お化け屋敷【海堂夢】
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「ねぇ薫!週末のデート、ココ行かない!?」
そう言って俺の彼女の名無しさんは、チラシを俺に向けて指差した。
『恐怖体験屋敷 私を見つけて』
いかにもオドロオドロしい字でそう書いてあった。
「あ、あぁ…。いいぜ。」
名無しさんの無邪気な笑顔に負け、首を縦に振った。
俺の返事を聞いた途端、急に喜んだ表情になった。
俺と違ってホラー系が大好きで、名無しさんの家にはホラー映画がたくさんある。
「うわ~!楽しみ~!」
とか言いながら名無しさんはチラシを眺める。
「はぁ~……」
俺はそんな名無しさんを見ながら溜息を吐いた。
それからあっという間に週末になり、俺たちは会場に向かった。
入口でガイドの説明を受けて中に入るようになっている。
設定は、とある学校で行方不明になった少女の骨が一つ足りないらしい。
その骨を見つけ出し、墓に入れればクリアになる。
俺たちは手を繋いでゆっくりと中へ足を踏み入れた。
ギシ…ギシ…
俺たちが歩くたびに床がギシギシと軋む。
「何が出てくるんだろう?」
名無しさんはワクワクしながら先へ進む。
すると横の方から水の音が聞こえてきた。
「っ………!」
「あはは!便器から顔が出てきた~!」
普通の奴なら怖がるのに、名無しさんは全く怖がっていない。
俺は名無しさんに気づかれないようになるべく悲鳴はあげないようにしている。
……ただの人形じゃねぇか………
そう自分に暗示をかけながらゆっくりと歩いていく。
すると今度は職員室のドアから覗いている先生らしき人の人形が見えた。
顔は血だらけで目が取れかけている。
「うわ……怖いを通り越してグロイよ……。最近こういうの多いんだよな~。」
「あ、あぁ……そうだな………」
人形をあまり見ないようにしてまた先へ進む。
しばらく驚かされながら歩いていくと、ついに少女の骨が見つかった。
「あっ!骨あった!!」
無邪気にはしゃいで骨を手に取る名無しさんの姿を後ろから見る。
名無しさんは骨を持ってまた先に進む。
「お、おい!名無しさん、離れんなよ!」
いかにも名無しさんを心配して言ったように聞こえるけど、本当は俺が一番離れたくなかった。
再び手を繋いで歩いていくと、ついに出口までたどり着いた。
「あ、もう終わっちゃった…」
名無しさんが呟いたと同時に出口で待機していたガイドが俺たちに話しかけた。
「お疲れ様でした。最後に少女の骨をこのお墓に入れていただければ、見事クリアとなります。」
ガイドの明るい声に少し安心する。
「わかりました!」
名無しさんはお墓に骨を入れた。
これでやっと終わる……そう思ったのも束の間……
「うわっ!何か出てきた!」
名無しさんのその声にぎょっとする。
骨を入れて手を引こうとする名無しさんの腕を、白い人間の手が掴んでいた。
するとその手の主はそっと…
「ありがとう」
と言って名無しさんの腕を放した。
だがそれより怖かったのは……
「どういたしまして!」
“ありがとう”と言った相手に名無しさんは怖がるどころか、笑顔でそう返した。
俺もガイドもポカーンとした。
「さ、行こう!ありがとうございました~!」
名無しさんは俺の手を引いてお化け屋敷から去った。
「あ~面白かった!」
スッキリした顔で笑う名無しさんを恐ろしく思った。
すると名無しさんが少し声のトーンを落として言い出した。
「ありがとう、薫。」
「は?」
名無しさんの言葉の意味がわからず、名無しさんを見た。
「薫、本当は怖いのダメなのに、私に付き合ってくれて…」
申し訳なさそうな表情で俺を見返す。
「いや……俺は別に………」
「ステキ!!私、薫のこと惚れ直しちゃった!//////」
俺に被せてそんなことを言ってきた。
「なっ…!そんなこと外で言うな!!////////」
俺も顔を真っ赤にしてそう叫ぶ。
「何で?本当のことなのに~」
「何でもだ!!…ホラ、行くぞ!//////」
俺は少し速歩きで歩いた。
「あっ!ちょっと待ってよ~!」
俺の手に引かれて名無しさんは歩き出した。
END