電話【大菊】
最近、よく電話がかかってくる。
相手は恋人の大石から。
付き合い始めたころはしつこくなかったのに、今じゃあ一日に4~5回もかかってくる。
今日もまた、大石から電話がかかってくるのだった。
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電話がしつこくなったのは1週間前。
クラスメートの男子や女子とワイワイやっていると、よく大石を見掛ける。
「おっ!大石じゃん!!どしたの?うちのクラスに用事?」
「いや…何でもないよ。…じゃあ、部活でな…。」
そう言って、大石は自分のクラスの方へ帰っていった。
「ん?…変にゃの…。」
その日から朝、夕方、夜…と大石からの電話が多くなった。
それだけならまだいいけど、学校がある日なんか、10分休憩の間にメールしてきたりと、とにかく怖かった…。
「最近大石からのメールが多いね…どうかしたの?」
不二が俺のケータイをのぞき込みながら言った。
「う~ん…俺何もしてないんだけどな~…。」
頬杖をついて大石からのメールを見た。
「大石は心配性だからね…。まぁ、頑張ってね!英二!」
それだけ言うと不二はどこかへ行ってしまった。
大石になんでしつこく電話するのかと聞こうと思っているけど、なかなかタイミングが合わなかった。
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そして今に至る。
♪~♪♪~♪
「うっ!かかってきたよ…。」
出ようか迷った。
「ここで出なかったら明日何か言われそう…。」
意を決して電話に出た。
「…も、もしもし…?」
『英二か!?俺だよ!大石。』
聞こえるのは大石のいつもの声。
「う、うん…。」
『今、何してたんだ?』
「別に、何もしてないよ?」
『そっか!…じゃあ、また明日な!』
あ!切られる!!
今聞かなきゃまたタイミングが…!
「あっ!あのさ、大石?」
『ん?何だ?』
「…なんで、そんなにしつこく電話やメールすんの?…この前だって…」
『英二が大切だからだよ…。』
…え?
『俺の中で英二の存在がどんどん大きくなってきて…その…一番大切な英二を…取られたくなくて…。』
大石の声が震えてるのがわかる…。
「…ごめん…俺、大石のこと、全然わかってなくて…」
『好きだよ…英二…』
自然と涙が出てきた。
その涙は嬉しいから。
「俺も、大好き…」
受話器の奥に聞こえる愛の囁きをいつまでも忘れずに、心に止めていようと思った瞬間だった。
END