メールでは伝わらないこと【不二菊】
件名:おはよう!
本文:今日、兄ちゃんが朝ご飯の目玉焼き取ったんだ!
酷いと思わない!?
夏休みが始まってすぐのころ、俺と不二はしょっちゅうメールをする。
だいたい俺が他愛のない話をして、不二がそれに答えるくらい。
だけど俺にはそれが楽しかった。
メールをしてから5分と経たないうちに不二から返信が来た。
件名:おはよう。
本文:あはは
英二の目玉焼きの方が美味しそうだったのかもしれないね。
こんな風に、俺のどんなメールも早く、しかもちゃんと返してくれる。
誰よりもメールの返信が早くてちゃんと話を聞いてくれる不二が、俺は大好きだ!
件名:ん~…
本文:確かに俺の方が卵の黄身が綺麗だったけど…取るのは酷くない!?
件名:まぁまぁ…
本文:他に何か食べたの?
件名:んっと~…
本文:ウインナーと、レタスと、ご飯と、あ、昨日の残りの海老フライ食べた!あとデザートにプリン!
件名:うわ~
本文:朝から夜ご飯並みに食べるね…
英二、あんまりご飯食べないでしょ?
件名:うん!
本文:でも朝だけはしっかり食べるんだ!
件名:へ~
本文:良いことだよね。
それからしばらくメールを続ける。
でも必ずメールが終わる最後の返信は不二が俺に電話をかける。
♪♪~♪~♪♪~
「…!」
ドキンッと心臓が跳び跳ねる。
「も、もしもし…?」
『英二、毎回のことなんだから慣れなよ。』
「だ、だって…!//////…メールでもいいじゃん…直接言わなくったって…/////」
『ダメ。大切なことはきちんと声に出していわなくちゃ。本当は直接言いたいんだけどね。』
その言葉に俺はまたドキンとする。
『英二、好きだよ。』
あぁ…もう何も言えないよ…
『…英二?』
俺の反応がないせいで不二が尋ねる。
「あ…お、俺も…好き…だよ…?//////」
今顔凄いんだろうな…
そんなことを思いながら俯く。
『クスッ…ありがとう。じゃあまたね。』
「あ、う、うん…」
それだけ言って電話を切った。
まだ心臓がバクバクいってる…/////
ケータイを握りしめて不二の言葉を頭の中で流す。
「…もう何度も言われてるのにな~…////」
ベッドに雪崩れ込んでそう呟く。
それでも不二とメールするから、やっぱりちょっと期待してんのかな…?
またあれこれと考えて顔が熱くなった。
このままリビングに行っても兄ちゃんたちに弄られるし……
「ちょっと寝よう…」
ケータイを机に置いて俺は少しだけ眠った。
END