偶然の重なり【河村夢】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
偶然、学校の帰りに小学校の頃の友達に出会った。
電車を降りてバス停でバスを待っていると、可愛い制服を身に纏った名無しさんが、男の子を連れて私に話しかけた。
「名無しさん!」
いきなり後ろから肩を叩かれ、勢いよく後ろを振り返った。
「…名無しさん!?……うわ~久しぶり~!」
「久しぶり!元気だった?」
「うん!」
小学校を卒業して以来、一度も会うことがなかった私たち。
背丈や顔つきは大人っぽくなったけど、人懐っこい性格と笑顔は変わっていない。
ただ一つ変わったことは…
「ねぇ、その人は?」
私は名無しさんの隣にいる男の子のことを聞いた。
「ん?あぁ、この人は私の彼氏!」
「えっ!?彼氏!?」
名無しさんの言葉に驚いて目を丸くする。
「そう!彼から告白されたの!」
嬉しそうに腕を組んで言う。
「へ~!おめでとう!」
素直に喜んで名無しさんを突付く。
「ありがとう!名無しさんは?彼氏いないの?」
「うん。部活が忙しくて…」
そこまで言うと、名無しさんは私と被せた。
「え~!!いないの!?もうすぐ私たち卒業だよ!?青春しなきゃ!!名無しさんの学校も“青春”学園でしょ!?」
大きな声で叫ぶ名無しさんに私は苦笑する。
「学校の名前は関係ないでしょう……」
そんなことを言っているとバスが来た。
「あ、乗らなきゃ。」
定期を出してバスに近づく。
「私たちもそろそろ帰ろうか!…じゃあね、名無しさん!名無しさんも彼氏作らなきゃダメよ!」
「大きなお世話!」
それだけ言って私はバスに乗った。
バスが発車した後、名無しさんの言葉を思い出した。
“名無しさんも彼氏作らなきゃダメよ!”
…そりゃあ、気になってる人はいるけど……。
そう思いながら私の気になってる人、河村くんと初めて話したときのことを思い出す。
あの日私は、放課後に教室で掲示物を貼っているとき、他クラスの男の子が私に声をかけた。
「凄くたくさんあるね。手伝うよ。」
「え?…でも悪いよ…」
「いいって。女の子一人で大変だろう?」
そう言って彼は私の隣に立って手伝ってくれた。
「ありがとう。」
制服からでもわかるくらいの体格の良さに少しドキッとしながら作業をした。
全て作業が終わると私はもう一度お礼を言って、彼は帰っていった。
それから一週間後、私は家族でご飯を食べに行った。
下駄寿司らしく、すごくワクワクしながらお店に入った。
そこに…
「いらっしゃい!…あれ?」
カウンターに立っていたのは、あの時手伝ってくれた彼だった。
「あ…。」
私もそれに気づいて彼を見つめる。
「やぁ。あ、どうぞ座ってよ。」
「う、うん。」
彼に促されて家族でカウンターに座る。
「どうしてここにいるの?」
おしぼりで手を拭きながら聞く。
「あぁ、ここ、俺の家なんだ。のれんに『かわむらすし』って書いてあっただろう?俺の苗字も『河村』なんだ。」
笑顔でそう説明されて納得した。
「あ、そうなんだ!偶然だね!」
私たちのやり取りを家族は不思議そうに見ていた。
そこへ、奥のほうから男の人が一人出てきた。
「隆!何やってんだ!早くお客さんにお茶をお出ししろ!…すみません。うちのバカ息子が……。」
「親父…。あ、ごめん、すぐ淹れるよ。…好きなもの注文してよ。ご家族の方も遠慮なく言ってください。」
河村くんがお茶を淹れながら言う。
私は河村くんの淹れてくれたお茶を味わいながら飲んだ。
それからたくさん注文したり、河村くんと話をしたり、とても楽しい時間を過ごした。
そんなことを思い出していると、あっという間に下車駅に着いた。
バスを降りて歩きながらしばらく考える。
「…やっぱり好きなんだ……」
今まで自分の気持ちがハッキリしてなかったけど、さっき思い出してハッキリした。
「私も一歩進まなきゃ…。」
そう決意しながら歩いた。
次の日、私は河村くんのいるクラスを覗いた。
河村くんはすぐに私に気づいて私のところまで来てくれた。
「やぁ、おはよう名無しさんちゃん。どうしたんだい?」
「あ、あの……河村くん、ちょっといいかな?」
緊張しながら声を出す。
「うん、いいよ。どうしたの?」
階段の踊り場まで行き、そこで深呼吸をする。
「あ、あのね、私……河村くんのことが…好き、なの///////」
「え!?」
河村くんを見つめながら告げると、河村くんは顔を真っ赤にして驚いた表情をする。
「ほ、ホントかい?」
「うん//////」
恥ずかしくなって俯いていると、河村くんは嬉しそうに言った。
「良かった!じ、実は俺も、名無しさんちゃんのことが、好きだったんだ…///////」
「え?」
今度は私が驚いた表情になった。
「君と初めて話した時から気になってたんだけど、まさか店で会うなんて思ってなかったから嬉しくて…。」
照れながら言う河村くんに、私は驚きの表情から笑顔に変える。
「私も同じ。あの時偶然河村くんに出会って嬉しかった!」
笑顔で言う私を、いきなり河村くんが抱きしめた。
「本当に嬉しいよ!!」
「…河村くん…///////」
私たちはここが学校だということも忘れて、抱き合っていた。
あの時河村くんに出会わなかったら、あの時偶然名無しさんに出会わなかったら、私はこんな幸せは感じてなかったと思う。
偶然が偶然を呼んだ“奇跡”を、いつまでも大切にしようと心に誓った。
END