近くて遠い【不二夢】
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「あ、もうこんな時間…仕事に行かなくちゃ。」
そう言って午前の授業だけ受けて、すぐに帰っていった名無しさんの姿を横目で見る。
「名無しさんちゃん、頑張ってね~!」
「今日のドラマ、絶対見るからね~!」
クラスの男女が去っていく名無しさんに言う。
名無しさんは僕の幼なじみで女優。
小学校4年生の時にスカウトされて、芸能界入りした。
それから名無しさんはすぐに有名になった。
今までいつも一緒にいたのに、急に名無しさんは遠い存在になった。
名無しさんが有名になることで、誰もが名無しさんと友達になりたがる。
僕がずっと君を好きでいたのに、君はいろんな人から好かれてるんだね…?
僕の気持ちが他の人たちと違うってこと…
―君に教えてあげるよ―
名無しさんがオフの日。
久しぶりに名無しさんの家に来ていた。
「最近、忙しそうだね。」
さりげなく聞くと、名無しさんはすぐに答えた。
「うん。ドラマの最終回が近くて、テレビの出演が増えたの。」
紅茶とケーキを出しながら言う。
「へ~…。…あんまり無理しちゃだめだよ。」
「うん。ありがとう。…あ、あのね、周助…。」
少し恥ずかしそうに名無しさんが言った。
「ん?どうしたの?」
名無しさんの様子を不思議に思って聞いた。
「私ね…最終回で…キスシーンがあるの…//////」
「え…?」
口ごもりながら確かに名無しさんが言った。
「…私、キス、したことないの…。最初は断ったんだけど、どうしてもって言われて…。」
赤面して顔を俯かせる。
「…それってつまり、ファーストキスってことだよね?」
あくまでも冷静に名無しさんに聞いた。
「う、うん…。」
名無しさんの返事を聞いて、僕は心に決めた。
「…名無しさん。」
「ん?何………っ!?//////」
名無しさんが僕を見ると同時に、僕は名無しさんにキスをした。
「し、周助…!?//////」
目をパチパチさせながら驚く。
「名無しさんのファーストキスは誰にも渡さない…。たとえ役でもね…。」
独占欲にまみれた声で言うと、名無しさんは顔を真っ赤にさせる。
「僕は名無しさんにとって特別な存在になりたい。…僕は君のファンとは違うってことを伝えたい。」
真剣な眼差しで言う僕に、信じられないと言うような目で見つめる。
「周助…?それって…」
「そう。僕は名無しさんが好き。…名無しさんが芸能界に入って、みんなから好かれるようになるずっと前から…。」
「……本当に?」
目に涙を溜めながら確認する。
「うん。」
「…ありがとう…!」
僕が頷くと、名無しさんは僕に勢い良く抱きついた。
「私も、周助のことがずっと前から好きだった…!」
小さな声がだんだん涙声になっていく。
「…でも、仕事が忙しくなってなかなか二人きりになれないし、高等部の推薦準備で二人で会える日が少なくなるし…私、すごく焦って…!」
名無しさんがそこまで言ったとき、名無しさんの震える体をギュッと抱きしめた。
「でも、もう焦らなくても大丈夫だよね?…僕はずっと名無しさんの側にいるから。」
「うん…!ありがとう。」
安心したように呟く名無しさんの頭を優しく撫でた。
名無しさんはいつの間にか、僕の腕の中で小さな寝息を立てながら眠っていた。
END
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