嬉しい誤算【不二菊】
授業中、フと窓を見て思う。
「(よく降るにゃ~…。)」
雨の季節でもないのに止むこともなく振り続ける。
その所為で寒気さえ感じる。
「(今日不二とデートだったのに…。)」
そう思いながら溜息を吐く。
明日は中等部の一般入試。
青学に入るためにいろんな小学校から青学に来る。
今日はその準備のため、学校が早く終わる。
だから学校が終わったら不二とデートの約束をした。
なのに…
「(くっそ~…雨のやつ~…。)」
振り続ける雨を睨みつけながらまた溜息を吐いた。
すると俺の机の上に一枚の紙切れが置かれた。
「?」
その紙を開くと、丁寧な字でこう書かれていた。
『余所見してると当てられるよ。』
…不二の字だ!
隣の席の不二を見る。
不二はクスッと笑って俺を見つめ返した。
俺はシャーペンとメモ帳をちぎり、返事を書いた。
それをさり気なく不二の机に置いた。
『だって折角のデートだったのに雨なんだもん!』
俺の返事を読んで不二はすぐにまた返事を書いて俺の机に置いた。
『じゃあ今日僕の家に来る?』
「本当!?」
ザワ…
不二の返事を見て嬉しくなり、つい声を上げてしまった。
クラスメイトは何事かと一斉に俺を見る。
「どうした菊丸。」
先生が俺を見て怖い顔をする。
「あ…。い、いえ…。何でもありません…。」
体を小さくして謝る。
「クスッ…。」
「わ、笑うなよぅ…///////」
不二を少し睨んで顔を真っ赤にする。
でも雨の所為で不二と一緒にいられないと思った俺にとってすごく嬉しかった。
「(お家デートだ♪お家デートだ♪)」
まだ雨は降り続けてるのに、俺の心は雲一つないほど晴れていた。
END