Bitter Sweet Chocolate【桃城夢】
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今日は2月14日のバレンタインデー。
彼氏の武にチョコを渡すため、昨日一生懸命作った。
放課後、部活に行こうとしていた武を呼び止めた。
「武!今日、部活が終わったら教室で待ってて!」
「ああ。いいぜ!」
いつものように二カッと笑う武に、私も二コッと笑い返した。
部活が終わった私はチョコの入った袋を持って廊下を走っていた。
「もう…何で今日に限って部活遅くなるのよ~…。」
そんなことを行っている間に、教室の前についた。
教室に入ろうとすると、教室の中から声が聞こえた。
「…あ、あの…桃城君…これ、一生懸命作ったの…受け取って!!」
ちょうど女の子が武にチョコを渡す所だった。
夕日で逆光になっていて武の表情はわからなかった。
これ以上見ていられなくて、その場を走り去った。
自然と涙が出てきた。
家に帰り、自分の部屋のベッドに倒れた。
「何よ!武のバカ!!うわあぁぁん!!」
思い出せば思い出す程悲しみがこみ上げて来た。
それから30分くらいたった時、ケータイが鳴った。
…きっと武だ…。
そう思い、一瞬出ることにためらったが、仕方なく出ることにした。
「……はい…。」
自分でも信じられない位の低い声に少し驚いた。
「あ!名無しさん?お前だよな?俺がチョコもらう時に教室の外にいたのは…。…あれ、全然違ぇか…」
「何よ!!他の人からチョコもらわないって約束したじゃない!!嘘つき!!!」
武の言葉を遮って思いっきり怒鳴った。
「あ、あれは…いきなり差し出されただけだよ…ちゃんと返したぜ?」
「言い訳なんか聞きたくない!!」
ブチッ!
それだけ言って電話を切った。
また涙が出てきた。
顔が涙でベトベトになったので、洗面所で顔を洗うことにした。
顔を洗っていると、フと鏡を見た。
鏡には最低な自分…。
よく考えれば、私が一方的に怒っているだけだった。
根拠もないのにチョコをもらったなどと言ってしまった。
「…嘘つきなのは…私じゃない…。」
私は初めてさっき言った事を後悔した。
「…謝らなきゃ…武に謝らなきゃ…。」
そう思い部屋に戻ってケータイを取ろうとしたその時…。
プルルルルル…
武からの電話が鳴った。
「…もしもし?」
「名無しさん!今すぐ外に出て玄関の前で待ってろよ?いいな?」
「え?あっ…」
それだけ言って電話は切れてしまった。
電話の声の武は、少し息が切れていた。
でも謝るのにいいチャンスかもしれない。
私は玄関に行き靴を履いていると、フとチョコの入った袋が目に入った。
「…あ…そっか…。チョコだけ投げて部屋に行っちゃったんだ…。」
さっきのことを思い出し、チョコの袋を背中で隠し、外に出た。
2~3分たった時、武が自転車で、しかも急ぎながらこっちに向かっていた。
「ふぅ~…やっとついたぜ!」
まだ寒いと言うのに、武の額には汗がたれていた。
「…どうしたのよ…急に…。」
怒ってないのにどうしてもそんな口調になってしまう。
「…悪かった!!」
急に武が謝り出した。
「俺がキッパリ断れば名無しさんを泣かせないで済んだ…本当に悪かった!」
「…私こそごめんなさい!根拠もないのに嘘つき呼ばわりしちゃって…。」
私も謝った。
「いや…名無しさんは悪くねぇよ!…それより、今日、バレンタインだろ?」
急に嬉しそうな口調に変わった武。
「え?あ、うん…。……はい、これ…チョコ…。」
少し照れくさそうにチョコを渡した。
「おお!!サンキューな!名無しさん!!」
チョコをもらった武は、まるで子供のように嬉しそうだった。
私にはそれが微笑ましく見えた。
さっきのケンカが嘘のよう…。
「名無しさん!!あ~~ん…」
「え?…んっ…!」
急に武が私の口の中にチョコを一個入れた。
そして、武もチョコを口の中へ入れた。
それは最初はちょっぴり苦くて、でも最後は甘いチョコレートだった。
―まるで私たちのように―
END
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