暖かさ【タカ不二】
寒さが厳しくなってきた11月。
部活も引退し、少し寂しい気もする。
河村はいつものように学校に行き、授業を受け、3年の部員のみんなで一緒に帰る。
当たり前のように過ごしていくけど、今日だけは違った。
授業が終わるまではいつもと変わらなかったけど、その帰りがいつもと違った。
「タカさん、今日は二人で帰ろうよ。」
「え?…いいよ。」
河村がみんなを待っていると、不二が言い出した。
少し狼狽えながらOKした。
向かい風が二人を寒くさせる。
いつもは大勢で歩いている道も、二人だと寂しく感じる。
「どうしたんだい不二。急に二人で帰ろうなんて…。」
少し疑問に思ったことを聞いてみた。
「あれ?もしかしてタカさん、自分の誕生日忘れてる?」
「え…?…あ、ああ…そうか…。忘れてた…。」
やっと思い出したように河村が言う。
「でも、それと一緒に帰るのと何の関係があるんだい?」
河村が不二に聞くと、不二は少し照れた様子で言った。
「特別な日くらいは、二人で一緒に過ごしたいから…。」
「え…///////」
不二の言葉に河村の顔が一気に熱くなる。
寒い外には不釣り合いなほどだ。
そんな河村に不二はさらに続ける。
「誰にも邪魔されず、大好きなタカさんと一緒にいたい。」
河村の腕に抱きつくようにして言う不二に、河村は少し慌てる。
「ふ、不二…!ここ、外だよ…?////」
「どこだって構わない。…少しでもタカさんと一緒にいたいから…」
そう言う不二に、河村は何も言えなくなってしまう。
すると急に不二が思いだしたように言った。
「あ!タカさんに誕生日プレゼントがあるんだ。」
そう言って不二は自分の鞄をガサガサと漁り、キレイにラッピングされた袋を取り出した。
「はい。誕生日おめでとう。」
「あ、ありがとう!…開けていいかい?」
「どうぞ。」
河村が嬉しそうに受け取ると、早速袋を開けた。
「これ…」
出てきたのは、河村の好きな水色のマフラーだった。
「僕のとお揃いだよ。」
言いながら不二は自分の首に巻いてあるマフラーを見せた。
「色違いなんだ。…ありがとう。早速使わせてもらうよ。」
河村は首にマフラーを巻いた。
「暖かいや。」
微笑みながら不二に言った。
「良かった。タカさん、似合ってるよ。」
不二も河村を見て微笑んだ。
「あ、ありがとう…//////」
照れながら河村は頭をかいた。
少し暗くなり始めた空の下―
幸せそうな二人が歩いていた――。
END