大切さ【不二夢】
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連続ドラマの最終回の放送日、私は家で家族とテレビを見ていた。
テレビから見える私の姿、聞こえる声。
もう慣れたというのに、やっぱり家族と一緒というのは何だか気恥ずかしい。
『ゆい…』
『純…』
チュ…
ガチャ…
『おっと悪い!邪魔したな…!』
『お兄ちゃん…!//////』
『あ…どうも…//////』
『どうぞごゆっくり!』
『もぉ~…。…ごめんね…。』
『いや、いいよ…/////』
そこまで見たとき、お父さんが苦笑して言った。
「ドラマとはいえ、娘のこういうシーンを見るのは複雑だな…。」
「そうね~。」
その言葉に私まで顔が熱くなる。
私の演じるゆいの家でのキスシーン。
撮影中、何度周助が頭の中に浮かんだだろうか。
「(周助も…今見てるのかな?//////)」
そう思いながらテレビをぼんやりと見つめた。
次の日、バラエティ番組の収録が夜に終わり、スタジオを出て帰ろうとした。
すると私の目の前で車が止まり、中から男の人の声が聞こえた。
「名無しさんちゃん、乗っていきなよ。夜一人は危ないよ!」
声の主は、ドラマで共演した私のお兄さん役の宮内さんだった。
「宮内さん!お疲れ様です。いいんですか?」
「大丈夫!さ、乗って!」
宮内さんに促され、何の躊躇いも無く助手席に乗った。
翌朝、朝ごはんを食べていると家の電話が鳴った。
しばらくして…
「名無しさん~マネージャーさんから電話よ~。」
「え?こんな朝早くに?」
不思議に思いながら出てみると、ビックリした声音のマネージャーが一気にまくし立てた。
「名無しさんちゃん!!雑誌で名無しさんちゃんと宮内隼人さんとの報道が書かれてるんだけど何があったの!?」
「何これ!?」
私より先にお母さんがビックリした声を上げた。
声の方を向くと、お母さんがリモコンを持ったままテレビの前で固まっていた。
電話をしていることも忘れ、私もテレビにかじりついた。
そこには確かに、私と宮内さんの名前と、昨日の車での一部分の写真が写っていた。
「ホントだ…。」
『宮内さん、中学生相手ですからね~…。』
ニュースキャスターがパネルを見ながら言う。
私は中学生だからそんなに報道されてなかったけど、相手の宮内さんは人気の俳優さんだ。
騒がれるのもおかしくない。
とりあえず電話を切ってまたテレビを見る。
「どういうこと名無しさん…。嘘よね?」
お母さんが心配そうに聞く。
これ以上心配させないようになるべく笑顔で返した。
「当たり前じゃない!…昨日は夜遅くなったから、宮内さんが家まで送ってくれただけ。」
「それならいいが…。」
お父さんもテレビを見ながら呟いた。
とりあえず学校に行くために準備をした。
学校に着いてからも案の定、朝の報道のことで話は持ちきりだった。
「名無しさんちゃん!宮内隼人と付き合ってんの!?」
「朝の報道見てビックリしたよ~!」
クラスメイトたちが一気に詰め寄る。
「ち、違うよ…!あれはたまたま宮内さんが家まで送ってくれただけだから心配しないで…。」
席に着きながら言う。
私の視線は自然と周助に向く。
周助は朝練を終えたばかりなのか、テニスバッグを置きながら席に着いていた。
周りが騒いでいるのにも関わらず、周助は落ち着いて本を読んでいた。
「(怒ってるのかな…。)」
周助を見つめながらそう思っていた。
HRが終わり、恐る恐る周助の席に行った。
「し、周助…?あの…報道のことだけど…」
「嘘なんでしょ?」
「え?」
私に被せるようにそう言う。
「だってあの写真、どう見たって普通の光景じゃないか。なのに何の根拠もないこと書いて儲けようとしてるなんて…最低だよね。」
…周助のオーラが少し黒く見える…。
「僕は最初から報道や記事なんか信じてないから安心して。」
ニコッと笑って私を見上げた。
「あ…う、うん///////」
私はこのとき改めて周助を大切に思った。
テレビや雑誌で報道されて騒がれても、周助は私を信じてくれる。
何か…愛されてるな~…。
そんなことを思いながら、今日一日を過ごした。
END