こえてくるのは武の声ではなく、機械的な女性の声だけだった。
しばらくそれが続き、私は武に無性に会いたくなった。
でも寮を出られる夏休みまではまだまだ日にちがある。
それでも会いたくて会いたくて仕方なかった。
ある日また武に電話をかけた。
すると、ようやく武が電話に出た。
「もしもし?武!ようやく出てくれた!」
安堵の溜息を吐きながら喜びをかみ締める。
「あぁ…悪ぃ…」
でも、電話の向こう側の武は元気が無かった。
私はおかしいと思い、今まで不安に思っていたことを聞いてみた。
「………武?…私のこと、好き?」
真剣な声で言うけど、武から返ってきた答えは…
「…嫌いじゃない。」
低く響いた声でそう告げられた。
「…どういうこと?」
「俺、他に好きな人ができた…。」
この言葉に私はショックを受けた。
「そ、そう…。じゃあ…仕方ないね……。…じゃあ。」
涙を堪えながらそれだけ言って、静かに電源ボタンを押した。
本当はたくさん責めてやりたかったけど、これ以上武と話してたら、武を許せそうになかった。
それからの私は、気が狂いそうなほどに泣いた。
それから数ヶ月が経ち、私はクラスの男子に告白され、付き合うことになった。
少しでも武のことを忘れられるように…。
でも、どうしても武のことが忘れられなかった。
今の彼は好きだけど、武を超えるほどの幸せは感じられなかった。
ある日私たちは、夏休みを利用して映画館デートをした。
恋愛ものの映画だから、周りはカップルばかり。
その中に紛れて映画を見た。
すると、私の斜め前の席に、見たことのある人物がいた。
会えなくなって一年以上経つのに、私にはその人物が誰なのか一瞬でわかる。
―だって、今までずっと忘れられなかったひとだから!―
映画が終わり、彼氏はトイレに行き、私はトイレの前で待っていた。
するとさっきの人物も出てきて、その人物の隣にいた女の子がトイレに向かった。
「(…やっぱり武だ…。)」
会えたことが嬉しいはずなのに、心の中がモヤモヤする。
…話しかけたい…!
そんな気持ちに負け、彼女を待っている武に近づいた。
「……武?」
「…あ…名無しさん…!」
武はびっくりした様子で私を見つめる。
「鹿児島に帰ってきてたの?」
「あぁ。おばさんの家に泊まってんだ。」
いつもの元気な声で私の質問に答える。
「そう…。…さっきの彼女?」
トイレの方を見ながらそう聞く。
「あぁ。東京から一緒に来てんだ。」
笑顔になって弾んだ声で言う。
「そういやぁ…名無しさんも彼氏とか出来たのか?」
「う、うん。まぁ…」
少し曖昧に答えると、武は笑顔のままで言った。
「そっか!ま、お前も頑張れよ!応援してっから!…じゃあな~!」
そう言いながら手を振って武はトイレから出てきた彼女と去っていった。
しばらくその姿をずっと見つめていた。
すると彼氏が戻ってきた。
「お待たせ!飯食おうぜ!」
彼氏が時計を見ながら言う。
「……ごめん。私ちょっと疲れちゃったから先に寮に帰るね…。」
「え…」
「本当にごめん…。」
それだけ言って私は足早に帰った。
彼には本当に悪いと思ってる。
でも武の顔を見た後じゃ…まともに彼の顔が見れない…!
私にとっては忘れられない恋。
でも武にとっては人生のほんの一部分の恋でしかなかった。
そう思うと無性にやるせなくなり、涙が止まらなかった。
END