旅行先での恋【海堂夢】
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海堂たち2年生が初めて修学旅行で広島に訪れた。
東京から新幹線に乗って広島まで行き、たった今広島駅に着いたところだ。
駅の出入り口付近の広いスペースに生徒がクラスごとにズラリと並び、これからの予定を先生が大きな声で説明する。
早く街を見て周りたいのか、みんなの体はソワソワして落ち着きがない。
通勤ラッシュの時間帯で、駅からは会社員や学生が早歩きで出てくる。
ふと海堂が出入り口の方を見ると、そこには慌しく駆け抜ける会社員に紛れて数人の女子高生が楽しそうな話をしながら出てきた。
「昨日のテレビめっちゃ面白かったんじゃけぇ!」(昨日のテレビすごく面白かったんだからぁ!)
「ええ~!見れんかった~!!」(ええ~!見れなかった~!!)
朝だというのにみんな元気に話している。
「…………」
海堂はその女子高生の中の一人をずっと見つめていた。
「名無しさんの好きな芸能人出とったよ~!」(名無しさんの好きな芸能人出てたよ~!)
「うっそ~!!なんで教えてくれんかったん!?」(うっそ~!!なんで教えてくれなかったの!?)
名無しさんと呼ばれた女の子は、テレビが見られなかったことにショックを受ける。
「名無しさん……」
海堂は過ぎ去っていく名無しさんを目で追いながらそう一言呟いた。
それから海堂たちは場所を移動させ、いよいよ広島巡りだ。
世界遺産やその周囲のものを見て周り、お昼には広島名物のお好み焼きを食べた。
「このお好み焼きうめぇ~!…なぁマムシ!」
海堂の隣の席に座り桃城が言い出した。
「何でテメェがここにいるんだ。クラス違ぇだろ!」
ギロリと睨んで海堂がドスの効いた声で言う。
「いいじゃねぇかよ別に!……んだよマムシ…お前全然食ってねぇじゃねぇか~!」
桃城が海堂のお皿を覗く。
「あんまり欲しくねぇんだよ…」
「んじゃあ俺がも~らい!」
「っ!桃城テメェ……」
海堂が止めるより早く桃城はお好み焼きを口に運ぶ。
「ったく……」
海堂は溜息を吐いてさっき駅で見かけた女子高生、名無しさんのことを思い出す。
すると先生が集合の合図をかけた。
海堂はすぐに席から立ち上がり、先生のところへ集合した。
午後も広島の街を歩き、一日目の行動は終了となった。
朝先生の話を聞いた駅の前の広場にもう一度集まり、夜のことの説明を受けた。
すると海堂たちの横を、朝見かけた女子高生たちが通り過ぎようとしていた。
「確かこの集団朝もおったよね?」(確かこの集団朝もいたよね?)
「修学旅行とかじゃないん?」(修学旅行とかじゃないの?)
「あ、なるほどね!」
名無しさんたちは青学の生徒たちを少し見る。
海堂もつられてそっちを見る。
すると海堂は名無しさんと目が合ってしまった。
「っ……!///////」
すぐに目を反らし、必死に先生の話を聞こうとした。
そして名無しさんたちは建物の中に入っていった。
次の日は自由行動だった。
班で固まって動くも人もいれば、友達同士やカップル同士が一緒に行動している人もいる。
海堂は桃城に誘われたが、一人で歩くと言って断った。
市内の街を一人でブラブラ歩いてみる。
土曜日ということもあってアーケード街は人で溢れ返っている。
すると海堂は急に誰かに後ろから声をかけられた。
「ハンカチ落ちましたよ?」
「あ?……っ!」
振り返ってみると、そこには昨日見かけた名無しさんがハンカチを差し出して立っていた。
「……あ…ありがとうございます………//////」
俯いて名無しさんからハンカチを受け取る。
「…もしかして、昨日の修学旅行生?」
「…え?」
走って去ろうとする海堂に名無しさんは聞く。
「昨日の夕方目が合ったよね?」
笑顔で言う名無しさんに、海堂は驚いた顔で見る。
「あ…えっと……」
うろたえる海堂に名無しさんはクスッと笑って言う。
「自由行動なん?だったら広島の街案内するよ?」(自由行動なの?だったら広島の街案内するよ?)
「えっ!?//////」
突然のことに海堂はさらに驚く。
「ここ、ごちゃごちゃしとるけぇ迷うじゃろ?」(ここ、ごちゃごちゃしてるから迷うでしょう?)
「ま、まぁ……」
「私も暇じゃけぇ案内さして!」(私も暇だから案内させて!)
笑いながら名無しさんは海堂に言う。
「い、いいんスか?」
「全然いいよ!」
海堂の問いに名無しさんは即答で答えた。
それから海堂は名無しさんにいろんなところを案内された。
「海堂くん、東京から来たんじゃ!」(海堂くん、東京から来たんだ!)
歩きながら名無しさんが言う。
「は、はい。名無しさんさんは修学旅行どこ行ったんスか?」
「東京!楽しかったよ~!」
思い返すように名無しさんがキラキラした目をする。
すると海堂はふと時計を見る。
時刻はあと30分で集合時間になる頃だった。
それに気づいた名無しさんは海堂に聞いた。
「あ、もう時間?どこに集合?」
「昨日と同じところっス…」
「じゃあそこまで送る!行こう!」
名無しさんは海堂の手を引いて駅の方へ歩いていく。
海堂は複雑な気持ちで名無しさんについて行った。
駅に着き、とうとう別れの時が来た。
「なんかごめんね…無理やり案内して…」
名無しさんが申し訳なさそうに言う。
「い、いえ!全然いいっス!!」
必死に首を横に振る海堂に、名無しさんは笑顔を見せて言った。
「ありがとう。…じゃあ、またね!」
笑顔のまま名無しさんが海堂に手を振る。
「は、はい…ありがとうございました……」
少し名残り惜しそうに海堂は名無しさんに手を振り返し、集合場所に向かった。
「………………」
海堂が振り返ると、名無しさんは電車の改札口へ歩いて行っているところだった。
海堂は名無しさんの後姿をずっと見つめていた。
END
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