痴話喧嘩の後は【レオクラ】
「…………」
「…………」
沈黙した車の中。
ムスッとした空気が漂っていた。
喧嘩の理由は、ほんの些細なこと……
「クラピカ!ドライブに行くぞ!」
「は?ドライブ?」
レオリオの口から出された言葉に、クラピカがすぐに聞き返した。
「おう!いっつも家ん中に閉じこもってんのも、疲れるしな!」
車のカギを手に、外に出ようとする。
「……そうだな。少し出掛けるか。」
そう言ってクラピカも出掛ける支度をして、レオリオの後を追いかけた。
車に乗り音楽を掛けながら国道を走っている。
レオリオは地図を片手に運転している。
助手席のクラピカはレオリオのその姿を見て、面白そうに笑っている。
「……くっそーどこにあるんだよ!」
「何がだ?」
信号で止まっている間、ずっと地図とにらめっこしているレオリオ。
「あ?……あ、ちょっとそこのコンビニで何か飲み物買ってくる…。…お前、なにがいい?」
「…紅茶を頼む。」
レオリオはコンビニに車を止め、車から出ていった。
クラピカはコンビニに入っていくレオリオの姿を目で追った。
「…あいつはどこへ行きたいんだ?」
どこへ行くのか聞いても答えてくれないレオリオに、少し不安を感じた。
すると、レオリオが一人の女性に声をかける姿が見えた。
「…っ!」
声は聞こえないが、レオリオはなんだか嬉しそうな感じに見えた。
それを見たクラピカは何だかやるせない気持ちになり、目を背けた。
それから間もなくしてレオリオが飲み物を持って帰ってきた。
「ほら、紅茶だ。…道、わかった…ぞ…。……クラピカ、どうした?熱でもあんのか?」
レオリオは車に乗ってクラピカの顔をのぞき込んだ。
「……随分嬉しそうだったな…?」
低い声でポツリとつぶやくクラピカに、レオリオは少しだけ身ぶるいした。
「…な、なんだ?どういう意味だよ?」
「しらばっくれるな!!…私が女性ではなくて悪かったな!」
クラピカはキッとレオリオを睨み付けた。
「っ!…ちょっ…クラピカ何怒ってんだよ!あれは、道を聞いただけなんだって!」
「言い訳か?よく言えるな!?」
必死に説得してもクラピカはわかってくれない。
そんなクラピカの態度に、どうでもよくなったのか、レオリオはため息をついて車を発進させた。
誰も喋らなくなった車の中には、陽気な音楽だけが鳴り響いていた。
どなり疲れたクラピカは、そのまま眠りについた。
「クラピカ、着いたぜ…」
遠くでレオリオの声が聞こえてくる。
きっと、レオリオも腹が立ってそのまま家に帰ったのだろう。
そう思いながら目を開けると、オレンジ色の夕焼け空が目に入った。
「……家…?」
「ほら、早く降りろ…」
遠くから聞こえていたレオリオの声が、今度ははっきりと聞こえる。
クラピカは体を起きあがらせ、車から降りた。
車から降りたクラピカの目に映ったのは、少しボロボロのアパートではなく、どこまでも美しく広がっている海だった。
バックには奇麗な夕焼け。
「……海…?」
しばらく立ちつくしていると、レオリオがその横に立って言った。
「…ここに“お前と”行きたかったんだ…。」
少し照れくさそうに、でもまっすぐクラピカの方を見ながら言った。
「私と…?」
「ああ…。お前をびっくりさせようと思ったから、お前にはどこに行くのか言えなかったんだ。」
「……あの、女性は…?」
「あれはマジで道を聞いただけだって!……俺が…お前以外…好きになるわけないだろ!?/////」
顔を真っ赤にしてクラピカから目を反らした。
「レオリオ…」
そんなレオリオの姿を見て、クラピカは自然と笑顔になった。
「ありがとう。」
「…お、おう…。」
二人は夕日に照らされながら、ゆっくりとした時間を過ごした。
END