君が欲しくて【白不】
久しぶりに訪れた恋人の家。
大阪駅に迎えに来てくれた白石の後について白石の家まで行った。
「おじゃまします。」
「適当に俺の部屋入ってくつろいどってや~。何か飲みもん取ってくるわ~。」
そう言って白石はキッチンに行った。
僕は白石の部屋のドアを開け、中に入った。
何も変わってない大好きな人の部屋。
辺りを見回してカーペットの上へ座った。
白石に会いに来たのにはちゃんとした目的がある。
付き合って半年経つのに、未だにキスから先に行かない。
多分、このまま待っても何も進展しないだろう。
…だから僕が白石を…。
でも普通の状態じゃその気にはなってくれないと思う。
そこでこの間ネットで買った媚薬を試してみようと、そっとポケットに入れて持ってきた。
―白石、僕だって…男なんだよ?―
すると白石が戻ってきた。
「オレンジジュースでええか?」
「うん。ありがとう。」
ジュースをテーブルに置いて白石も僕の隣に座る。
それから他愛のない話で盛り上がった。
「あ、俺、トイレ行ってくるわ。」
そう言って白石は立ち上がり、部屋を出た。
―チャンス…―
僕はポケットから媚薬を取り出し、白石のジュースの中に入れ、ストローで混ぜた。
…ちゃんと効くだろうか…。
そんなことを思いながら白石を待った。
ガチャ…
「(帰ってきた…!)」
心の中でそう思い、平静を装う。
「おかえり。」
「ただいま。」
そう言いながら白石はジュースの入ったグラスを手に持ち、ストローに口を付けた。
「(来る……!)」
…が、白石はそのジュースを飲むことはなくストローから口を離し、グラスをテーブルに置いた。
「…どうしたの…?」
「…薬の匂いや…。」
「…え?」
ドキッと心臓が脈打つ。
「この匂いは…媚薬やな…。不二くん、俺がトイレ行っとる間に入れたやろ?」
ニヤリと笑いながら白石が言う。
でも、今更誤魔化したところですぐにバレる。
「…どうしてわかったの?」
「そりゃ俺のオトンは薬剤師やで?ちっちゃい頃からオトンの仕事見とったから、わからんわけないやろ…?」
…そうだった……。
すっかり忘れてた。
そう思っていると、白石は急に僕を押し倒した。
「俺に媚薬飲ませて俺を襲う気やったんやろ?…せやけど、こっちの方がしっくりくると思わへん?」
ニヤリと笑って耳元で囁く。
「そうだね。」
目を閉じて白石からのキスを待っていると、いきなりドアが開いた。
「くーちゃん漫画貸して!!」
「っ!!ゆ…友香里…!!」
部屋に入ってきたのは白石の妹の友香里ちゃんだった。
「な……何してんねん二人ともーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
友香里ちゃんの叫び声が街中に響き渡った。
END