二人きりの補修【榊夢】
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『ピ~ピピ~ピ~ピピ~ピ、ピ、ピピピ~♪』
音楽のリコーダーの授業。
本来ならこんな風に滑らかに鳴るはずだ。
だが名無しさんは…
『ピ…ピピ…フィ~…ピピ~ピ、ピ…………ピ~~~~~~♪』
指使いがわからず、たどたどしく鳴っていた。
みんなが出来ているのに自分だけ時々違う音を出してしまうというのはかなり恥ずかしいものだ。
歌ならともかく、リコーダーの授業が苦手な名無しさんにとって、この時間は苦痛でしかない。
だが一つ、名無しさんには嬉しいことがある。
それは、音楽教師の榊に会えること。
榊に片想いしている名無しさんは、どんなに苦手なリコーダーでも榊に会えればそれだけで嬉しかった。
キーンコーンカーンコーン…
授業終了のチャイムが鳴り、みんなはリコーダーを片付ける。
「次の時間、リコーダーのテストをする。しっかり練習しておいてくれ。では、行ってよし。」
榊の合図でみんな一斉に戻ろうとすると、後ろから榊に呼び止められた。
「名無しさん。」
「は、はい!」
びっくりした気持ちに少し嬉しい気持ちを紛らわせて振り返った。
「名無しさん、このままではリコーダーのテストは失格だ。放課後、リコーダーを持って音楽室に来なさい。」
「は、はい!!わかりました。」
それだけ言って音楽室を後にした。
「(うわ…榊先生と補習か…)///////」
そう思いながら放課後を待った。
放課後になり、名無しさんはリコーダーとカバンを持って音楽室に入った。
「失礼しま~す…。」
「入れ。…ではさっそく練習をする。名無しさん、ここから吹いてみろ。」
「は、はい!」
プリントとリコーダーを出して指定された所を吹く。
「ピ~ピ……ピ…ピ~ピ………ピ~……………」
やはり何度やっても同じ調子だ。
「指が違う。“ソ”の指は…ここだ。」
そう言いながら榊は名無しさんの指に触れ、指を移動させる。
「はい…////////」
心臓が破裂しそうなほど鳴り響く。
そんな気持ちに耐えながら補習を続けた。
「よし、大分良くなった。後は自主練で上達するだろう。」
「はい!ありがとうございました!///////」
長いようで短い補習が終わり、辺りはもう暗くなり始めていた。
「遅くまで残らせてしまったな。私が車で家まで送ろう。」
「え!?そんな…悪いですよ!?//////」
突然のことに驚く名無しさん。
だが女子が一人で帰るのは危ないということで、乗せてもらうことにした。
榊の車の助手席に乗り、シートベルトをする。
高級車だけあって、中も普通車よりどことなく広い。
「えっと…道は…」
「大丈夫だ。生徒の家への道は全て把握してある。」
名無しさんの言葉を遮って、榊はサングラスをかけて車を発車させた。
ドキドキして何も喋れない。
すると榊が話しかけた。
「今日はよく頑張ったな。この調子でテスト合格を目指せ。」
「はい!」
少しだけ自信がつき、名無しさんは笑顔で頷いた。
しばらくすると名無しさんの家まで着いた。
「あの…わざわざありがとうございました!////////」
車を降りてペコリと頭を下げると、めったに笑わない榊の頬が少しだけ緩んだ。
そのまま榊は車を走らせた。
名無しさんのいなくなった車の中で、榊はポツリと呟いた。
「私としたことが…生徒の笑顔に動揺するとは…/////////」
名無しさんの笑顔を思い出しながら、もうしっかり暗くなった夜道を車で走った。
END