密かな想い【塚不二】
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僕は毎日抑えられない気持ちと葛藤している。
それは、僕が彼女みたいに女の子ならこんなに悩むことじゃないのに…
僕は男なのに、同じ男である手塚を好きになってしまった。
「国光!お疲れ様!一緒に帰ろう!」
「あぁ、名無しさんか。よし、帰ろう。」
「うん!」
手塚に寄り添う彼女は、手塚の幼馴染みの名無しさんちゃん。
僕たちより一つ年下で、彼女も手塚のことが好きみたいだ。
「私ね、今すごく幸せなの!」
「何故だ?」
「だって国光と一緒にいるんだもん!私これからもずっと国光と一緒にいる!」
「冗談はよせ。」
「冗談じゃないのに~!私本気だよ!」
そんなやりとりを、僕は後ろから見つめる。
帰る方向が一緒だから自然と一緒に帰るけど、いつも二人を後ろから見る。
こうして見ると、やっぱりお似合いなんだよな…
名無しさんちゃんは学校の中でもモテる方だし、僕からしても可愛いと思う。
手塚は名無しさんちゃんのこと、好きなのかな…?
そんなことを思っていると、手塚が僕を呼んだ。
「不二、また明日。」
ふと気がつくと、手塚と名無しさんちゃんは曲がり角を曲がろうとしていた。
「あ、うん。また明日ね。」
表情を無理矢理明るくして手を振る。
「さよなら。不二先輩。」
名無しさんちゃんが手塚に寄り添ったまま僕を見た。
「うん。また明日。」
僕が返事をし終わると、二人は曲がり角を曲がって消えていった。
僕はしばらく立ち尽くしていた。
次の日、朝練が終わってすぐに名無しさんちゃんに呼び出された。
「どうしたの?僕に用事なんて珍しいね。」
名無しさんちゃんは黙ったまま僕を見上げる。
「不二先輩、正直に答えてください。…国光のこと、好きなんですか?」
「え?」
…気づかれてたんだ…。
「…好きだよ。」
今更嘘を吐いても仕方がない。
言ったところで何かが変わるわけじゃない。
「…!……どうして…?」
気づいてはいたけど、実際口で言われるとショックみたいだ。
「どうしてだろうね。…気づいたら好きになってた。」
空を見上げてポツリと言う。
すると手塚の声がした。
「不二…」
「っ…!手塚…!」
「国光…!」
先に教室に行ってるのかと思った。
「今の話、聞いてたの?」
恐る恐る聞いてみる。
「あぁ。悪いとは思ったんだが、どうしても気になってな。」
「…そう。」
とうとう知られてしまった。
気持ちを伝えたら手塚に迷惑かけてしまう。
だから今まで自分の気持ちを隠してきた。
何も変わらず…過ごしたかった。
「手塚…ごめん…僕……」
「お前が謝ることはない。むしろ嬉しい。」
「え…?」
手塚の言っている意味がわからない。
…嬉しい?
「どうして…?僕、男なのに君のことが好きなんだよ…?」
困惑した表情で言うと、手塚は優しい声で答えてくれた。
「それがどうした?」
「え…その…気持ち…悪くないの…?」
「不二。さっきも言ったが、俺はお前のその気持ちが嬉しい。俺はどう足掻いても不二を俺のものに出来ないと思っていた。」
手塚の大きな掌が僕の頭の上に乗って優しく撫でられる。
「手塚…!」
その言葉が嬉しくて手塚をギュッと抱きしめる。
すると名無しさんちゃんが震えた声で言った。
「…国光、何やってるの…?…男同士なんだよ!?そんなの法律で認められないんだよ!?」
叫ぶ名無しさんちゃんに、手塚が答えた。
「確かにそうだ。だが俺はそんなことは関係ないと思っている。俺は不二が好きだ。」
そうきっぱり言い切る手塚を見上げて涙が溢れてくる。
拭っても拭っても溢れてくる涙を、代わりに手塚がキスで拭ってくれた。
「…最低…。国光も不二先輩も不潔だよ!!!」
そう言って名無しさんちゃんはその場から走っていった。
「…名無しさんちゃん…!」
「いいんだ。何れ話そうと思っていたことだ。」
引き止めようと手を伸ばすけど、手塚がそれを遮った。
「でも…」
「お前が気にすることではない。」
また優しい声でそう言う。
…もう、それ反則だよ…
君のこと、もっと好きになりそうだよ…
「手塚…好き…大好き…」
「ああ。俺もだ。不二。」
今度は手塚が僕をギュッと抱きしめてくれた。
それから数日後の休日、僕の家を訪れた人がいた。
「はい?」
ガチャ…
ドアを開けると、そこには名無しさんちゃんが俯いて何やら落ち着きがなく立っていた。
「名無しさんちゃん…!」
「あ、あの、不二先輩…。この間は…その、すみませんでした…。」
急なことにビックリする。
「名無しさんちゃん…いいよ!僕こそ、君の気持ちを知っていながら…ごめん。」
僕も慌てて謝る。
手塚が僕のこと好きで、両想いになれたのは嬉しいけど、名無しさんちゃんを傷つけてしまったことは本当に申し訳ないと思った。
「本当に悪いと思ってるなら、不二先輩にお願いがあります!」
「え?」
「国光を笑顔にしてあげてください!」
「笑顔に?」
「はい。私、国光と一緒にいて思ったんです。国光を笑顔に出来るのは多分不二先輩だけ。」
俯いて悲しい表情をする名無しさんちゃん。
「そんなことは…」
「いいえ。幼馴染みですもの。国光の変化ぐらいわかります。…それだけ…国光のこと見てきたから…。」
「名無しさんちゃん…」
「だからお願いします!不二先輩!」
もう一度僕に懇願する。
「わかった。約束する。」
僕が了承すると、名無しさんちゃんはパッと明るくなった。
「ありがとうございます!…それでは、お邪魔しました。」
名無しさんちゃんは一礼して帰っていった。
ドアを閉めてリビングのソファーに腰掛ける。
無性に手塚の声が聞きたくなって、ケータイに手を伸ばした。
「もしもし?」
END