だるまさんがころんだ【桃海】
ある日桃城は本屋である雑誌を見つけた。
『都市伝説特集』
「おっ!おもしろそうだな~!」
桃城はすぐさま雑誌を手に取り、ページをめくった。
「ん?だるまさんがころんだ?」
ページをめくっているとヘンテコな見出しが目に入った。
桃城は声に出して読んでみた。
「お風呂に入って頭を洗っているとき、心の中で“だるまさんがころんだ”と言い、後ろをふり返ると…。」
文章はそこで終わっていた。
そこがいかにもホラーって感じだ。
「そうだ!これ海堂にやらせてみよっと!」
そんな事を思いながら本を買い、今日泊まることになっている海堂の家に向かった。
「おそかったな。」
恋に奥手の海堂は少し怖い顔をして桃城を出むかえた。
「あぁ、ちょっとおもしろい本を見つけてよ~!」
ワクワクしながらリビングに行った。
「おもしろい本?何だそれ?」
「ひひ~…これだよ!」
桃城は袋から本を取りだした。
「う…!」
背筋がゾクッとしたのか、海堂の顔が青ざめていった。
「この本、都市伝説がいっぱい書いてあんだよ!」
怪しい目をさせながら言う桃城。
「…そ、そうなのか…。俺、お茶でも入れてくる……。」
青ざめたまま海堂はキッチンへ行った。
夜…。
桃城の最も楽しみにしている事をする時間。
「俺…先に風呂入るぞ…。」
タオルを持ってふろ場へ行く海堂を桃城が止めた。
「海堂!…頭洗うとき、心の中で“だるまさんがころんだ”って言ってくれよ!」
「…何でだよ?」
不思議そうに聞く海堂に桃城はにんまりと笑った。
「まぁ、やってみればわかるって!」
「…わかった…」
答えになってないと思いながら海堂はOKした。
『頭洗うときに、心の中で“だるまさんがころんだ”って言ってくれよ!』
桃城の言葉を思い出し、頭を洗う手を止めた。
(………………だるまさんが…ころんだ……………)
そう心の中で言った後、後ろをふり返った。
「ギャーーーーーーーー!!!!!!」
後ろをふり返ると、海堂は悲鳴を上げた。
「海堂!どうしたんだよ!!大丈夫か?」
風呂の外で桃城の心配する声が聞こえた。
「……いや…何でもねぇ…。」
声を震わせながら言った。
「そうか?…早く上がってこいよ~!」
少し笑いながら桃城は戻っていった。
バスタオルで髪をふきながら海堂が風呂から上がった。
「お!海堂。…さっきの悲鳴、何だったんだよ?」
またもや聞く桃城。
「な!何でもねぇよ!!」
顔を真っ赤にしながらしらばっくれる。
「なぁー教えろよ~!」
甘えたような声でねだる。
あの都市伝説が本当にあるのか気になるのもあるが、何より海堂の反応がおもしろい。
「…人影が…見えた。」
だんだん小さくなる声。
「人影?」
興味津々に海堂を見つめる桃城。
「お前に言われた通り、心の中で“だるまさんがころんだ”って言った後、後ろをふり返ったら…。」
海堂の顔がどんどん青くなっていく。
しばらくして急に桃城が笑い出した。
「プッアッハハハハハ!!」
「な、何がおかしい!?」
青い顔が赤に変わった。
「悪ぃ悪ぃ!…たぶんそれ、人影じゃないと思うぜ?」
目に涙を溜めながら笑う桃城。
「は?」
桃城の言っている意味がわからないのか、目が点になる。
「ここの風呂の壁って、少しシミがあるだろ?」
「あ…ああ…。」
「海堂、幽霊とか嫌いだろ?たぶんその怖さでシミが人影に見えたんだよ!」
「は!?!?!?」
桃城にそう言われ、顔を真っ赤に染める。
「海堂、顔赤ぇよ!かわいいな~かわいいよ~!」
からかいながら桃城が言う。
「う…うるせぇ!!笑うな/////」
海堂は一日中、桃城にからかわれたのである。
END