蛍【不二夢】
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「父の転勤で千葉から来ました。名無しさん名無しさんです。」
青学の3年6組に転校してきた名無しさんが礼儀正しくお辞儀をした。
そして、先生に指示された席へ行った。
その時、クラスの殆どの男子が名無しさんを目で追っていた。
その日の放課後、名無しさんは4人の男子に呼ばれ、4人全員が名無しさんに告白をした。
だが、名無しさんは全て断ってしまった。
その一ヶ月後、名無しさんと同じクラスの不二が名無しさんを呼び出した。
「…何?不二くん、用事って…。」
名無しさんはそう聞いたが、不二の考えはもうわかりきっている。
「僕、一ヶ月君を見てきたけど、君は本当に素敵な心を持っているね。」
笑顔でそう言われ、名無しさんは内心びっくりした。
「あ、ありがとう/////」
少し意外だったのか、顔を赤くして俯いた。
「クスッ…。君は可愛いね…。……僕、そんな名無しさんさんが好きになっちゃった。」
不意にそう言われ、目を瞬かせるが、これも予想していたこと。
「…気持ちは嬉しいんだけど、私しばらく恋愛するつもりはないの。ごめんね。」
名無しさんにとってはもう言い慣れている台詞。
「どうして?」
これも聞かれ慣れている。
「…ちょっとした事情でね!…あ、私もう帰らなくちゃ…。本当にごめんね。じゃあまた明日ね。」
それだけ言って、名無しさんは鞄を持って去っていった。
次の日の放課後、名無しさんは3人の男子に告白された。
その中に、不二もいた。
「ごめんね…。でもどうしても諦めきれないんだ…。」
申し訳なさそうに、でも必死に再度告白する。
「不二くんがそこまで私を想ってくれてるのは嬉しいけど、私の気持ちは変わらないから。」
そう言い残し、名無しさんは帰っていった。
それからというもの、不二はずっと名無しさんに告白し続けた。
嘘偽り無い正直な気持ちを、名無しさんにストレートにぶつけている。
今までにも一度断っても、再び告白してくる人はいたが、何故か不二のことだけは、いつまでも心に残っている。
名無しさんは半ば呆れていたが、同時に少しだけ嬉しい気持ちにもなった。
だがその気持ちが、名無しさんの心を押しつぶしていた。
「名無しさんさん、やっぱりダ……」
「もういい加減にしてよ!!!」
「…!」
ある日の放課後、不二がまた名無しさんに想いを告げていた。
しかし、とうとう耐えきれなくなった名無しさんは、つい大声を叫んでしまった。
「もうあんな思いしたくないの!!…だからこれ以上私の心をかき乱さないで!!」
自分の正直な思いを叫んだ後、どうしようもない後悔が押し寄せてきた。
「…過去に、なにかあったの?」
不二が優しく言いながら名無しさんの顔を覗き込んだ。
「…私、千葉に来る前に鹿児島で彼氏がいたの。…でも付き合って僅か二ヶ月で千葉に引っ越すことになって…。」
不二は黙って名無しさんの話を真剣に聞いている。
「その後お父さんの用事で、3日だけ鹿児島に戻ることができたの。…それで、彼に会いに行ったら……彼、他の女の子と楽しそうに歩いてて……キスまでしてた…。」
名無しさんの声が段々震えていく。
「私それ見たとき、もう恋愛なんてしないって決めたの。どうせすぐ引っ越しちゃうなら、恋しない方がずっと楽だって思うようになったの。」
声の震えが怒りにも似た感情を醸し出す。
「そっか…。そんな過去があったんだ。」
不二が名無しさんの頭を撫でながら言った。
「あ…//////」
頭を撫でられたことで、名無しさんの顔が赤らんできた。
「名無しさんさん…いや、名無しさん。僕を信用してみてくれないかな?」
「信用…?」
名無しさんは不二の顔を見ながら首を傾げる。
「名無しさんがまた遠くへ転校しても、僕は君を裏切るようなことは絶対にしない…。」
名無しさんの目を真っ直ぐ見つめ、真剣な表情で言う。
「……本当に、信用していいの…?」
「うん。」
笑顔で不二が頷くと、名無しさんは不二に抱きついた。
「…ありがとう。不二くん…!」
不二は名無しさんを抱き留め、意地悪く言った。
「もう“不二くん”じゃなくて、“周助”…でしょ?」
クスッと笑いながら名無しさんに言う。
「//////…し、周助…ありがとう。」
名無しさんは照れながら、小さな声で囁いた。
―蛍は恋をして、僅か一週間で離ればなれになる―
名無しさんも、そんな蛍のような恋をたくさんしてきた。
でも、もう蛍のような恋ではなく、普通の恋愛ができるのだった。
END
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