イレブンブラック“ラブ”チルドレン




ボスの護衛の合間に散歩がてらヨークシンの街を歩いていた時…

俺は不思議な女とすれ違った。

「……?」

特に会話をしたわけでもなく、ただすれ違っただけのこの一瞬で、妙な違和感が俺の体を駆け巡った。

立ち止まって振り返ると、街の雑踏に紛れたのか女の姿は見えなかった。

だがその違和感が現実のものとなったことを思い知らされるには時間はかからなかった。






「ただいま。」

「あら、おかえりなさい。気分転換は出来たかしら?」

屋敷に戻るとセンリツがピアノを弾きながら語りかけた。

「あ、ああ…」

先程の違和感を抱きながらも苦笑いでセンリツに答えた。

「何だか貴方から不安そうな音が聞こえるわ…。お部屋で休んでいた方がいいんじゃないかしら?」

ピアノを止めて俺のところへセンリツが寄る。

「ああ…そうするよ…」

最近ボスの護衛続きで疲れているのかもしれない。

そう思い、俺は大広間から自室へ向かった。

自室のドアを開けると…

「な…何だ!?」

そこには、俺の念能力『縁の下の11人(イレブンブラックチルドレン)』である風船黒子がいた。

「何故出した覚えのない念能力が出ているんだ…!?」

しかもこの11人……よく見たら…

「…抱き合って…き…キスしてないか…?」

目の前の出来事が理解できなくてしばらく状況を整理する。

出した覚えのない念能力が発動…

普段は攻撃や防御でしか命令できないはずがこんな複雑な行動をしている…

そして……

「何故だ…!?念がコントロール出来ない…!」

念能力を抑えようとしても、目の前のこいつらは全く消えようとしない。

ただ、さっきより激しく抱き合ってキスをしている…

こいつらに意思はないはずなのに、何故か気持ち頬が赤らんでいるようにも見える。

ピチャ…チュ……

ただの風船で口もないのにキスの水音すら聞こえる。

「クソッ…!何故コントロール出来ないんだ…!」

その時、ある思考が俺の頭を過った。

「まさか…あの女…?」

さっき女と街ですれ違った時に覚えた違和感。

恐らくあの女の念能力か何かが働いて、俺の念能力がコントロール出来なくなったんだ。

そうだとしたら厄介だ。

勝手に消える念なのか、除念しなきゃいけないのかがわからない。

そうこう考えている間にもこいつらはどんどんエスカレートしていく。

お互いの股間の辺りを触り合い始めていた。

「……!?」

俺が触られているわけじゃないのに、何故か俺の股間がムズムズして気持ち悪い…

この光景はいつまで続くのだろうか…




俺は目の前の出来事を直視出来ずに蹲った。












END
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