隙と好き【鳳宍】
彼らを応援するファンの間でよく言われていること…
自分達の入る隙がない
見せつけ
尊い
最早その応援はテニスプレイヤーとしての応援か、はたまた二人の関係の応援か……
ただダブルスパートナーというだけの関係の域を超しているその二人とは………
「宍戸さん!大好き!」
周りに誰もいなくなれば鳳はお構い無く宍戸に愛を伝える。
「ちょ…!誰か聞いてたらどうするんだ!」
「誰もいませんよ。それに、俺たちの関係は周りが予想してる通りなんですから。」
鳳の真っ直ぐな気持ちを目の前にしてしまえば、お人好しの宍戸は怒るに怒れない。
口ではそう言うが、宍戸も鳳が大好きだし、愛を伝えられて嬉しいのも事実。
「ただのダブルスパートナーじゃないことは事実だけどよぉ…。それを公にするのも違ぇだろ…」
言いながら鳳の体を小突く。
「今はそういうのもオープンにする時代ですよ?俺、本当に宍戸さんのこと大好きなのに…」
「そ、そういうことを軽々しく言うんじゃねぇ…!//////」
顔を真っ赤にして今度は力強く鳳を叩く。
「いって…!でも事実なんですもん!」
「“もん”じゃねぇよ…!ほら!とっとと帰るぞ!」
ズンズンと進んでいく宍戸を、鳳は叩かれた背中を擦りながら追い掛けた。
二人のこの関係はいつからだろうか
恐らく、いつからとかではなく、ごく自然とこうなったんだろう
シングルスプレイヤーだった宍戸が橘に惨敗し、レギュラーを降ろされた日から鳳と特訓。
そして二人はダブルスパートナーになった。
その血の滲むような特訓を鳳は間近で見てきて、心の底から宍戸を尊敬し、宍戸もまた、そんな鳳に感謝をしつつ本当に可愛がった。
いつしか二人は尊敬、可愛がりだけの感情では言い表せないほど惹かれ合った。
先程みたいに鳳が宍戸に好意を伝えても、宍戸は面食らいつつも頬が緩んだ。
この二人には言葉なんて必要ないのだろう。
お互いの行動やちょっとした言動、態度でお互いがどう思っているのかがわかる。
これだから、二人の間に入る余地なんてないのだ。
学校の帰り道、鳳は宍戸の家に寄った。
「ん……はぁ…」
ベッドに二人で座り込み、二人だけの空間で濃厚なキスをする。
酸欠になっても鳳は離してくれない。
「も…ちょ…たろ…」
途切れ時れの抵抗でさえ、鳳には煽りにしか見えない。
力なく鳳の胸を叩いてもただ可愛いだけ。
「宍戸さん…可愛い…」
ポツリと呟いて鳳は宍戸をベッドに押し倒した。
事が終わって二人はベッドに寝転ぶ。
元々シングルベッド故、男二人が並ぶには少々キツイ。
「長太郎…」
「はい。」
天井を見上げながら鳳を呼ぶ。
僅かに首を宍戸の方に向けて鳳が答えた。
「ありがとな。」
「え…何ですか急に…!ていうか、何に対してですか…?」
「それくらい考えやがれ!」
鳳の頭をポンと叩いて鳳から背を向ける。
「えー!…ダブルスパートナーでも流石にわかりませんよ…!」
背を向けてしまった宍戸の顔を反対側から覗き込む鳳。
するとチラッと宍戸が目だけを向かせ…
「バーカ。ダブルスパートナーだから考えろってことじゃねぇよ!…恋人だから考えろよ…//////」
顔を赤くしながらそう言った。
「宍戸さん…!」
あまりにも不意打ちすぎて、鳳の目が大きく見開く。
「…俺も、宍戸さんといられて幸せです!こちらこそ、ありがとうございます!」
「…わかってんじゃねぇか…」
ニヤけた顔を見られまいと顔を隠すが、それを鳳が許さなかった。
「宍戸さん、こっち向いてください…」
「ちょ…ん…!」
また、不意打ちのキス
ほぼ無理矢理に向かせた顔に鳳はキスを落とす。
「好きですよ、宍戸さん。」
「っ!…お、俺も好きだぜ…長太郎…/////」
チュ…
もうすっかり陽も暮れた部屋で、二人は静かなキスをした。
END
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