with you【桃城夢】
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昨日、幼なじみの桃と喧嘩した。
理由は…ほんの些細なこと。
それなのに私は桃に…
『桃なんて大っ嫌い!!』
なんて言ってしまった。
言っている時は何も思わなかったけど、後々少し後悔した。
次の日の放課後、そんな思いも忘れた頃…
「名無しさん~!!ニュースニュース!!」
私一人だった女子テニス部の部室に、慌ただしく親友の名無しさんが入ってきた。
「ん?どうしたの?そんなに慌てて…」
着替えながら名無しさんの方を見る。
「桃城くんに彼女が出来たんだってーー!!!」
…ドキッ――
「え…?」
驚きとショックの混ざった小さな声。
それと同時に鼓動がトクンと鳴り響く。
「名無しさん、桃城くんのことが好きなんでしょ!?…このまま桃城くんを取られてもいいの!?」
大きな声で必死に言う名無しさんに少し呆れながら溜息をつく。
「言ったでしょう?私はもう桃のことは好きじゃないの。アイツが誰と付き合おうと私には関係ないの!…さぁ、早く帰ろう。」
冷たく言い放ち、鞄を持って立ち上がった。
「ちょ…ちょっと待ってよ~!!」
名無しさんは慌てて鞄を持って私を追いかけた。
名無しさんと別れ、一人帰路を歩いていた。
何度も何度も名無しさんの言葉が頭の中をよぎる。
“桃城くんに彼女が出来たんだってーー!!!”
私には関係のないことなのに、頭からなかなか離れない。
出てくるのは名無しさんの一言と、小学校の頃桃と一緒に過ごしていた日々。
『桃ちゃん!あーそーぼー!』
『おう!』
『桃ちゃん家にお泊まり楽しいな~♪』
『そうだな!今日は母さんたちに内緒で夜更かししようぜ!』
『うん!』
思い出せば思い出すほどたくさんの思い出が出てくる。
「…考えたら私、いつも桃と一緒だったなぁ…。」
考えているうちに、だんだんと心にポッカリ穴が空いた気がした。
「…桃……。」
今までずっと一緒だった桃が、自分から離れていくようで、妙に悲しい気持ちになる。
―私、まだ桃のことが好きなんだ―
そんな思いが私の心の中に浮かんできた。
その時私の足が自然と帰路とは違う方向へ向き、桃の家へと向かっていた。
今頃桃の家には女の子がいて、二人でイチャイチャしているんだろうか?
私のことなんか忘れて、仲良く過ごしているんだろうか?
そんな思いが私を焦らせる。
桃の家に着くなり、焦りの所為かインターホンを何度も押した。
4~5回ほど鳴らした後、鬱陶しそうな顔で桃が出てきた。
「誰だよ…え…名無しさん!?どうしたんだよ…。」
鬱陶しそうな顔はすぐに驚きの顔になった。
「桃…!」
「おわっ!な、何だ!?」
桃の姿を見るなり私は桃に抱きついた。
家に女の子が居たとしても、今の私にはそんな事考える余裕はない。
「私を嫌いにならないで!…私から離れていかないで!」
私の心の中を渦巻いていた感情を思いっきりぶつける。
「ど…どうしたんだよ名無しさん。何のことだよ?」
抱きつく私の肩を優しくつかんで宥めてくれる。
「桃に彼女が出来たって聞いて…私、桃にあんな酷い事言っちゃって…どうしたらいいのかわからなくて…!」
涙が次から次へと出てくる。
でも桃から返ってきた返事は、想像してなかった内容だった。
「か、彼女!?…んなわけねーだろ!?」
桃の素っ頓狂な声を聞いて、思わず顔を上げる。
「え…だって名無しさんが…」
目に涙を溜めて上目遣いで桃を見る。
「名無しさん、俺が付き合いてぇ相手は…名無しさんしかいねぇよ。」
真剣な眼差しで見つめられ、ドキッとしてしまう。
「好きだぜ。名無しさん。」
優しく抱きしめられ、私の体から力が抜けていく。
桃に彼女はいないこと…
優しく抱きしめられていること…
そして…桃が私の事を好きだということ…
信じられない事実が多すぎて頭がついていかない。
でも桃の目を見ると、本当のことなんだと思ってしまう。
「えへへ…ありがとう/////」
桃の気持ちが嬉しくて、笑顔になる。
でもそんな気持ちの中に一つの疑問が浮かんだ。
「あれ?でもどうして名無しさん、桃に彼女が出来たなんて言ったんだろう?」
そう呟く私に桃が言った。
「多分そいつ、名無しさんに気ぃ使ったんじゃねぇか?」
桃の答えに少し驚いた。
「え?」
「ま、本当のことは友達に聞けば早ぇよ!」
意味ありげにニヤッと笑う桃をポカンと見る。
「…そういえばまだ名無しさんの返事、聞いてなかったよな?…どうなんだよ。」
急に低い声で囁かれ、顔が赤くなる。
「え…あ、えっと…私も、桃のこと…大好き////」
恥ずかしくて俯くと、また桃が抱きしめてくれた。
「サンキュー!」
桃の大きな体で抱きしめられ、私の小さな体が余計に小さくなる。
でも私の心の中は、体に収まらないくらいの嬉しさが溢れていた。
END
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