マフラー【桃リョ】
街中はクリスマスシーズン。
所々からクリスマスソングが流れている。
誰もが幸せそうな顔をするこの日だが、1人ムスッとする人物がいた。
「おい、何ムスッとしてんだよ!越前!」
そう、青学テニス部1年で、ただ今2年の先輩、桃城武と付き合っている、越前リョーマだった。
「…だって…自分の誕生日がクリスマスイブって、すっごい損してるじゃないっスか…。」
頬を膨らませて文句を言うリョーマに桃城は笑った。
「ははっ!まぁ確かにな…。でも、覚えやすいじゃねーか!」
「笑い事じゃないっスよ…。だいたい、自分の誕生日覚えてもらっても、あんま嬉しくないっス…。」
溜息をつきながらリョーマが言った。
「おいおい、それって俺にも誕生日を覚えてもらっても嬉しくないってことか?」
桃城の発言にリョーマは慌てた。
「ちょ…!誰も桃先輩のこと言ってないじゃないっスか!!」
必死で誤解を解こうとしているリョーマを見て、桃城はまた笑った。
「ははっ!冗談だよ!」
桃城はリョーマの頭をポンッとたたいた。
「ん…騙したんスか?…酷い先輩っスね…。」
「…っと…学校以外の所では恋人だろ?」
桃城は優しくリョーマの耳元で囁いた。
“恋人”と言う漢字2文字が頭の中でグルグル回って、心臓が破裂しそうなくらい鳴った。
すると空から白いものが振ってきた。
「お~!雪だ!」
「ハックション!!」
桃城が空を見上げていると、リョーマがくしゃみをした。
「ん?越前、寒いのか?…だったら、ちょっと待ってな。」
そう言って、桃城は目の前にあったお店に入っていった。
しばらくして桃城が袋を持って帰ってきた。
「お待たせ!」
「…何やってたんスか?」
「…これ買ってたんだよ。」
桃城は袋からマフラーを取り出し、リョーマの首に巻いた。
「ほら、さっきよりか増しだろ?」
「先輩!こんなこと…。」
リョーマが申し訳なさそうに桃城を見つめた。
「誕生日プレゼントだよ!…んで、クリスマスプレゼントは…俺と一緒にいることだよ…!!」
少し照れながら桃城はリョーマに笑った。
「桃先輩…。ありがとうございます…。」
リョーマの申し訳なさそうな顔は、嬉しそうな顔に変わっていた。
「ハッピーバースデー!それと…メリークリスマス!」
「……メリークリスマス…桃先輩…。」
そう言って、2人は唇を重ねた。
END